↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
PR
50/74

第五十話 動き出す者たち


助けたい。


その気持ちだけは、誰にも負けたくなかった。


能力がなくても――。


---


翌日。


学校。


昼休み。


湊、小春、神童の三人は中庭へ集まっていた。


小春が昨日の出来事を思い返す。


「猫さんが言ってた。」


「黒い車。」


「鉄のにおい。」


「大きな建物。」


「海の近く……。」


神童が腕を組む。


「海沿いなんて広すぎるぞ。」


湊も静かに頷く。


「うん。」


「でも、何もしないよりはいい。」


「手掛かりは、それしかないんだから。」


神童は苦笑した。


「昔の俺なら。」


「こんな事件、首を突っ込まなかった。」


湊が振り向く。


「神童……。」


神童は照れくさそうに頭をかく。


「でも今は違う。」


「お前を見てると、放っておけなくなる。」


湊は思わず笑った。


「ありがとう。」


小春も優しく微笑む。


「三人なら、きっと何か見つかるよ。」


---


放課後。


三人は海沿いの工業地帯へ向かっていた。


港。


倉庫。


工場。


古びた建物が並んでいる。


神童が辺りを見回す。


「ここだけでも相当あるな。」


湊は地図を見ながら言った。


「猫さんの話だけじゃ場所は特定できない。」


「でも、一つずつ見ていこう。」


神童は湊を見つめる。


「本当に行くんだな。」


湊は真っ直ぐ前を見た。


「俺は無能力者だ。」


「だから戦えない。」


「でも。」


「誰かを助けたいって気持ちは、能力者にも負けない。」


神童は静かに笑う。


「……やっぱり、お前らしいな。」


---


その頃――。


エデン仮アジト。


ブレイブが食事を運んでいた。


「ご飯です。」


少女は警戒したまま動かない。


「食べないと体を壊します。」


少女は少しだけブレイブを見る。


「……あなたも悪い人なの?」


ブレイブは返事に困った。


少し考え、静かに答える。


「分かりません。」


「でも……。」


「あなたを傷付けたいとは思っていません。」


少女はゆっくり食事へ手を伸ばした。


その時だった。


突然、部屋の空気が震える。


パァン……


透明な結界が少女を包み込む。


ブレイブは驚いて立ち止まる。


「また……。」


部屋へ入ってきたヴォイアントは静かに結界を見つめた。


「感情が不安定になると発動するようだ。」


「まだ制御はできないか。」


少女は自分の手を見つめる。


「また……出ちゃった。」


ヴォイアントは静かに部屋を後にした。


---


能力犯罪総合対策本部。


篠宮が資料を机へ置く。


「港湾エリア。」


「工場跡地。」


「廃倉庫。」


「候補は百三十七か所です。」


御堂は静かに地図を見る。


「多いな。」


篠宮が頷く。


「ですが、一つずつ調べるしかありません。」


御堂は立ち上がる。


「総力戦だ。」


「必ず少女を救出する。」


---


研究室。


博士は静かにコーヒーを口へ運ぶ。


テレビでは誘拐事件が報道されていた。


「蓬莱……。」


「お前は、本当にそこまで行くつもりなんだな。」


博士は静かに目を閉じた。


---


夕方。


海沿い。


湊たちは工場地帯を歩いていた。


「あっ。」


小春が足を止める。


「どうした?」


湊が尋ねる。


小春は遠くを見つめていた。


「あの猫さん……。」


昨日話した野良猫が、防波堤の上から三人を見つめていた。


「ニャー。」


猫は歩き出す。


そして振り返る。


まるで。


「こっちだ。」


そう言っているようだった。


湊たちは顔を見合わせる。


「行こう。」


三人は猫の後を追い始めた。


---


その頃。


エデン仮アジト。


グラビティがヴォイアントへ報告する。


「一般人がこちらへ近付いています。」


ヴォイアントは窓の外を静かに見つめた。


「いや。」


「彼は一般人ではない。」


グラビティが首を傾げる。


「ご存知なのですか。」


ヴォイアントは少しだけ目を閉じる。


「最初は気付かなかった。」


「母親が旧姓を名乗っていたからだ。」


「だが、調べれば分かる。」


静かに口元が緩む。


「朝霧湊。」


「彼女の息子か。」


グラビティは驚きを隠せない。


「では……。」


ヴォイアントは遠くを見つめたまま、小さく呟いた。


「運命とは、皮肉なものだ。」


その視線の先には――


猫を追い、港湾地区へ向かう三人の姿があった。


第51話へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。