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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第四章 運命の日

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第五十九射目

「クランベイン団長、お待たせしました」

「話は済んだかい?」

「はい、無事に戻らなきゃいけなくなりました」

「それは頑張らないといけないな」


 笑いながら話すクランベイン団長だったが、落ち着いたかと思えばいきなり真剣な表情でこちらを向く。


「ユウリ、これから向かうのは戦場だ。相手が人ではないのが救いだが、それでも血は流れる。それでも本当に付いてきてくれるんだな?」

「はい、勿論です。ただ……」

「ただ?」

「僕は誰かと一緒に戦った事はありません。だから別行動させてもらえると嬉しいんですが……」

「成る程。それなら心配ない。冒険者ギルドにも声を掛けているが、基本的には遊撃として動いてもらい、我々の指揮下には入らないんだ。その上黄金級ともなればまぁなんというか……」

「協調性のない変人が多いんですね」

「まぁその通りと言っては失礼だが、その通りだ。君もその一員だけどね」

「協調性のない事は認めますけど、変人に関しては否定したい気持ちで一杯ですね」

「自分で言ったんじゃないか……」

「そうなんですけどね……。ところで今回は黄金級の人達も多く参加するんですか?」

「銀級以上になれば個人としては騎士団に匹敵する者も多いからな。今王都にいる者は殆ど強制参加になってると思うよ」

「じゃあ僕もどちらにしろ強制だったんですね……」

「いや、君の場合は少し違う。ギルドの黄金級ではあるが、それ以前にディーセス辺境伯家の者として捉えられる。そうなれば自分の主人を優先しても問題無いんだ」

「あぁー。成る程」


 つまり、僕はあくまでディーセス辺境伯家【鷹の目】であって、その人物が黄金級になった。となる訳か。

 確かに騎士団の人達がギルド階級が低くても参加しなくて良いとはならないこら逆もまた然りか。


「あれ?そうなると僕は今何でクランベイン団長に連れていかれてるんですか?」

「それは着いてからのお楽しみ」

「うわぁ。全然楽しめなさそう……」


 悪巧みしてる少年の様な顔で笑うクランベイン団長。

 本当に貴族にせよ、騎士団にせよ、僕の周りはいい性格してる人が多い。

 あ。何処かの辺境伯のくしゃみが聴こえた。本当に噂するとくしゃみって出るんだ。


「さぁ、着いたぞ。入ってくれ」

「失礼します」


 入った部屋は会議室だった。

 上座の人席が空いていて、その両隣に多分副団長かな?と周りに部隊長らしき人十人が座り、その後ろに更に十人立っている。

 一斉にこちらを見る目は、敵対・疑惑・一部尊敬が混じっている。

 空いている席にクランベイン団長が腰掛けて、話し始めた。


「皆、遅くなってすまない。彼については……紹介しなくても知っているだろうが一応。ディーセス辺境伯家【鷹の目】ユウリだ。昨日私をボコボコにした張本人でもある」


 やめて下さい。

 敵意が殺意に変わりそうなくらい強まってるんで、本気で。


「…………それで?部外者の彼を連れてきて何を?」


 僕に敵意を向ける筆頭、団長の右隣に座っている女性が不服そうに声を上げる。


「そう言うな、セルハ。お前達も知っている通り、彼の実力は信用に値する。だから今回の防衛に辺り、何か意見があればと連れてきたんだ」

「こんな部外者の意見等必要ありません。私達は選び抜かれた精鋭です。邪魔にはなれど、力になるとは到底思えません」


 セルハさんとやら、僕もそれ同意見です。


「ではセルハ、実際に君は今回どう対処する?報告では日付が変わる頃にはあの軍勢は王都に到着する。竜種単体が一匹で来るのであれば更に時間が無い」

「愚問です。我々第三騎士団が誇る弓兵部隊が竜種と飛行する魔獣を遠距離から攻撃し、騎馬隊で残りの地上の軍勢を掃討します」

「確かにそれが一番だろう。ただそれだと矢が届く距離まで相手を引き込まねばならない。竜種には多少の違いがあれど、空からの息吹(ブレス)による遠距離攻撃がある。矢が届く範囲より遥かに射程が長い。それをどう対処する?」

