プロローグ
おぎゃあ、おぎゃあ────………。
「………いいのですか?」
「いいよ。もうじき僕は死ぬからね」
ツノの生えた男が赤子を抱き、目の前にいるローブを身に纏う青年を見る。青年とは言っても、もうそんな歳ではないのだけど。
「ステラを頼んだよ」
「───マルジン」
「分かるだろう?僕は禁忌を犯した。これだけで、訪れる未来は明白だ」
ひらひらと青年は手を振り、笑みを浮かべる。ツノの生えた男はそれをいつものように憎たらしいと感じつつ、これが最後かと寂しく思った。
「分かりました。では、貴方は勇敢だったと語り継いでおきましょう」
「ハンサムなのも忘れずね」
「はいはい」
ツノの生えた男はローブの青年に別れの挨拶を告げると、その場から立ち去る。残ったのはローブの青年と、彼に寄り添うように地に咲き誇る花々。青年は花々を優しく見つめ、そっと呟いた。
「───さようなら、ステラ。君の未来に、幸せがあらんことを」
月明かりが差し込み、彼の表情が月光の元明らかになる。さようなら、と口にしながらも、彼はまるで花が開くような笑みを浮かべていた。
その後、この青年───マルジンは遺体となって発見された。マルジンは身体中を何かで引き裂かれて死んでいたらしく、とても見れたものじゃなかったらしい。
───だというのに。
彼は、微笑んで死んでいた。
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世界の成り立ちについては諸説ある。
神が生んだとか、自然発生したとか、奇跡が起こったとか。成り立ちなぞ、人それぞれだ。僕すら分からないのだから、人が知っているわけないけどね。
だが、世界が成り立った後の物語だけは。それだけは、変わることはないと。
僕は信じている。
────『五賢者』マルジン




