第六十四射目
今回から新章突入です。
序盤は日常メインのほのぼのに、後半になるにつれシリアス多めとなっていく予定です。
これからもよろしくお願いします。
なお、今回もあとがきにおふさげと一応補足説明代わりのお話があります。
王都での一件、僕からしたら昇級試験に竜種の襲来、陛下との謁見で一件どころか二件三件だったけど、とりあえず無事終了し、アリアに帰り着いた。
それからはまた、いつも通りの穏やかな日々が続いている。
各種回復錠の開発も終わって、旦那様からの課題を無事達成した僕は、ディーセス辺境伯家の従者としての立場でしたではなく、ディーセス辺境伯家の無二の友人として改めて友好を交わした。
正式には、
ディーセス辺境伯家現当主及び不沈艦の盟友、【鷹の目】
となっているが、長いので呼ぶ事はないだろう。
それに、陛下から授かった【流星】の二つ名もあるし。
余談だが二つ名の呼び方はミーティアでもそのまま流星でも良いみたい。
割と適当なんだな、二つ名って。
改めて盟友としての就任に辺り、僕は屋敷を出る事になった。
旦那様曰く、
『盟友が屋敷に常駐してたら、それはもう部下になっちゃうからね。だから、今まで使っていた地下はそのまま使えるようにしておくから、自分の家を探しておいで』
との事だったので、今現在ディーセス家の屋敷から程近い所の小さめな家を購入し、居を移した。
元々はとある商人が住んでいた家だが、住居をトルネネに移して空き家になっており、モイ商会に確認したところ、快諾されたので程良い大きさと利便性も考えて購入した。
色々とあって、手持ちのお金は十二分にあったからね……。
そもそもある商人って絶対あの人じゃん。
なんか異常に安かったし……。
そんなこんなで僕とクレアとクルトとの三人での新生活、気持ち新たに頑張っていこう!
と、思っていたのだが…………。
「フラン?何故君がここにいるのかな?それにその荷物は?」
「え?お父様から聞いてないの?私もここに住むよ?まぁ、屋敷とここを半々位になるとは思うけど」
「うん、覚えがないのは僕の気の所為かな?」
「気の所為じゃない?」
「そっか」
「そうだよ」
フランもこちらに住むそうです。
幸い、貴族の屋敷とは比べられないにしても、三人では広過ぎる位だったし、部屋も余っていたから問題は無い。
問題は無いが、釈然とはしない。
「それとユウリ。もう旦那様じゃなくて、公式の場じゃなければディーセス卿か名前で呼んで良いって言われてなかった?」
「いきなりそう言われても直ぐには変えられないよ」
屋敷を出て辺境伯と盟友になる事で呼び方を変えるように言われた。
今は形式上仕えてるわけではないし騎士でもない。
それならば呼び方を変えるのは必然だそうで、ディーセス卿かノイで呼べと言われていた。
「とりあえずノイ様で」
「呼び捨てでも良いみたいだったよ」
「有り難くお断りします」
「あらら、気にしないのに」
「僕が気にするんだよ。そもそも、一応平民の僕が名前呼びですら本来はおかしいんだから」
「でもユウリは国王陛下直々に二つ名を与えられたんだから。実質的に伯爵でしょ?お父様の方が一応上とは言え、殆ど同じだよ」
「そんなもんかなぁ?」
「そんなもんだよ」
先程もしたようなやり取りを繰り返す。
腑に落ちない点しか無いものの、心地良いと感じてもいる。
結局、あれから一ヶ月は引っ越しやその他の所為でバタバタとしており、ようやく落ち着けたのだから、この際存分にのんびりさせてもらおう。
「そういえばお父様から手紙を二通預かってきたよ、はいこれ」
「ありがとう。なになに……
『盟友ユウリへ
今回何も相談せずにフランをそちらに向かわせた事を申し訳なく思う。
ただ、先日話した通り、フランの本格的な訓練と護衛の観点から ユウリの傍にいるのが一番だと判断させてもらった。
勿論、四六時中護衛をしてほしいとは言わないが、なるべく一緒にいてあげてほしい。
