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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第五章 邂逅と別れ

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第七十八射目

「……………………ふっ!………………っと」


 可視化出来る程の魔力を纏った矢が地平の彼方まで飛んていく。

 そんな秋の四十二日目の早朝。

 冬が近付いてきておりもう朝晩は寒くなってきたが、いつも通りまだ日が昇る前から朝練をしている。

 僕の屋敷の庭からは海が一望出来る。

 つまり、遮蔽物も生き物もいない(魔獣や鳥がいるが)空に全力で矢を射る事が出来る。

 みんなから『それ以上強くなってどうする?』と言われるが、僕からしてみれば守るものが増えた今、強くなって損は無いと思っている。

 その為にもまずは基本の弓に矢を番え射る動作確認と、弓を使った近接戦闘・《練魔術インクリース》を行う。

 その後、屋敷に移り住んでから始めたのが、火炎竜(ファイアドラゴン)を超長距離から貫いたあの一射を再現する事。

 あの時は古代樹の弓・参式と最上級の古代樹の矢を使ったが、弓を引くのにとんでもない量の魔力と凄まじい集中力が必要だし、矢は数が限られている。

 その為、あの《流星(ミーティア)》と呼ばれる一射をせめて弐式の弓で射れる様に訓練をしている。

 当初、射程はみるみる伸びて今では三十キリルまで届く様になった。

 しかし、威力はどうしても矢が魔力に耐え切れず放つ前に駄目になってしまい、そうならないギリギリに抑えると半減してしまっていた。

 それならばと考え方を変えてみた。

 弓から矢の中に魔力流し込むのまではそのまま、続いて矢の周りにも魔力を纏わせてみたらどうか?

 そう思いやってみるとこれがまた難しい。

 均一に纏わせなければ真っ直ぐ飛ばない、魔力が少ないと纏わせる意味が無い、それとは逆に多過ぎても途中で霧散して結局意味が無くなってしまう。

 矢の内と外の魔力量をまるで、二つの容器に塩一粒単位で合わせる様な気が遠くなる作業をしなければならない。

 しかもそれを弓を引きながら、敵に狙いを定めつつ行うので、その難易度は更に跳ね上がる。

 それを可能にしたのは五感超強化、しかも今まで戦闘には全く役に立たないと思っていた味覚だった。

 魔力に味がある。と皆に言ったらもうなんか凄い目で見られたけど、正直それ以外に伝えようがなかった。

 勿論、直接舐めたり食べたりする訳では無く、空気中に漂う魔力が舌に届いて、丁度釣り合った時にその味が変化する。

 その状態で矢を射ればあの時程の威力にはならなくても、大体七割程度の威力で必要な魔力量や集中力を高める時間が激減する。

 まさかの大発見に心を踊らせた僕は、今までの動作を改めて見直している最中だ。

 五感超強化の全てを活かした戦い方で更なる高みへ登る。

 山の頂を超えた空まで。

 あれか?達人の道は落ちるって教えられたから奈落の奥底の更に深淵まで落ちるって感じかな?

 ただ、それにより問題も発生。

 使わない五感が無くなった分、《五感強化反転(リバース)遮断(カットオフ)》が使用出来ないので、それぞれの上限を増やさなければならないのだが、その方法が未だに掴めない。

