第九十四射目
昨日、名前が同じ登場人物がいる事に気付き、修正致しました。
その旨を活動報告に投稿しましたので、お手数ですがお読みいただければ幸いです。
なお、ここまでの内容に支障はございません。
これからも引き続き、この小説をお楽しみいただければありがたいです。
【ホークアイ家side(三人称視点)】
少しだけ時は遡り―――
「フラン様!」
屋敷から敵船の状況を監視する為に遠見の魔道具を覗き込んでいたフランだったが、
「私、行ってくる!」
と一言だけクレアに声を掛けて崖から飛び降りてしまった。
彼女が止める暇も無く海へと真っ逆さまだったが、海面へとぶつかるか否かの時にいきなり減速、ゆっくりと海上に降り立った。
「姉さん!今、今フラン様が落ち……あれ?海の上に……?」
「……立ってるわね。旦那様もそうですが、フラン様も負けず劣らず規格外になってきたというか……。それにしても何でいきなり……」
「さっき不沈艦の副団長が出陣して敵船への攻撃を始めたんだ。でも、一隻沈めて二隻目に移ろうとした時に魔獣から反撃されて……」
「こんな浅い海域に魔獣?」
「うん、あの感じ半魚人だと思う……」
「何故こんな所に?普段はいない筈……」
「奴等が連れてきた……って考えるのが妥当かな」
「調教使いがいる。って事?でも……」
魔獣や魔物を従える事が出来るのはリックの様な調教系統の職種を持つ者に限られる。
しかしながら、二人は釈然としない。
「半魚人って普通は従わないんじゃ……」
「そうなんだよ……。英雄級以上なら分からないけどね」
「そう……。とにかく今は引き続き敵船への警戒と攻撃の継続。手が空いてる者にフラン様の援護を頼んで」
「分かった。伝えてくるよ」
ユウリもフランもいない今の状況で指揮を執るの場合、地位が一番高いウィリアムが適切だが、彼には地下施設の指揮をお願いしている。
その為、現在はクレアが全権を握るのだ。
「ユウリ様……早く帰ってきて下さい…………」
誰に言うわけでも無く、クレアの呟きは消えていった。
【フランside〜三人称視点〜】
「私の名はフラン=ディーセス。ディーセス辺境伯家の娘にして、ホークアイ侯爵家当主の婚約者。この街を守るのは両家の役目。それを今果たします!」
海上に降り立ったフランはアメリアを助けた後、槍を振り回し、海面に顔を出している魔獣を次々に屠る。
「マリン!」
マリンに指示を出せば水の槍が創り出されて海上からは見えない、海中に潜む半魚人と海毒蛇を串刺しにしていく。
「魔獣達は私が引き受ける!不沈艦の皆は少しずつ撤退をして!」
「我々も戦います!」
「アメリアさんは毒に侵されているかもしれない。命に別状は無いと思うけど、念の為一度陸に戻って治療をして。後、魔獣がいる事を伝えてほしいの」
「…………分かりました。すぐに戻ります!」
「ありがとう」
アメリアを守りながら撤退していく不沈艦の団員達。
フランはそれを横目に見ながら、魔獣の攻撃と敵船からの攻撃を撃ち落としていく。
「あの人達に手は出させない!勿論、アリアにもね!」
三叉槍に魔力を込める。
魔力を帯びて輝きを増したそれを一度突き出すだけ。
それだけで敵船の横っ腹に大穴を開け、瞬く間に沈んでいく。
船を沈めて、乗組員に手を出さないのはフランの甘さ故なのかもしれない。
「あの先頭の船さえ沈めれば……」
この場に残るのは三隻の船のみとなった。
本当なら一隻ずつ片付ければ危険は減るのだが、なるべく人を殺めたくないフランはこの船団の長が居るであろう船を沈める為に三叉槍へ魔力を流し込む。
今正に突きを放とうと思ったその時―――
「まさかまさか。君の様な可憐な少女に船を沈められるとは思ってもいませんでしたねぇ」
背後から声が聞こえて、急いでその場から飛び退く。
「誰っ!?」
フランと同じ様に。いや、よく見ると少し違うが、海面に立っている真っ黒のローブを纏い、フードを目深に被った一人の人物がそこにはいた。
「今更誰かとは不思議な事を聞くんですねぇ。先程までこちらに向けてそのおかしな槍を構えていたではありませんかぁ」
「じゃあ貴方が、この船達の指揮官…………」
「指揮官……と言うのは少し違いますねぇ。もっと聡明な方かと思いましたが……。私は指揮なんてしていませんからぁ。違いますぅ」
「じゃあ貴方は何者なの!?」
妙に皮肉っぽい言い回しと妙に間延びした話し方がフランの神経を逆撫でるする。
「それを教える筋合いも意味もありませんよぉ。だって貴方は……」
「っ!?」
「…………ここで死ぬんですから」
