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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第五十一話 遭遇


猫の後を追い掛けた三人は、港湾地区の奥へ進んでいった。


港。


倉庫。


工場。


古びた建物が立ち並び、人の気配はほとんどない。


海風だけが静かに吹き抜けていた。


やがて野良猫は、一軒の古びた廃工場の前で足を止める。


「ここまでニャ。」


「昨日、お姉ちゃんはこの中へ入ったニャ。」


「でも、中には怖い人がいっぱいいたニャ。」


「僕は怖くなって逃げたニャ。」


小春は優しく猫を撫でた。


「ありがとう。」


「教えてくれて。」


猫は嬉しそうに喉を鳴らす。


「気を付けるニャ。」


そう言うと、防波堤の方へ走り去っていった。


---


三人は物陰へ身を隠した。


廃工場の中には灯りがついている。


時折、人影が行き来していた。


神童が小声で呟く。


「結構いるな……。」


湊も慎重に様子をうかがう。


「暗くて正確には分からない。」


「でも、十人以上はいる。」


神童が目を細める。


「十五人くらいはいそうだ。」


小春は不安そうに湊を見る。


「どうする?」


湊はすぐに答えた。


「警察へ連絡しよう。」


「僕たちだけじゃ助けられない。」


神童も頷く。


「それが正解だ。」


湊は一一〇番へ電話を掛けた。


「もしもし。」


「港湾地区の廃工場です。」


「誘拐事件の犯人らしき集団がいます。」


「暗くて正確な人数は分かりませんが、十人以上……十五人前後はいると思います。」


通報を終えた湊は静かにスマートフォンをしまった。


「後は警察を待とう。」


---


その頃――。


能力犯罪総合対策本部。


篠宮玲司が作戦室へ駆け込む。


「通報です!」


「港湾地区の廃工場で、不審な集団を発見したとのことです!」


御堂鷹臣は地図を確認する。


「場所は?」


「こちらです。」


御堂は静かに立ち上がった。


「全隊、出動。」


「現場へ急げ。」


---


エデン仮アジト。


ブレイブが少女へ食事を運んでいた。


少女はブレイブを見上げる。


「ねぇ。」


「ブレイブって、本当の名前じゃないよね?」


ブレイブは少し照れくさそうに笑った。


「もちろん違うよ。」


少女は首を傾げる。


「じゃあ、本当の名前は?」


少しだけ考えた後、ブレイブは静かに答えた。


「愛澤優斗。」


少女の表情が少し和らぐ。


「優斗お兄ちゃん。」


優斗は思わず笑みを浮かべた。


「ありがとう。」


その時だった。


少女の表情が曇る。


「パパ……。」


瞳から涙がこぼれ落ちる。


パァン……


透明な結界が少女を包み込んだ。


優斗は驚いて立ち止まる。


「また……。」


ヴォイアントが静かに部屋へ入ってきた。


結界を見つめ、静かに呟く。


「恐怖や不安。」


「それが発動条件か。」


少女は震える声で尋ねた。


「これ……何?」


ヴォイアントは優しく答える。


「まだ分からなくてもいい。」


「今はゆっくり休みなさい。」


そう言い残し、部屋を後にした。


---


その頃。


廃工場の外。


神童は近くの鉄骨へ飛び乗った。


雷を足へまとわせ、一気に上へ駆け上がる。


高所から工場内部を見渡す。


「湊!」


「建物の奥にも人影がある!」


「やっぱりここだ!」


神童が地上へ飛び降りた、その時――。


「そこから先は危険だ。」


突然、背後から落ち着いた声が聞こえた。


三人は一斉に振り返る。


黒いコートを羽織った、一人の男が静かに立っていた。


神童は反射的に雷をまとわせる。


小春も一歩後ろへ下がる。


湊は男を見つめながら口を開いた。


「あなたは……誰ですか?」


男は穏やかに微笑む。


「初めまして。」


「朝霧湊。」


湊の表情が変わる。


「どうして……。」


「僕の名前を知っているんですか?」


男は静かに湊を見つめる。


「君とは、一度話をしてみたかった。」


夕暮れの海風が静かに吹き抜ける。


三人は目の前の男から、ただならぬ雰囲気を感じ取っていた。


第52話へ続く

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