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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第五章 邂逅と別れ

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第八十一射目

「さぁ、そろそろ出発しよう。フランも準備は良い?」

「うん、私はいつでも大丈夫だよ」

「二人共お気を付けて」

「ありがとう、ソーラ。行ってくるね」

「ユウリも気を付けて行ってきなよー」

「ありがとうございます、リックさん」

「…………ご武運を」

「いや、ロビンさん。そんな戦争に行くみたいな言い方……」

「む、すまん。違ったか……」


 三者三様の見送りの言葉を掛けられて僕とフランは海へと潜る。

 今の僕達はマリンの魔力を身体に纏っており、身体が濡れない。

 詳しい原理は分からないけど、一定の間は呼吸する事も可能だ。

 凄いな、精霊って。

 簡単に言えば、濡れずに呼吸も一定時間必要無い状態で水の中を泳げる。

 ただし、不都合もいくつかある。

 まず、移動。

 やはりあくまで水中なので移動は泳ぎが主になり、早く動くにはマリンの力を借りてする事になるが、僕がフランに伝えて、それをフランがマリンに伝えなければならないので、その時差がある。

 移動は主にマリンが引っ張ってくれるので、泳ぐ事は殆ど無いだろうけど。

 因みに声の伝達はマリンの魔力を通じて水中でも難無く会話が出来るけど、やっぱり原理は不明。

 次は僕にとっての不都合だが、他の魔力を纏っている事による加護の不具合が起きている。

 今日までに何度が試していたのだが、どうにも他の魔力が干渉するらしく、地上と比べて加護の精度が良くない。

 また、それに併せて水中なのも関係がありそうだ。

 それでも他の人に比べれば水中でもよく視えてよく聞こえるからまだ良いんだけど……。

 いつもより何かと制限がある中で今回の調査に踏み出したのは陛下の命に従っただけじゃない。

 フランもよく分からないみたいだけど、マリンがこの遺跡の事になると過敏に反応するらしく、それも気になっての調査だ。


『フランにもそろそろ見えてきた?』

『うん。思ったよりも暗いから、ハッキリは見えないけどだけど』


 遺跡まで残り五百メリルの位置で一度止まる。

 加護が不安定とはいえ、全く視えないわけじゃないので周りを視渡すが、魔獣らしきものは見当たらない。

 マリンも特に反応しないので大丈夫だろう。


『今のところ大丈夫だけど、何処かに隠れてたり見落としているかもしれないから、予定通りまずは周りを見て回ろうか』

『分かった。マリンお願い』


 先程よりも速度を落としながらマリンが先頭を泳ぎ、魔力で僕達を引っ張ってもらう。


『遺跡の壁に付いているのは魔獣なのかな……?それに何か輪郭がボヤケてると思ってたけどやっぱり認識阻害の障壁が張られてる』


 近付くに連れて屋敷から視ても海中から視てもボヤッと遺跡らしきものがある。程度でしか分からなかったが、この距離になると全貌が分かる。

 遺跡全体を魔力で出来た薄い障壁が包んでおり、それが認識阻害や防壁としての役割を持っているのだろう。

 また、壁には所々ヒトデ?らしきものも付いているが、あれはただの飾りか魔獣かはたまた防衛機構なのか?


『―――え?ユウリ!遺跡の向こうから大型の何かが近付いてきてるみたい!』

『何か?』

『うん!マリンが教えてくれたんだけど、上手く読み取れなくて……』

『フランが読み取れない……?分かった。僕の加護でもまだ感知出来ないみたいだ。フラン、戦闘準備!最大限警戒して、必要なら迎え撃つ』

『分かった!マリン、よろしく!ユウリ、()()の準備もしておいて』

『了解』


 このタイミングで近付いてくるのであれば、ただの偶然とは言えないだろう。

 何かが来るであろう方向に視線を向けて、今回は古代樹の弓では無く弓幹の射手側にいくつかの魔石が取り付けられた弓、僕専用のファルコンを用意する。

 取り付けられた魔石はそれぞれ属性が宿っているので、 矢に刻印しなくてもその属性魔石に魔力を流して、それを矢に流し込めば隼の爪(ファルコクロー)ど同様の属性矢を射る事が出来る。

 矢に属性の刻印をしなくて良い分、耐久強化や飛距離上昇を刻印を施して、威力や射程を上昇させている。

 本当はこれを完成形にしたかったのたが、『並んでる魔石の一つだけに魔力を流すなんて、戦闘中にそんな馬鹿げた事を出来る訳無い』と言われたので、それが出来る僕専用になった。

