第九十三射目
前回の続き、ガルシアside(三人称視点)での開始です。
2023/10/21
以前投稿した部分に誤字報告していただき、ありがとうございました。
修正しましたが、内容に齟齬はありません。
初めてだったのでどのページだったか控える前に修正してしまいました……。
以後気をつけますので、今後ともご協力お願い致します。
読んでいただけてるのが分かるのでとても嬉しかったです。
戦いが始まったが、場は膠着状態が続いていた。
ホークアイ家の弩砲での射撃は何隻かの船を沈めた後は防がれており、効力が薄れている。
弓兵部隊も右に同じだ。
一方で、イース公国からの攻撃はガルシアが完全に防いでおり、不沈艦や街への被害は未だに報告されていない。
このままいけば夜が明け、いずれは王都からの援軍も到着するだろうと考えていたガルシアだったが、自らこちらに進軍してきた相手がそこまで馬鹿だとは到底思えなかった。
「ホークアイ家からの報告です!現在、敵船団は陣形を変えているとの事です」
「あぁ、こちらからも薄っすらだが確認している。あれはどういう意図だ?」
「私も分かりかねますが、前方の五隻を除く他の船は全て後退していっております。なお、あのまま後退しますと、弩砲の射程から逃げられてしまうそうです」
「弩砲が届かない距離からの遠距離攻撃か……?しかし、それ程の魔法を使える者はそう多くない筈だが……」
イース公国の船は、現在不可解な行動をしている。
当初全軍が先頭の船に追随していたが、幾つかの船を沈められてからは、現在攻撃してきている五隻を残し、後方への撤退を始めている。
弩砲の有効射程は五キリル程度。
それよりも離れればこちらからの攻撃は不可能だが、それは相手も同じ。
ただし、こちらよりも優れた何かを持っているなら話は別だが。
「ホークアイ家には射程外に逃れた敵船の監視を怠らず、残りの五隻に集中してもらうよう伝えてくれ」
「はっ!承知いたしました」
伝令の兵がホークアイ邸へと走って向かう。
先程から往復の繰り返しばかりさせてしまっている。
この戦いが終われば褒美を取らせよう。と考えてしまい、ふと緊張の糸が緩んでしまったと改めて気を引き締める。
更に時間が過ぎ、五隻を除く全ての船が射程範囲外に停泊していた。
残りの五隻は相変わらずガルシアの障壁に対して魔法を放ち続けている。
「これはこちらから攻めなければ埒があかんな……」
「叔父上!」
「アメリアか?右翼の方はどうした?」
「はい、そちらは部下に任せてきました。現在別働隊も見当たらず、叔父上の障壁だけで事足りている以上、我々から仕掛けていきたいと思います」
「しかし、奴らは海の上だ。船に然り泳ぐに然り、ただの的にしかならんぞ?」
「それでご相談です。私の近衛達だけで敵船に向かおうかと……」
「ふむ……。このままでは膠着状態が続いてしまうが……。しかしあまりにも危険だ」
「なので私が自ら出ます。私達ならば敵兵に遅れを取りません」
「そうだな……。よし、準備が出来次第直ちに敵船の攻略にあたれ」
「はっ!ありがとうございます」
「死ぬなよ?」
「必ず戻ってきますよ、叔父上」
アメリアが走り去っていく背中を嬉しそうにも寂しそうにも見つめるガルシア。
幼い頃から実父よりも自分に懐いており、皆の反対を押し切って不沈艦への入隊を希望した。
周りからはコネだの依怙贔屓などの陰口を叩かれても腐らず折れず、自分の実力のみで副団長へと登り詰めた。
そんな姪を戦地に送り出すのは兄弟に対して申し訳無くもあるが、それ以上に今は部下として、副団長として強い信頼を寄せているのは誰が見ても明らかだった。
【アメリアside〜三人称視点〜】
「今から私達は敵船へ乗り込み、直接の戦闘を行います!」
「「「「「はっ!」」」」」
「では、【空撃隊】出陣します!」
不沈艦副団長アメリア=ローレライとその近衛兵二十人からなる空撃隊は文字通り空中からの強襲を行う訓練を行った精鋭達だった。
不沈艦は団の特性上どうしても守りに重きを置き、相手の攻撃を完全に防いでから反撃する後の先を掴む戦法が得意だったが、この部隊は違った。
守りに徹する仲間達に対して、敢えて相手の思惑の外から攻撃する先の先を得意としている。
二人一組となって片方の障壁の加護持ちが本来相手の攻撃を防ぐ為に使用する障壁を空中に展開、それを足場としてもう一人が空中を走ふ事により、空中機動を可能とした。
それにより、飛竜や海蛇竜等の本来遠距離攻撃しか手段の無い的に相手に対しても接近し、直接攻撃を行う事が出来る様になった。
