売り手が決まった!
私は意見を求めるのを諦めて、適当に選んでいく。
冬はちょっと暖かそうな厚めの生地のやつで、もこもこが付いてるのがいいよね。
できれば革靴以外の靴も欲しい。
流石にそれは靴屋に行った方がいいかもだけど、古着屋にも一応置いてあった。
あと全身コーデ済のセット商品もある。
ゲームで言う所のアバターみたいな?
こういうのは選ぶの楽でいいよね。
水着になりそうな短パンとかノースリーブの服もいいね。
スパッツとかも、ワンピやスカートの下に履けていいなぁ。
ここには無いが。
短パンは、ある。
キュロットみたいなやつは。
スパッツはない。
そもそもあまり伸びる素材はない。
腰や袖口も紐が多いし。
織り方で多少伸縮があるかな?くらいのやつで、ゴムみたいなビヨーンはない。
「あ、そだ。おじさん、知り合いに大きな町で古着屋とかしてる人いる?行商人みたいな」
「ああ、いるよ。何か売りたいものでもあるのかい?」
私はうんうん、と頷いた。
「ほら、昨日みたいな、王子が使ってたっていう服で、豪華なのが沢山あるんだけど、ここでは沢山売れないでしょ?だから、そういう街の人がいたら売りたいなーって」
「ふむふむ。一応この街にも買ってくれそうな客はいるが、大量だと流石にねぇ。伝手はあるよ。ただ、行商人はいつ来るかも分からないし、……良い品だったら、儂が売りに行くのも有りだな!」
ほえええ?
でも旅って危険じゃん。
大丈夫なのかな?
「その間お店どうするの?」
「息子に任せるよ」
「でも、旅って危険なんでしょう?」
「冒険者を雇うから大丈夫だよ。おじさんの心配してくれるなんて、ミアちゃんは優しいなぁ……」
おじさんの目に涙が滲む。
だって、良いお店だから潰れてほしくないし。
でもカッコイイな。
商売の為に危険を冒せる商人て。
「じゃあ、売り物全部、持ってきます。よく分からない物も全部!」
「よーし、全部引き受けるよ!」
一気にあれが片付くのは嬉しい。
私はほくほくして、ついでにオマケもしてもらって買い物を終えた。
まあ、旅までして冒険者も雇うのだから、買値もある程度安くてもいいかなって思う。
沢山儲けてくれていい。
ついでにこの街で手に入るか分からない物も、仕入れてきてくれたらいいな。
買い込んだ荷物は、王子の背負い袋にとりあえず全部詰め込んだ。
余裕で入るって凄いね。
「いい物持ってるじゃねぇか」
「フフン。良いだろう」
何か変な会話してる、この二人。
背負い袋をちょっと摘んで見たりしてるアルト。
背負い袋を褒められてドヤ顔してる王子。
褒められてるのが持ち物っていうのがね。
主語が分からないと、卑猥な会話にもカツアゲにも思える不思議。
続けて私達は普通の新品を売っている店に行く。
ローブだったり、普通の洋服だったり、ドレスもある。
ドレス専門店みたいなのは、この街にあったとしても売れないだろう。
何せ冒険者が主体の街だから。
値段は古着屋の二倍から三倍の価格帯。
品質は変わらないけど、肌に密着する肌着とかは、こっちで買おうかなと思っていたので、その辺を買う。
王子は沢山良い物もってきてたので、ここではさっきの古着屋よりは小奇麗な服を選ばせた。
さっきの店は色んな階級の服がごちゃ混ぜだったけど、大体が平民や冒険者向け。
ここは、商人とか、まあまあ良い暮らししてる人達向けかな。
冒険者にしても、魔法使いみたいな布装備とかね。
てか、何で魔法使いって布装備なんだよ?ってあるでしょ。
ゲームによるし、ファンタジーにもよるけど、大抵布。
昔読んだ話の中では、動きを阻害する物が着れない、という話。
魔法によっては詠唱だけじゃなく、大きな身振りが必要な世界観もある。
あとは単純に筋力がない、ってやつ。
頭良い奴=筋肉ない。
筋肉ある=馬鹿。
みたいな単純な構図。
まあでも嫌だとは思う。
フルプレートでガッチガチのめちゃくちゃ堅い魔法使いとか。
戦車みたいじゃん。
あ、リボンだ。
髪飾り系も売ってる。
可愛い。
着飾ってる場合でもねぇけど。
幾ら可愛くしても、敵が攻撃の手を緩めてくれる訳じゃない。
寧ろ人間相手に発情するような人型モンスターは、余計にやる気出しそう。
少なくとも冒険に付けていくものじゃないな。
私は可愛いな、と思ったお花の髪飾りをそっと元の場所に戻した。
でもリボンは買います。
いざとなったら止血にも使えるだろうし。
実益を備えたお洒落なら文句ないだろ!
いや、誰にも文句言われてないけどね。
結局私は肌着とリボンとタイツを買った。
森の中とか歩くのにね、肌はなるべく出したくないし。
草とか枝で肌が傷ついたり、虫刺されとかもある。
そういう小さい傷から病気になるのも嫌だ。
「アルトさん、この辺りで甘いもの食べれるお店とかってあります?」
「ん?ああ、俺はあんまり食わないが、女共は好きだよな。そっちに一軒あったはずだ」
「行きましょう!休憩大事ですよ」
王子も甘いものが食べたかったのか、視線を向けるとニコッとした。
荷物持ちさせられても、文句も言わない良い子である。
女子なので、一応女子なので可愛いものだって好きです。
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