話し方が一変、端的に『殺す』と言い放ち、膨大な魔力と人によってはそれだけで戦意を失う程の殺気をフランに向ける。
それを何とか堪らえているが、三叉槍を持つ手が震えていた。
『この人、多分騎士団長と同じ……もしかしたらそれよりも強いかもしれない』
相手と自分の実力差を見誤る事なかれ。
それはユウリが再三言っていた事だった。
見誤れば即死に繋がると。
今正にその状況であり、本来なら文字通り命懸け逃げなければならない相手。
しかし、アリアを、ユウリの帰る家を守る為にフランは決して逃げなかった。
「おやぁ?まだ立ち向かおうとしてきますかぁ?まさかそこまで馬鹿だとは思いませんでしたぁ。まさか、守る為にとか言わないですよねぇ?貴女はどう見ても守られる立場。弱い存在ですよぉ」
「誰が!!」
魔力の込めた三叉槍を振り、巨大な水の刃をローブの人物に放つ。
しかし、当たった瞬間相手は消え、また違う場所に現れる。
「ほらぁ。こんな事も見抜けない人間が僕を殺せる訳無いじゃないですかぁ」
「このぉ!」
現れた場所にまた刃を放ってまた躱される。
当たってる筈なのに、当たったそばから消え、また次が現れる。
「いくら続けても無駄ですよぉ。まだ分からないんですかぁ?」
「なら、これはどうだ!!マリン!!」
マリンを呼び出し、自身の周辺一帯に相手が逃げられない様、海水で出来た水の槍を創り出す。
「…………貴女は水の加護じゃ無いんですか?」
「誰がそんの事言ったの?」
水の槍に貫かれながら、それを意に介する事無く話し掛けてる相手を不気味に思いながらも返事を返す。
驚いているのか、特徴的な話し方が変化している。
勿論、わざわざ教える必要は無い。
「そうですか……。それなら貴女を殺す事はやめましょう」
「え?」
「その代わり……」
またもや姿を消すローブの人物。
周りを見渡しても姿が見えず困惑するが、次の瞬間、敵船の方向から大きな魔力を感じてそちらを見る。
「なっ……!」
フランの目に移ったのはいくつもの鎌。
しかし、その大きさは尋常ならざるものであった。
そこにある船より、いや、海蛇竜よりも大きいその漆黒の大鎌がパッと見で数十本。
「だ、駄目っ……!」
それをアリアに向かって放つローブの人物。
大鎌の魔力と障壁の魔力がぶつかり、目に見えない魔力の余波が辺り一帯を襲う。
全て消えても際限なく生み出され、終わる事無く、アリアを襲う。
「やめてぇぇぇぇぇ!」
三叉槍に魔力を流し、マリンに魔力を譲渡して、止めようと猛攻を仕掛けるも、闇の渦が現れて飲み込まれる。
更に、それを防ぐかの様に残る三隻の船からも絶え間なく魔法攻撃が放たれ、そちらにも対応しなければいけない。
徐々に障壁の魔力が少なくなり、そして砕かれて魔力が霧散した。
「あ……」
残る大鎌がアリアの港を襲う。
遠くてよく見えず、聞こえもしないが、騎士団がいるあの場にあれ程の魔法が放たれてしまえば一溜まりもない。
しかし港に当たる寸前、不自然に魔法が止まる。
「な……んで…………?」
フランがそう呟くのも無理はない。
止める必要がな無いのだ。
いつの間にか背後に現れたローブの人物はフランにこう囁く。
「僕がこう、指を触ればあの魔法は容赦無く港を襲うよぉ。そうしたらいっぱい人が死んじゃいますねぇ」
「じゃあ何で止めたの?気が変わった?」
「まさかぁ。でも気が変わるかもしれませんよぉ?」
「どうしたら良いの?」
「君が僕について来てくれればあの魔法は消してあげますぅ」
「嫌だと言ったら?」
「そうですねぇ……」
ローブの人物は指を軽く振る。
すると、一本の大鎌が港を切り裂いた。
「っ!?やめて!」
「勘違いしないでほしいなぁ。僕はいつでもあそこにいる人達を殺せるんですよぉ。これはお願いでも、交渉でも無いの分っているでしょぉ?」
「私が行けば、本当に攻撃しないで引き上げてくれるの?」
「約束しますよぉ」
「……分かった」
槍を下ろし、降参の意思を見せるフラン。
それに満足したのか、ローブの人物はフードを取り邪悪な笑みを見せる。
「じゃあ約束通り、魔法は消しますねぇ」
もう一度指を降ると鎌の魔力は霧散し、消えていった。
「じゃあ、一度僕達の船に来てもらいましょうかぁ」
フランを手招きして、船に向かうその人物。
ボサボサの紫色の髪を無造作に伸ばし、その表情も長い前髪でよく見えない。
分かるのは、邪悪に歪んだその口元だけだった。
明らかな強キャラ登場。
それにしても戦うヒロインって良いですよね。
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