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閑話〜ブルーローズ家side〜

今回は第三者視点です。

「父上、ありがとうございました。僕からはもう何も言う事はございません」

「そうか。では解散とする。ウィル」

「はっ」

「ユリウスを【あの部屋】に連れて行け」

「畏まりました。ユリウス坊ちゃま、私共にこちらへ」

「う、うん。では、失礼します」


 ウィリアムとユリウスは、一礼した後食堂を出ていく。

 シリウスは先程解散と伝えたはずなのにまだ食堂を出る気配のない三人へと問いかけた。


「何故まだここに居る?」

「父上!あの部屋とはなんのことですか?私は聞いた事がない場所があるのですか?」

「カリウス、お前が知るにはまだ早い。嫌でもいずれ知る事になる」

「そんな!私は次期当主です!知る権利があるのではないですか!?」

「だから、今は早いと言っているだろう。まだ知る必要のない事だ」

「いつ何があっても良いように次期当主には知……」

「お前が次期当主であっても今の当主はこの私だ!!それに何があってもとは私が近々死ぬとでも言いたいのか?」

「い、いえ、そんなつもりはございません……

「ブルーローズ公爵家次男ユリウス=ブルーローズは神託の儀の結果を受け止めきれず屋敷を出て行方不に、家臣団を使って全力で捜索するも、見つからずに死亡とされた。それで話は終わりだ。今後一切、この件を口にすることは許さん。これは当主としての()()だ。分かったな?」

「はい……、父上…………」


 最初だけは威勢が良かったカリウスだが、シリウスの剣幕に結局は気圧されて、頷くしかなかった。

 渋々だが了承したカリウスを一瞥し、残る二人の方を見て言葉を続けた。

「カラミア、リシリアも同様だ」

「勿論……()()()()()()()異論はございません」

「―――い」

「リシリア?」

「皆、有り得ないっ!自分の息子が!弟がっ!神託一つで殺されて!当たり前のように分かりましたなんて!有り得ない!おかしいよっ!普通じゃないっ!」

「リシリア!当主である父に向かって何て事を言うんですか?」

「知らない!こんな家、生まれなきゃ良かった!」


 たとえ才能が無いとはいえ、ついさっきまで家族だった人達から「死ね」と言われる絶望はどれほどのものか。

 そして、死にゆく自分を本人は知らないとはいえ、自分で勝手に出ていったことにされて、死んだと汚名を被せられる。

 リシリアは今眼の前で起きた一連の出来事を飲み込む事が出来ない。いや、飲み込む気がしない。

 美才女と呼ばれる程の頭脳を持つ彼女がこれはブルーローズ公爵家にとって最悪の中での最善ではあると分からない訳もない。

 ただリシリア=ブルーローズはそう分かっていても、ただのリシリアはそうではない。


 可愛い弟死を決定してしまったのだ。

 父が。

 母が。

 兄が。

 そして止められなかった自分が。


 怒り・悲しみに・喪失感・罪悪感…………。

 様々な負の感情が渦巻き、この場にいてはいつまでも冷静になることは無いと思い早々に部屋を出る。


「部屋に戻ります。失礼致します」

「おい待てっ!そんな失礼なことを言って、謝罪も無いのか!?」

「良い、カリウス。リシリア、ゆっくり休みなさい」

「…………。」


 ガチャッ


 静かになった食堂に扉の閉まる音だけが響いた。

 また重々しい沈黙が流れる。


「では、そろそろ私もお先に失礼しますね、あなた」

「あぁ」

「私もここで失礼致します」

「分かった」


 ずっと何かを考えるような表情をしていたカラミアだったが、これ以上は無駄だと思ったのか部屋を出るためにシリウスに声をかけた。

 それに続くように父と二人の空気に耐えられないという表情のカリウスもそそくさと部屋を出る。



 独りになり、ずっと頬杖をしながら目を伏せていたシリウスは何かを待っているようだった。

 どれくらい経っだろう?

 ノックの音と同時に誰かが入ってきた。


「旦那様、只今戻りました」

「ご苦労だったウィル。どうだった?」

「旦那様のご子息だけあって、聡明でした。全てを理解した上で納得し、自ら魔法陣に魔力を流して旅立たれていかれました」

「そうか……。私は最低の人間だと思うか?」

「いいえ。旦那様の決断は最善のものだと思います」

「それはブルーローズ公爵家当主として。だろう?」

「…………。」

「先程カラミアにも言われたよ。『』当主の妻としては異論はない』と」

「そうでございますか・・・」

「お前もそうだろう?」

「私はブルーローズ公爵家の執事長ですから」

「何を思っても言う事はない。か……」

「はい」

「人や親として間違っていても、妻や娘や従者に恨まれようと、血も涙もない事をせねばならない」

「それが公爵家当主としての務めでございますので」

「当主というのは……窮屈だな…………」

「そう思っても口に出すのはお辞めになったほうが良いかと」

「それは勿論。お前しか言わんよ」

「それが宜しいかと」

「さて、そろそろ執務に戻るとしよう。いつの間にか昼を過ぎてしまったからな」

「お部屋に何か簡単な物をお持ち致します」

「あぁ。他の者にも持っていってくれ」

「畏まりました」




 執務室に戻るシリウスを頭を下げて見送るウィリアム。

 シリウスが歩くその背中はとても悲しげに見える気がした。

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― 新着の感想 ―
[一言] この公爵、なんか良い人ぶってるけど、頭を活用することを止めて子供を殺めた畜生じゃん。
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