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第24話 熱ではなく鉱毒

井戸水の原因を確かめるため、私は上流の取水口まで登った。


 春の雪解け水は透明なはずなのに、川底の石だけが妙に灰白色に曇っている。水面近くの苔を指でこすると、銀粉のような光が残った。


「銀鉱山の排水だ」


 同行していた老坑夫が吐き捨てるように言う。


「閉じたはずの旧坑が、夜だけ動いている。誰かが裏水路を開けたんだ」


 私は水を瓶に詰め、村人の症状メモを見返した。口内の苦み、手の震え、腹痛、軽い熱。流行病ではなく、鉱毒の広がり方に近い。


「灰熱ではありません」


「なら封鎖は」


「見せかけです。人を閉じ込めて、水のせいだと気づかせないための」


 ジークハルトが剣の柄へ手を置きかけたのを見て、私は首を振った。


「まだ踏み込みません。排水路と補助金台帳を繋げてからです」


 怒りで動けば、相手は『辺境の思い込み』で片づける。けれど水質と記録が揃えば、王都検疫官でも逃げられない。


 診療院へ戻る途中、私はノートへ大きく書いた。


『熱ではなく鉱毒』


 文字にした瞬間、輪郭がはっきりする。病気の嘘に隠されたのは、土地と金の奪い合いだった。


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