スライムみたいにね!!
「あいつらただの商人じゃねぇな」
店を出ると囁くようにアルトが言った。
私はアルトを仰ぎ見る。
「貴族ではあるでしょうけど、手練れって意味ですか?」
「ああ。二人とも俺と同じ位には戦えるだろう」
「えっ、じゃあ危なかったです?」
驚いた様に言うと、アルトは首をゆるっと左右に振った。
「別に殺気は出されてねぇし、殺し合いならまあお前を逃がす事位は出来る」
「止めて下さいよ。置いて逃げるくらいなら、戦いますよ」
「はぁ?お前なんて何の力にもなんねぇだろ」
何その勝手に生命かけて、ヒロイン助けるヒーローみたいな言い草。
そういうキャラじゃないでしょ!
ぷく、と頬を膨らませると、呆れたようにアルトは笑った。
いや、そんなに簡単に命賭けないでほしい。
「爆発させてやりますよ」
「は?」
「スライムみたいに」
思い出したのか、アルトが爆笑する。
まあ、当たらなきゃ終わりの大技ですけどね。
「……はぁ、つえぇ、つえぇ。当たればな」
「逃げるのなんて性に合わないし、友達見捨てて逃げるくらいなら一緒に死にます」
「おい、勝手に死ぬ事にしてんじゃねぇぞ」
「だって、最初にそういう感じで言ったの、アルトさんでしょ!」
アルトは何だか嬉しそうに笑っている。
自分で言ってて気づいたけど、ノーツもアルトも私にとってそれくらい大事な友人なんだなぁ。
そういう気持を教えてくれた事だけは、あの人たちに感謝しよう。
変態兄弟に。
子犬王子は言われたとおりに、全力で素振りに取り組んで汗だくになっていた。
頑張ったらしい。
声をかけると振り返って、笑顔でホメテホメテと言うように、見えない尻尾をブンブン振っている。
「頑張ったみたいですね。えらいですよ」
「うむ!」
「じゃあお昼ご飯行きましょうか」
いつものご飯だけど。
アルトはまだ近くに立っていて、こちらを見ている。
どうしたんだろう?
仲間になりたそうにこちらを見ているスライムかな?
一緒にご飯食べたいのかもしれない。
「今日はアルトさんの奢りですって」
「は?……まぁいいけどな」
否定しないって事は、一緒にご飯食べたかったのだろう。
王子は一瞬、何か言いたげだったが、封殺。
「ほら、アルク、清潔して」
「あ、ああ……清潔……」
世話が焼ける子犬だ。
黄金の野うさぎ亭に戻って私は賄いを、二人はランチセットを食べたのである。
午後はお買い物だ。
暇そうなアルトも連れて、市場を巡る。
アルトがいた方が格段に安全だろうし、尾行があればアルトの方が気づくだろう。
それに、普段は行けないような場所にも行っても大丈夫だ。
裏路地とか、ちょっと怪しげな店とか。
行くかどうかはおいといて。
私は最初に古着屋へ行く事にした。
「おお、ミアちゃん!」
「今日は買い物にきましたよ!」
昨日交渉がてら自己紹介もしたので、おじさんはニコニコだ。
私もニコニコ愛想を振りまいた。
王子の為の、平民服と私の普段着、それに寝る時の為の着心地の良い服に、夏冬用の服。
あとマントね、マント。
王子に説明しつつ、選ばせる。
私も私で、選んでいく。
「どうです?似合いますか?」
「ああ。似合うんじゃねぇの?」
近くに立っているアルトに聞くと、目を逸らしたまま答える。
見てねぇじゃん。
「そういうのは、ちゃんと見てから言って下さいよ」
「見た」
「見てないし」
言い合いをしていると、王子が遠くからぴょこっと顔を覗かせて大きな声で言う。
「ミアは可愛いから、何でも似合うぞ!」
「ミアちゃんに似合わない服なんてないよ!」
何故か店のおじさんまで参戦してきた。
いや、さすがに似合わない服だってあるわ。
大阪の食い倒れ人形の服とか、似合ったら逆に嫌だわ。
そして、そんな意見は聞くだけ無駄である。
もっとこう、純粋な感想がね、欲しいんだよ。
王子とおじさんの目は曇っているからな。
王子とおじさんて、何か似てるな。
兄弟かな?
友情に篤い系女子
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