 こればっかりは一朝一夕で出来る訳も無く、人に教えてもらう事も出来ないので気長にやっていこうと思っている。

 必要なら使えば良いしね。


「旦那様、朝食の用意が出来ました」

「ありがとう、ケティ。汗を流したらすぐ向かうね」


 訓練が終わる頃を見計らった様にケティが朝食の報せを届けに来てくれる。

 一度お風呂で汗を流して着替えた後食堂に向かった。


「旦那様、あの少年の研究に成果が出たと報告がありましたので本日の昼食後に向かわれて下さい」

「本当?もし成功なら色々と動かせるから先にそっちを訪ねてから書類関係に目を通す様にしても良いかな?」

「かしこまりました。その様に伝えておきます」

「よろしく。あと、アーロンはいい加減一緒にご飯食べようよ」

「いえ、私は後ほど取らせていただきます」

「頑固だなぁ」

「そういう性格ですので」

「はいはい……」


 我が家では基本的に僕含む住人と従者は身分関係無く食事を取り、お風呂も結局は自由に使ってもらっている。

 全てが僕の後にしか出来ないと効率が悪いし、気を遣ってしまう。

 今は僕・フラン・クレア・クルト・ウィル・パリスと食事を作ってくれた料理人と運んでくれたケティ含むメイドと執事の一部が一緒に、同じ食事をしている。

 他人が居れば小言を言われかねないが、ホークアイ家ではこれが普通であり、当たり前だ。

 それなのにアーロンだけはいつまで経ってもそれを了承してくれない。

 嫌われているのかと思う位に拒否される、辛い。


「御馳走様でした。フラン、今日の予定は?」

「何も無いからユウリに付いていくよ」

「ありがとう。アーロン、向こうの準備は大丈夫そうかな?」

「はい。いつでも大丈夫との事でした。今から向かわれますか?」

「うん、お願い」

「かしこまりました」


 そうして僕らはホークアイ邸地下三階の研究所の一室に着いた。

 ここは幹部以外立ち入り禁止の極秘研究を行っている。

 ノックして扉を開けると、すぐに刺激的な匂いが鼻腔をくすぐった。


「良い匂いー。ユウリ!ここってもしかして!?」

「そう、フランが思ってる通りだよ」


 ここで秘密裏に研究しているのは蜂蜜の養殖だ。

 蜂を育てるから養蜂と言うべきかな?

 元々とても貴重な蜂蜜を普段の生活で食べていた僕だったが、本来はそうじゃない。

 天然物は供給量がとても少なく、そこそこの貴族の身分でも大金を積んでやっと、たまにしか口に出来ない(金額的には食べようと思えば食べられるが、継続的に安定して入手するのは難しい)。

 それを人工的に採れる様にして、販売すればそれだけで一族が一生遊んで暮らせる程の富を手に入れられる。

 しかし、何故今まで誰もしなかったのか?