これはディーセス家当主としてではなく、父親の我が儘だ。
無理強いをさせるつもりは無いからそこは安心してくれ。
二人の関係とユウリと我が家の関係がより良いものとなる事を切に願うよ。
ディーセス辺境伯家現当主 ノイ=ディーセス』
……だってさ。」
「そういう事だったんだね」
「こんな風に言われたら断る事なんて出来ないじゃん」
「断るつもりだったの?」
「まさか」
お互いに顔を合わせて笑う。
油断したのか手元からもう一枚の手紙が落ちてしまった。
「あれ?もう一枚は僕宛じゃないみたいだよ。こっちは『私の愛する娘フランへ』だって」
「ん?何だろう?」
フラン宛の手紙を手渡した。
不思議に思いながらも受け取り中身を読んでいる。
「なんか荷物の中に贈り物が入ってるんだって」
「なんだろうね?」
「開けてみたら?」
手紙の通り、荷物の中には包みが入っていた。
フランに言われて、何も考えずに包みを開ける。
そこにはそういう時に使うであろう女性用の衣服ともう一枚の手紙が入っていた。
僕から服と手紙を奪い取るように手に取り、手紙を読むフランの肩が震えている。
横から覗き込むとそこには
『これをフランが着ればユウリはイチコロの筈だ。男の子でも女の子でも孫の顔を見れるのを楽しみにしているよ』
と書かれていた。
流石と言うか何と言うか……。
「…………ユウリ?」
「はい?」
「お父様は何処にいるか分かる?」
「えっ……と、屋敷の執務室に居るよ」
「……って」
「ん?」
「いって」
「豆を?」
「そんな訳無いでしょ。矢を、矢を射って。届くでしょ?」
「そりゃ届くけど……、って旦那様……じゃなかった、ノイ様を!?」
「そう。私の騎士でしょ。出来るよね?あの頭の中お花畑の当主様には少し痛い目を見てもらわなきゃね?」
「…………はい」
ノイ様、ごめんなさい。
笑顔なのに目が一切笑ってない、竜より怖いフランには逆らえませんでした。
後日聞いた話。
辺境伯家に矢が射ち込まれ、執務室にいたノイ様が使用中のペンを打ち砕いて飛んでいった。
急ぎ、騎士団が駆け付けノイ様に話を聞くと、犯人が誰であるかは直ぐに判明。
辺境伯家程の家の魔道具を無視して執務室で握られているペンのみを射抜ける人物なんて一人しかいない。
ノイ様の行ったおふざけは、当の本人であるユウリとフラン以外皆知っていた。
その為、『お館様の自業自得です』の一言で特に騒ぎにもならず幕を閉じたと言う。
教えて!辺境伯!
ここでは某辺境伯家当主が質問に答えていきます!
Q1.ユウリ家の元々の持ち主は?
某辺境伯「それはある人って書いてある通り、モイ商会のマウロ=モイ会長の元々住んでいた家だよ。ユウリが購入したいと聞いて、破格の値段で売ってくれたみたい」
Q2.フランの加護と職種は何故書かないの?何故ユウリに教えなかったの?
某辺境伯「質問が二つになってるねぇ。近々書く予定らしいんだけど、今後の物語にとって重要だからとしか今は言えないね。ユウリに教えなかったのは、そもそも本来の加護と職種を知っている人が私含めて数人しかいない程、重要だから簡単に明かせなかったんだ」
Q3.あの何処ぞの辺境伯からの課題必要だった?
某辺境伯「何処ぞのって……。まぁ良いや、課題に関しては無理に達成しなくても良いかと思ってたんだけどね。予想外の早さで達成されてこっちもビックリだったよ。あれは、どれ程信用出来るかを実績で周りに認めさせる為に必要だったんだよ。貴族社会は面倒だからね」
Q4.ユウリの矢に実際狙われてどうだった?
某辺境伯「我が盟友の実力を身をもって経験出来て良かったよ」
Q5.本音は?
某辺境伯「めっちゃくちゃ怖かった!あんな細いペンに壁貫き遠距離で矢が飛んでくるとは誰も思わないよ!あんな人物に命狙われたら、恐怖で一睡も出来ないね、うん」
以上、教えて!辺境伯のコーナーでした。




