59
「久しぶりだね、霧島くん。
ずいぶん派手にやってるみたいじゃない!」
年齢を感じさせない若々しさで中村さんが霧島に声をかける。
「お久しぶりです、中村さん。
やっと中村さんにお寿司奢れるくらい余裕が出てきたので連絡させてもらいました!」
霧島はそう言いながらカウンターの奥に中村を案内していく。
「霧島くんカジノ一つ潰したんだって?
やるなぁ!僕でもそこまでしたことないよ!」
「いや、潰したというか買収したという方が近いような。」
霧島は最近のいろんな出来事を中村さんに伝えていく。
WIN5で2億勝った話、ラスベガスで数十億勝った話、マカオで勝ちすぎてカジノを買収した話、モナコのカジノで出会ったヨーロッパやアフリカで鉱山経営をする男に会った話。
それらのすべての話を中村は非常に楽しそうに聞いてくれた。
「やっぱり、若い人の話を聞くのは楽しいね。
僕とは目のつけ方が180度違う!
霧島くんの話を聞くのは新鮮でとても楽しいよ!」
ありがとうございます。と霧島は中村さんに返しつつ寿司をつまむ。
中村さんは今、後進の育成に力を入れているらしく、経営塾のようなものを結成したらしい。
なかなかに人気で、生徒はキャンセル待ちの人が何人もいるということだ。
霧島は、中村さんからは今度講演をしてほしいと頼まれたので、いつでも講演しますよ!と答えておいた。
霧島は一つ気になっていたことを中村に相談することにした。
「マカオでカジノを一つ買収したんですが、その結果世界規模の大きなカジノ会社の役員になってしまいました。
そのおかげで、フットワークの軽さが、少し発揮できなくなってしまいそうなんです。
中村さんならどうしますか?」
「なるほどね。霧島くんも悩むことあるんだね笑
でも僕ならそんなことは気にしないかな。
世界規模の会社の役員なんて、そんなに経験できることじゃないから引き受けるよ、もちろん。
でもやりたいことや実現したいことは他にもたくさんあるから、自分のフットワークの軽さが持ち味なんだということをみんなに理解してもらうかな。」
「なるほど…」
霧島は心の中の靄が晴れていくのを感じた。
大企業の役員になるということが、プレッシャーでもあり霧島にとっては、実は、少しだけ負担になっていたのだった。
霧島は、大企業の役員になるからといって自分を変える必要はないということが、中村さんのおかげで理解できた。
立場や職責に縛られず自由にやってみようと思えるようになった。
「中村さん、ありがとうございます。
中村さんのアドバイスのおかげで、自分ももう少し頑張れそうです。」
「若いうちの経験は財産だからね…!
なんでもやってみて、なんでも経験にしなさい。」
霧島は、中村さんの話を聞けてよかった。と心から感じていた。
途中で河岸を変え、何時間も話し込んだおかげで解散は夜中の2時を過ぎた頃になった。
「中村さん、今日はありがとうございました。
いいお話がたくさん聞けました。
またご飯ご一緒させてください。」
「僕の方こそだいぶご馳走になっちゃって。
若い人と話ができるのは老人冥利につきるね。
是非またご飯に行きましょう!
お誘いお待ちしています。」
そんな言葉を残して中村さんは電車みたいな長さの真っ白なロールスロイスに乗って帰っていった。
ちなみに初めて中村さんと一緒にご飯に行った時に霧島が乗ったロールスロイスとはまた違うロールスロイスだった。
霧島は中村さんを見送った後、タクシーでホテル日航大阪まで向かい、家に帰るのがめんどくさくなったので、ホテルに泊まった。
ここ数日はスイートルームにしか泊まっていなかったので、敢えて小さい普通のダブルルームに泊まった。
「あー、この狭さ落ち着く…」
決して狭くはないのだが、世界の名だたるホテルのスイートルームに比べるとだいぶ狭いことは否めない。
ホテルの部屋で風呂に入り、ゆっくりした霧島はふかふかのベッドで眠りについた。
ここまでの書き方を変更してみました。
以前よりは少し見やすいんじゃないかなと思います。




