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第十一話 可能性

翌日。


朝霧湊が教室で友人たちと話している頃、一人の男が職員室を訪れていた。


育成プログラム教官――日下部隼人。


担任教師は椅子を勧める。


「日下部先生、本日はどうされましたか?」


「少し、朝霧湊君についてお聞きしたいことがありまして。」


担任教師は少し驚いた表情を浮かべた。


「朝霧ですか?」


「ええ。」


日下部は静かに頷く。


「彼は普段、どのような生徒ですか?」


担任教師は少し考えてから答えた。


「成績はごく普通です。」


「運動も飛び抜けているわけではありません。」


「ですが……。」


教師は自然と笑みを浮かべる。


「困っている人を放っておけない子ですね。」


「誰かが消しゴムを落とせば拾う。」


「重い荷物を持っていれば運ぶ。」


「掃除の時間でなくても、落ちているゴミを拾う。」


「誰かに言われてやっているわけではありません。」


「昔から、あの子はそういう子なんです。」


日下部は静かに耳を傾けていた。


鼓動感知。


担任教師の鼓動に嘘はない。


教師自身も、それを当たり前のように話していた。


「ありがとうございます。」


日下部は静かに立ち上がった。


「一つ、ご相談があります。」


「はい?」


「朝霧君を、一度育成プログラムへ見学に招きたいと考えています。」


担任教師は目を丸くした。


「朝霧を……ですか?」


「彼は無能力者ですよ?」


「承知しています。」


日下部は静かに答えた。


「だからこそです。」


短い言葉だった。


しかし、その一言には確かな意思が込められていた。


昼休み。


屋上。


「また教官が学校に来てたらしいぞ。」


輝羅が弁当を食べながら言う。


「そうなんだ。」


湊は特に気にした様子もない。


「育成プログラムのことかな?」


小春が首を傾げる。


「多分な。」


輝羅はあっさり答えた。


湊は空を見上げる。


自分には関係のない世界。


そう思っていた。


放課後。


日下部は育成プログラム本部へ戻っていた。


机の上には『育成プログラム選抜候補者一覧』が置かれている。


黒崎 駿斗   炎


天城 楓    風


如月 希    氷


九条 蓮    念力


神童 輝羅   雷


──────────


朝霧 湊    能力:なし


日下部は、その最後の一行を静かに見つめた。


「可能性か……。」


能力では測れない何か。


朝霧湊という少年には、それがある。


日下部は静かに書類を閉じた。


その瞳には、わずかな期待が宿っていた。


第十一話 可能性 完

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