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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第二章 少年の岐路

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第六射目

これより第二章スタートです!


※今話からユリウス視点に戻ります。

 僕を包んでいた光が収まり目を開けると、全く知らない風景が映る。


「本当に森の中に転移しちゃったんだ……」


 周りを見渡してもひたすら木、木、木。

 背の高い木が生い茂り過ぎて、まだ昼過ぎだったはずだけど、薄暗い。

 確か、オスリア大森林に生息する木々は大陸中央の世界樹の子どもと言われており、他の樹木と違い魔力を多く含んでいるせいなのかは分からないけど少し黒っぽい見た目をしている。


 「……っと。感心してる場合じゃなかった。まずはストレージリングを確認しなきゃ。色々入れてくれてるとは言われたけど」


 ん?ところでこれ、どうやって中身取り出すの?バッグと違って手を入れるところもないし。

 こんなことならあんなに格好つけず、ちゃんと説明聞いてくれば良かった・・・。

 魔力を登録した人しか使えないって言われたから僕しか使えないし・……。というか、人がいる訳がない森の中だし。


「やばい……。もう詰んでるじゃん……」


 とりあえず、色々試してみよう。

 リングに触れてみる。……うん、反応なし。

 魔力をもう一度流してみる。……少し疲れた気がする。魔力を吸われたのかな?

 じゃあ、中身教えろ〜。っと念じて分かれば困らな―――


「……っ!?何っ?何が起こってるの!?」


 ヤケクソ気味に中身を教えてくれと心の中で願ったら、突如頭の中に膨大な情報が流れ込んでくる。


「……つぅ。こ、これ……、指輪の、中に入ってるものの一覧……?」


 情報が多すぎて、軽い頭痛に襲われながらもなんとなく理解してきた。

 ウィルが言っていた通り、食料や水、武器に防具と服、それに森の中で必要そうな物が入っていそうだ。

 それにしても視界はいつも通りなのに頭の中に文字が浮かんでいるようで、少し気持ち悪い。

 念じれば良いなら、出したり入れたりも簡単かもしれない……。

 悠長に確認している時間は無いけど、分からないままの方が今後に影響しそうだ。

 やれることはやろう…………。




「ふぅ……。これで一通り大丈夫そうかな」


 指輪の中身も出し入れの仕方等を確認し、これからの行動に必要な物を取り出し身につけた後、一息ついたところで水を口に含む。

 よくよく考えると朝食後からここに来るまで何も口にする暇がなかった。


「こんなにただの水が美味しいなんて初めてだ。それにしても本当に中身は駄目になってないんだなぁ」


 同じ指輪から取り出した干し肉を齧りながらも自分の格好を改めて確認する。

 多少ラフな部屋着とはいえ、森の中を歩くには窮屈だったから服装から着替えた。

 服は動きやすそうな長袖のシャツに厚手のパンツ、森や山を歩きやすく、踝程度まで守ってくれるショートブーツを履き、上から丈が短めのポンチョを羽織った。

 防具は年齢的に鉄の防具は着ることは出来ないし、出来ても動き辛らそうなので却下、結果として革の胸当てと篭手にし、左手には木製バックラー。

 武器は屋敷でも練習で使っていたのと同じ様な短弓があったのでそれと専用の矢筒、念の為に太腿にはナイフを装着済みだ。

 

「よし!これで少しは様になったかな?」


 下級とはいえ《弓使い》だからか何射か試し打ちしてみたけど、矢は思ったところにちゃんと飛んでいく。

ただ・・・


「木が硬すぎるでしょ……。刺さるどころか傷一つつかないし…………」


 オスリア大森林にある木々はさっきも言った通り、世界樹の子ども。

 一般的には【古代樹】と呼ばれ、鉄よりも固く軽いと評されている。

 そのせいで伐採するにも一苦労なのか、市場にはなかなか出回らないし、出たとしてもそれ相応の金額で取引されている貴重品だ。

 

「まぁ、出来ない事を嘆いてもしょうがないし。そろそろ動き出さなきゃ。せめて雨が降っても凌げる所が有れば良いけど……。それにどっち向かえば良いのかな…………」


 太陽の位置を確認したいが、木々に覆われて殆んど分からない。

 それでもなんとか日が傾いている方向を確認し、それを元に進むしかない。


「仮に、無事北に抜けてもイースに戻ったら意味ないし。【サリオ王国】は隣国だからもし安全とは言い難いもんね」


 「そもそも、ここの方が危険なんだけどさ」っと独り言を呟き、苦笑しながら南に歩きだす。




「正直、舐めてた……」


 僕は腐っても貴族。いや、元貴族か。

 街中くらいしか歩いた事がないし、十歳になったばかり。

 そんな子どもが世界一深い森を簡単に踏破できる訳がないよな。


「そりゃあ、ここに来れば何をせずとも、処分出来る訳だ」


 気にもたれ掛かりながら、肩で息をする。

 時間にしてまだ一時間も歩かないうちに足が棒のようになり、動けなくなる。

 生まれた時から野山に囲まれて育つ農村の子どもの方が体力がありそうだ。

 このまま暗くなってしまえば、それこそ命の危機だ。


「そういえば、加護だけは伝説級だったけど……。どうすれば良いんだろう?」


 すっかり忘れていた。

 

伝説級加護《五感超強化》


視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚を強化出来る筈だし、超強化と呼ばれるくらいだからそれなりの効果がある筈…………、な・ん・だ・け・ど!

 またもや使い方教わってないしっ!

 結局生かす気がない訳だ。

 

 だけど!それでも!諦めたくない!もう貴族でもなんでもないんだ!

 汚くても!見苦しくても!格好悪くても!死ぬまで足掻き続けてやるっ!


 突如、身体の中に何かが駆け巡り、目に見えずとも身体の感覚が変わる。


 薄暗かった視界がクリアになり、聞こえる筈の無い音が聞こえ、木々に隠れていた香りも肌に当たる風もさっきよりも明確に分かる。


 味覚は、分からない。何か食べたら分かるかもだけど、さっき食べたしなぁ。

 でも、とにかく……。




「う、うぷっ、気持ち悪っ…………」


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