「それは息吹の前兆が見られたら即回避行動に……」

「回避するのかい?我々の後ろには陛下が。住民が。王都があるというのに?」

「で、では……、第五騎士団と連携して息吹を防いでもらえば……」

「第五騎士団は住民の避難と王城の防衛にかなりの人数を割く予定だ。そんな中、空からの攻撃に加えて外壁全てを守れと?」

「そ、そんな事は…………」

「不沈艦のガルシア団長殿がいれば可能だろうが、今回アリアの防衛でこちらに来てはいない。だったよね、ユウリ」

「はい。もしもの時に指揮する者がいないといけませんので、団長はあちらに残ってもらうよう旦那様が指示しておりました」


 そう、こんな時ガルシア団長がいれば竜の息吹を防ぐ事が可能だった。

 だが、今回はいないので頼る事が出来ない。

 そうなると第三騎士団が取れる手段は一つしか無い。


「今回、我々は軍勢を迎え撃つ形で王都から北に十キリルの位置に陣を構える。そこで弓兵部隊は竜種の注意を引き、王都から目を背けさせ、撃退を目標とする。それ以外の魔獣は騎兵部隊がなるべく数を減らし、陣より後ろに抜けた魔獣は冒険者ギルドの者達任せる」

「第四騎士団はどう動くのでしょう?」

「第四騎士団は団を二つに分けて、防衛とこちらの殲滅にそれぞれ半数すつ手を貸してくれる事になった」


 セルハさんの逆隣にいる男性が質問し、クランベイン団長が答えた。

 セルハさんは先程のやり取りのせいか、俯きながら肩を震わせている。


「以上が先程陛下と各団長で決まった事となる。質問はあるか?」


 誰からも声が上がる事はない。

 どう考えてもそれが一番良い作戦だと分かっているからだ。


「無いな。それを踏まえた上でだ。ユウリ、君はどう思う?」

「……僕ですか?」

「あぁ。君の意見を聞きたい。勿論、それが全て通る事はないのは許してほしい」

「はい。えっと……、失礼を承知でお聞きしますが……。先程弓兵の方々が竜種の気を引くと仰っていましたが、実際に竜種の鱗に傷を付ける事は可能なのでしょうか?」

「お前っ!我々だと力不足だと言いたいのかっ!?」

「待て、セルハ。すまないな、ユウリとやら。こいつは感情で動く節があってな。俺から説明しよう」

「ありがとうございます。ところでお名前は……」

「おう、そうだったな。俺はエル=ナグネスだ。この騎士団の副団長を任せられている。因みにさっきから煩いのがセルハ、同じ副団長だ」

「煩いとは何だっ!?」

「それだ、それ。話を腰を折るな。さて、さっきの質問だが、はっきり言えば傷付ける事自体は可能だ。ただ、一般の騎士だと全力で魔法矢を放ってようやく……だな。その後そいつは使いもんにならんだろう」

「そうなると、実際に主戦力となるのは?」

「私とエル、セルハだな。我々三人なら竜種も無視出来ないだろう」

「三人だけ……ですか」

「他の者には我々の援護及び飛行する魔獣の殲滅をしてもらう事になるだろう」

「それだと余りにも危険では?」

「あぁ。悔しいが第一・第二騎士団がいない現状では圧倒的に殲滅力不足だ。彼等がいれば、我々は空のみに火力を集中させる事が可能だったんだが、先程ガルシア殿の話でも出た通りいないものはしょうがない。だからこそだ。君の意見がほしい」

「…………少し考えさせて下さい」


 王都に近付けさせない様に陣を敷きそこで食い止める。

 その距離王都から約十キリル。

 とりあえずやるべき事の最優先は竜種の討伐もしくは撃退。

 昔、爺ちゃんに聞いた話からすれば多分いけるけど、如何せんやった事が無いしなぁ。

 作戦と呼ぶにはお粗末過ぎる。

 それに場所的に許可が出るかどうか…………。


 首を捻ってうんうんと考え続けてはみたものの、どんなに考えても確信が持てそうにない。

 皆さんを待たせているせいで、空気が悪い。

 特にセルハさんの機嫌が群を抜いて悪い。

 そんな中、こんな事言ったら火に油を注ぐどころの話じゃなくなる。


「何か思い付いてそうだね」


 くっ。クランベイン団長に勘付かれてしまった。

 もう観念して話すしかないか。


「思い付いたといえば思い付いたんですが、机上の空論というか現実味が無さ過ぎるというか……」

「どんな些細な事でも良いんだ。話してくれ」





「……分かりしました。僕の作戦は――――」


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