 理由は簡単、人間が食べられる蜂蜜を作る蜂自体が魔獣であり、その主な生息地がオスリア大森林だからだ。

 因みにその魔獣の名前は甘味蜂(ハニービー)で、発見した人の喜びが見て取れる名前だと思う。

 この蜂自体は小さくて大人しく、毒も持っていないが、ただただ発見するのがとても難しいし、それを大森林で探さなきゃいけない。

 それを捕獲するとなれば困難を極める。

 しかし、ここにはオスリア大森林を庭の様に駆け回れる人間、僕がいる。

 そして、この養蜂に適した人材も奇跡的に確保した。


「兄ちゃ……じゃなかった。旦那様、いら……ようこそお越しくださいました」

「今まで通りで良いよ、ポン」

「へへっ。やっぱりおいらこういう言葉遣い苦手だ」

「はぁ……。旦那様もポンも表舞台ではちゃんとしてくれれば文句は言いませんが、締める時は締めて下さいね」

「「はーい」」


 そう、その重要人物はトッドで知り合った元奴隷のポンだった。

 信託の儀を受ける前に捨てられ奴隷として育ってきたので、加護も職種も分からなかったのだが、それ以外の受けた事無い子ども達と一緒に受けさせたら大当たりだった。

 下級加護《樹の加護》と上級職種《調教術師》を持っている。

 職種はリックさんと同じで、魔獣と心を通わせる事が出来る。

 これにより僕とオスリア大森林へ向かい、ポンが甘味蜂(ハニービー)と契約してここに移り住んでもらった。

 そして、広めの一室を《樹の加護》で蜂達が好む木々や草花が生い茂る環境にして、まずは蜂を増やす事から始めた。

 その後、交渉をしてもらい、多種多様な草花を集める事を条件に蜂蜜の一部を分けてもらっている。

 蜂達はそれぞれの一族?家族?で好みが違うので、巣箱から採れる蜂蜜の種類は現在五種類、今後も増やしていく予定だ。

 その時はこの部屋じゃ手狭になるから、地下六階でも作ってもらおうかな。


「じゃあ兄ちゃん、まずはこれ。食べてみて」


 一つの瓶を開けて、そこから出した蜂蜜をパンに垂らして渡してくれる。

 お礼を言って受け取り、口に放り込むと……。


「これは……」

「んん〜!美味しいー!!」


 フランが僕の言葉を掻っ攫ってくれたが、本当に美味しい。

 甘さがさっぱりしていて、花の香りを感じる。

 他も試食してみて、それぞれ少しずつ味が違うが、変わりなく美味しい。

 どれが一番か?なんて野暮な話、ぶっちゃけ好みだ。

 僕は最初に食べたクローバーの蜂蜜、フランは甘みとコクが強いベリーの蜂蜜、ポンはクリーミーで濃厚なマヌカ蜂蜜がそれぞれ好み。

 因みにアーロンは極度の甘党らしく、全てが最高と評価している。

 さて、話を本題もとい商売に向けてに切り替えていく。


「ところで、これって量はどれくらい採れそう?」

「そうだった。蜂達に聞いたら、『月に各種類で大樽一杯ずつ』だって」

「え?樽ってあの樽?」

「うん、多分その樽」

「そうかぁ……樽かぁ……」

「え?少ないかな?あんまり貰うと可哀想だと思って……」

「いや、逆。想像の遥か上をいく量だった」

「え?」

「え?」

「お二人共。話が全く進んでいません」


 いや、だってあの大樽だよ?

 お酒なら大樽一つで六百杯分はあるんだよ?

 

 そして、ポンから聞いた話はこうだった。

 外敵が居らず、元となる草花の環境が完璧に整った状態で毎日作れば自分達が食べて子どもを育てる分を差し引いてもそれだけ集める事が出来る。

 更に数が増えれば倍々に生産量は増えていくらしい。


「アーロン。一つ良い?」

「何でしょう?」

「これって毎月全部売ったらどうなる?」

「そうですね……。多分ですが数年で全国民が毎日朝昼晩食べられる様になりますね。勿論、価格次第ですが。そして、色々な商会から目の敵にされるでしょう。主に命懸けで蜂蜜を仕入れている所からは特に」 

「ですよね〜……」


 まだ安定してるとは言い切れないが、少なくとも商売敵に真っ向から喧嘩を売る位には暴力的な生産力だった。




 これは早急にマロさんに連絡して話をしなければ……。

 嬉しい悲鳴ではあるけど、結局仕事が増えていき、頭を抱える僕だった。

 教えて!秘書官!のコーナーですー!


某堅物秘書官「まさかの私ですか?答えられる事は答えましょう」


では早速。


Q1.蜂蜜はそんなに貴重なの?


某堅物秘書官「はい。以前ディーセス辺境伯閣下が申していた様に、最高級品は小さい小瓶、現代でいうパン屋で販売されているお試し用のサイズで金貨一枚はします。日本円に換算すると百万円相当です」


Q2.現在のユウリってどれくらい強くなっているの?


某堅物秘書官「そうですね……。強さを簡単に比べる事は出来ません。ただ、射程だけで見ればこの世界でもほぼ最上位かと。例えば現代日本にある自走榴弾砲の射程が15〜30kmとなってます。それはあくまで最大射程、つまり山なりで一番飛ぶ距離ですが、旦那様はそれを水平に矢を放って威力が変わらない状態で届かせる事が可能です。はっきり言って異常かと」


Q3.ホークアイ侯爵家の現在の収入は?


某堅物秘書官「明細は機密事項なのでお教え出来ません(作者がそこまで考えていない)が、回復薬や回復錠、今後の魔道具・装備に加えて、蜂蜜の販売が軌道に乗れば、日本円で年収一億は下らないかと思います」


Q4.ユウリに対していつも辛辣だったり、食事を一緒に取らないのは嫌いだから?


某堅物秘書官「そんな事ございません!私は旦那様を世界で一番尊敬いたしております!王よりも!神よりも!あの御方はその全てを凌駕する人物です!御名前で呼ぶ事すら躊躇われる程に!あぁ……もうあの御方は…………」



はい、ユウリへの尊敬が上限突破してトリップしたところで今回の教えて!秘書官!のコーナーは終わりになります。

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