第四十三射目
僕が優しく、優しく、笑顔で説明をして、理解してくれたみたいだ。
「あいつ、本当にただの人族か?鬼人族の間違いじゃ……」
「クルトさん?まだ説明が足りなかったですか?」
「い、いえ!そんな事はありませんっ!」
クルトさん、物分りが良い人じゃないか。
一方クレアさんはずっとニコニコしていた。
「さ、さぁ、ユウリ様の誤解も解けたところで二人はどうする?」
「ユウリ目が笑ってなかった。ユウリ目が笑ってなかった。ユウリ目が……」
フラン様が壊れているけど、今は置いておこう。
僕は二人を購入する気だが、二人の意見はどうだろう?
「……俺は姉さんが良いと思うなら、こいつになら買われても構わないと思う」
「私はユウリ様なら良いと思いますよ。ただ……私を買うと後悔するかもしれません」
「…………」
「ユウリ様、言って無かったのですが、実はクレアの方は……」
「毒に身体を侵されていつ死ぬか分からない。でしょ?」
「なんと……そこまで…………」
「その通りです。色々な薬を試しましたが効果がありませんでした」
「治癒の加護持ちに見てもらった事は?」
「あんな奴らが治せるわけ無いだろう!」
クルトさんの言うあいつらとは教会の人達だろう。
ラ・ミリアム聖教国の信者達はは人族以外を出来損ないの劣等種、穢れた血と言い、混血種や亜人を毛嫌いしている。
そんな人達が治癒をするわけないか……。
「それに姉さんをこんな身体にしたのはあいつらだ!あいつらのせいなんだ!」
「どういう事ですか?」
「私達は聖教国の辺境に住んでいたのですが、ある日村に穢れた血がいると捕まり、強制的に奴隷にされました」
「違法奴隷ですか……」
「そして、私は若い司祭達の練習台とされ、色々な毒を入れられては解毒されを繰り返してきました。そして最後には……」
「オスリア大森林にしか群生しない【呪毒の薔薇】の針を刺したんだ!それで……姉さんの身体は…………」
淡々と語るクレアに対して、激昂しつつ最終的には泣きながら語るクルト。
「大司教ですら解毒出来ず、私達はオスリア大森林へと捨てられました。森の浅い所を隠れながら移動して、なんとか国境を超えこの国を目指す間にも日に日に身体は動かなくなり、ある日とうとう目も見えなくなってしまいました」
「そこを偶然モイ会長と私兵団が見つけて、保護してここに預かる事になりました」
「なんて酷い……」
「モイ会長も私も様々な手段を使い解毒を試みたのですが、一向に良くならず、なんとか侵攻を少し抑えることが出来ているのみになります」
「だからユウリ様、私は気にしないでクルトだけを買ってあげて下さい」
「姉さんっ!?そんな事出来るわけ……」
「私はもう長くない……。貴方には幸せになってほしいの……」
「嫌だ、姉さんも一緒に……」
「あ、あのー……」
感動の場面に水を差すのは分かっているんだけど、そろそろ話を進めたいのが正直な所。
フラン様のお顔がまた違う意味で大変な事になってるから。
鼻水拭いて下さい。
「その毒治せますよ」
「何を言ってるんだ!?オスリア大森林にしか無い毒だぞ!?」
「詳しい事は今は省きますけど、僕は五年間あの森で生活してましたから」
「そんなまさか!フランお嬢様、本当ですか?」
「はい、本当です。信じられないのであれば、ディーセス辺境伯家の名に誓いましょう」
こらこら、そんなホイホイと辺境伯家の名を使っちゃ駄目ですよ、フラン様。
「フランお嬢様がそこまで言われるのであれば、信じない訳にはいかないでしょう。それに会長が友人とまで言われる方をそもそも疑ったとなれば……」
「「なれば?」」
「物理的に首が飛びそうです」
マロさん、過激過ぎるでしょ。
「と、とりあえず、僕はその毒を治す薬を持っています。ほらこれ」
僕が鞄から取り出したのは、瓶に入った金色に近い色の回復薬。
「こ、これは、もしや……」
「はい。完全回復薬ですよ」
「!?!?」
そりゃ驚くよね。
だってこんなもの手に入れたら国の宝物庫とかに保存するくらいだもんね、普通。
むしろその為に戦争が起こった事もあるくらいだし。
「そんな貴重な物を私がいただく訳には……」
「でもそれなら姉さんは治るんじゃ」
「クルト、完全回復薬は国の王ですら手に入れる事が出来ない伝説の薬です。それを私なんかが……」
「あ、それも大丈夫です。いっぱいあるんで」
「完全回復薬が……いっぱい……ある……?おかしい……いっぱい?そか一杯か?」
ルーデンスさんが壊れた。
因みに一杯じゃなくて、沢山の意味でのいっぱいだ。
「うちの爺ちゃんの特別性だから、あの伝説の完全回復薬とは違うかもしれませんが、効果は間違いありません」
「ユウリ、何でそう言い切れるの?」
「修業時代に森で魔獣に何回か脇腹抉られた時に、それ飲んで治ったから」
「脇腹を……何回か抉られた……?そんな躓いて転ぶ感覚で起きる事なのか……?」
でも実際に経験済みだし、あの森だとルーデンスの言う、躓いて転ぶ位には死に直結する怪我は日常茶飯事だもんね。
「とにかく、クレアさん。どうかこれを受け取ってくれませんか?」
「姉さん!こんなチャンス二度と無い!飲んでくれ!」
「…………分かりました。いただきます」
「ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらですよ、ユウリ様」
完全回復薬を受け取って、意を決した様に一気に飲み干す。
うん、問題ない、毒の匂いが消えて、クレアさんの心音が普通の状態に近付いている。
「身体が、楽に……。それに……目も……ちゃんと、み、見え……」
「姉さんっ!」
大粒の涙を流して抱き合いながら喜ぶ二人。
僕とフランとルーデンスはそっと部屋を出た。
完全回復薬、過保護過ぎる爺ちゃんのせいではなく指輪の中に大量にある。
それこそ、毎日飲んでも十年以上無くならない程に。
2023/9/7
本文にあった
「治癒の加護持ちに見てもらった事は?」
「あいつらが俺達を見てくれる訳無いだろ!」
が、その後の会話と矛盾していたので、
「あんな奴らが治せるわけ無いだろう!」
に修正しました。
申し訳ありません。