今回はそれを活かし、こちらが攻めに転じる事が出来ない現状に油断しているだろう敵船へと直接乗り込む作戦に出たのだ。
双剣に焔を纏い、空を駆け、舞う様に戦うその姿を、皆口々にこう呼んだ。
【空焔姫】
と。
相手の魔法を潜り抜け、敵船の一隻に乗り込んだアメリア達は瞬く間にその一隻を海の藻屑とした。
次は敵の先頭にある船。
その船に乗り移ろうとアメリアが皆に声を掛ける。
「次の船に移ります!」
「っ!?副団長!お逃げ下さい!」
「なっ!しまっ…………」
先程沈めた船があった位置から水柱が立ち昇る。
部下の声で回避が間に合ったアメリアだが、その余波で体制を崩され海に投げ出されてしまう。
水柱を放った犯人は半魚人だった。
海中に生息し、人の様に二足歩行が可能だが全身を鱗で覆われ、手の平や足・頭から背骨の位置までヒレがあり、顔も魚のそれだ。
普段は縄張りから出る事が無く、この辺りには生息していないのでアメリアも含め皆油断していた。
「半魚人がいます!皆、水中からの攻撃に注意して下さい!」
「副団長!早くこちらへ!」
「私は……もう…………無理みたいです……」
「副団長……?」
アメリアが海に落ちた際、その衝撃と共に足に鋭い痛みがあった。
その正体は海毒蛇。
麻痺性の毒を持ち、一度噛まれれば大の大人でもものの数秒で動けなくなる危険生物だ。
半魚人と同じくこの辺りに生息していない魔獣であった。
「早……く…………逃げ―――」
麻痺した身体で部下に指示を出すも、突如アメリアはその姿を水中に消す。
「副団長!!」
近衛の一人が大声で呼びかけるも、彼女からの返事は無く、姿も見当たらない。
『くっ。払っても払ってもキリが無い!……あぁ。あんなに勇んで飛び出してきたのにこのザマですか……。父上……母上……そして、叔父上……申し訳……ありま……せ…………』
海中のアメリアは海毒蛇の毒に加えて、半魚人に足を摑まれ引き摺り込まれ呼吸も出来ず、そのまま意識を手放した。
船を一隻沈められた事でこちらに意識を向けた別船からの攻撃がこちらに降り注ぐ。
空中に留まる為に障壁を維持しつつ、更に身を守る為の障壁まで展開する事になり、近衛兵達は動けずにいた。
「早く副団長の救出を!」
「駄目だ!海中には大量の魔獣がいる!それにこの攻撃では下手に動けば我々も危ない!」
「ですが!」
「大丈夫。私に任せて下さい」
「っ!?」
その声と共に水中から上がってくるアメリアの姿。
一人の近衛が受け止め、声の主に振り返った。
「貴女は…………」
「皆さん、早くこの場から離脱して下さい。ここからは貴方方に代わり私がお相手します」
そこに居たのは海面に立つ一人の少女の姿。
「私の名はフラン=ディーセス。ディーセス辺境伯家の娘にして、ホークアイ侯爵家当主の婚約者。この街を守るのは両家の役目。それを今果たします!」
水の大精霊から下賜された三叉槍を持ち、凄まじい魔力と精霊を従えて現れたフラン。
ユウリが居ない今、誰も見た事が無いであろう力を隠す事無く発揮する。
ユウリの帰る場所、このアリアを守る為に。
久々の【補足説明】
半魚人
一体だと危険度三級だが、基本敵に群れを成しており危険度は準ニ級と認識されている場合が多い。
その生態は人間と魚の生態が混ざっている。
縄張り意識が強く、普段はそこから離れる事無く暮らしており、その付近で他の魚や生物(魔獣含む)を狩り生活する。
空を飛んでいる鳥や海面に居る生き物を水属性魔法で撃ち落とす等で、海中に引き摺り込んで食料とする。
海毒蛇
危険度は四級と強くは無いが、群れで行動をしたり、他の魔獣と協力して狩りを行う場合、その危険度は数字以上となる。
噛みついた際に牙から獲物へ麻痺性の毒を流し込み、それにより溺死させる。
毒のせいで他の生物に襲われない為、自分よりも強い魔獣と行動を共にし、お溢れをもらう個体も多く存在する。
どちらも基本的には深い海に生息しており、シンフォニア王国近海では滅多に見かけないので、全員が油断していた。
【皆様へのお知らせ】
先日、X(旧Twitter)にてアカウントを作成しました。
この小説の更新・休載の報告や作者が抑えきれない欲望のままの投稿をする予定です。
まっしゅ=ホークアイ
もしくは
mash_hawkeyes
で検索、フォローしていただくと嬉しいです。
また、ブックマーク・いいね・コメントもお待ちいたしております。
拙い文章ですが、まだまだ終わりませんので、これからも宜しくお願い申し上げます。