 これ以外は試作段階の物と同様の造りになっている。


『そろそろ来るよ!』

『うん、僕にも薄っすらと視えて……き…………』


 近付いて来たのを教えてくれたフランに言葉を返そうとしたが、僕の言葉はそれ以上続かなかった。

 いや、続ける事が出来なかった。

 遺跡から顔を出し、こちらを見ている物を見て思わず絶句した。


『あんなに大きい生き物……初めて見たよ…………』

『これは…………』


 現れたのは神々しい程の純白の身体を持つ鯨。

 それだけでも驚いたが、それを上回るのはその大きさ。

 いくらマリンの魔力と水中で加護の効力が弱まってるとは言え、認識阻害も使ってないそれの全長が視えない。

 つまり、僕の加護で全体が視えない程の大きさ。

 まるで巨大な城がそのまま泳いでいるかのようだった。


『この大きさに気付かないなんて流石におかしい。それに、認識阻害も何も使っている気配が無い……』


 瞳の大きさだけでもそこら辺の大型の魔獣程の大きさがある。

 目全体ならば、大型船と匹敵する。


『ゆ、ユウリ。どうする……?多分逃げられないよね……』

『戦う……しかない。けど……。これは……』


 この水中で逃げ切れる可能性は皆無。

 倒せれば良いのだろうが、果たして矢が通じる相手なのか……。

 せめて、フランだけでも逃がす為に弓を構えて矢を射る。

 風属性の魔石に魔力を流した矢、風の隼の爪(ファルコクロー)、【緑爪】を弓に番えて射る。

 風を纏わせる事で水中でも威力減衰せず、白鯨の目に凄まじい勢いで近付いた。

 が、しかし…………。

 当たる直前に弾かれた。

 それでも矢を放ち続けるが、先程と同じく当たる直前に全て弾かれてしまう。


『くそっ!防御障壁も魔法も、何も使ってる気配が無いのに……。こうなったら……』

『待ってユウリ!』

『無駄かもしれないけど、せめてフランだけでもっ!』

『違うの!あの白い鯨……。多分、精霊なんだと思う…………』

『精霊…………?あんなにハッキリ見えているのに?』

『そうなんだけど…………。あまりに大きい魔力で最初は分からなかったけど、今は……なんとなくそんな感じがするんだよ』


 フランは《大精霊の加護》持ちだ。

 その為、他の人より敏感にその気配を感じ取る事が出来る筈。

 そのフランがすぐに感じ取れない程の魔力を持っているって事はもしや…………。


『まさか…………大精霊?』

『多分…………。あっ!マリンっ!』


 白鯨が現れてからフランが抱き抱えていたマリンが突如暴れて白鯨に近付いていく。

 慌てて追い掛けるものの、水中ではマリンの補助無しで追い付ける訳が無い。

 マリンが白鯨の目の前に辿り着くとこちらを振り返り、微笑んだ。

 そしてマリンは光の球になって、そのまま瞳の中に吸い込まれていく。

 先程まで大精霊と分かって、安心していた矢先の事だった。


『マリンっ!!待って!マリンを返してっ!!』

『フラン落ち着いてっ!』

『でもっ!マリンがっ!』

『大丈夫。マリンは無事だよ』

『何で分かるのっ!?』

『だって、このマリンの魔力、まだ消えてない』

『あっ…………』


 涙を流しながらマリンを取り戻そうと白鯨に近付くフランを落ち着かせる。

 マリンの魔力が消えていないって事は無事な筈だ。


『安心して下さい。人の子らよ』


 頭の中に声が響く。

 その声は優しく慈愛に満ちた女性の声だが、並々ならない重圧と威厳がある。


『この声……。貴女は……?』

『私の眷属である海の精霊……そう、マリンと呼ばれているのですね。マリンから教えてもらいました。とても大切にしていただいている様ですね』

『マリンは無事なのですか?』

『えぇ。今は私と同化していますが』


 声の主、白鯨の声が頭に直接語り掛けてくる。


『私は水の精霊の長。人の子からは大精霊と呼ばれる存在です。私は貴方方とお話がしたいと思い、姿を表しました。少しお付き合いいただけますか?』





 水の大精霊。

 本来人に姿を見せる事が無い存在が今、目の前にいて、僕達との対話を求めている。

 尋ねられてはいるが、その雰囲気は有無を言わせてくれる様には思えない。

 遺跡調査の筈がまさかの大精霊との邂逅。

 リックさんの言う通り、何か起こらない訳が無かった。

 超巨大生物って怖いけど、心躍りますよね?

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