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夜遅くにホテルに帰りそのまま熟睡
してしまった霧島はチェックアウト時間の30分前に起床した。
「え、今何時…
え、やばっ!!!は!?!?やば!!」
珍しく慌てた霧島は急いでシャワーを浴び、髪を整え、荷物を持って部屋を飛び出しチェックアウトした。
チェックアウト時間ギリギリだったがなんとか間に合った。
霧島はホテルの駐車場から車を出し自宅へと向かう。
ポストを確認して郵便物や宅配便が来てないかを確かめるためである。
車を走らせ、ほどなくすると大学が見えてきた。
自宅マンションの前に霧島はi8を止め部屋に向かう。
ポストを確認すると、幸い急を要する手紙など郵便物は届いていなかったが、宅配の不在連絡票が入っていたことで、銀座でひとみとスーツなどを注文した際に出来上がり次第送ってくださいと頼んでおいた完成品が受け取れていないことに気がついた。
保管期限はたまたま今日まで。
霧島は「よっしゃラッキー!」と呟き運送会社に連絡をし、今から窓口に取りに行く旨を伝えた。
部屋に入った霧島はからの大きなリモワのスーツケースを持ってきて中にトラベルセットとパソコン、大学の課題図書などを思いつく限り突っ込んだ。しかしさすがはリモワの85L。まだまだ相当に余裕がある。
「これならまだスーツも靴も入りそうだな。」
霧島はマカオに持って行くスーツケースはこれでいいなと考え、その重いスーツケースを持ち車に向かった。
スーツケースを車の助手席に積んだ霧島は運送会社の配送センターに向かった。
窓口に着くと霧島は住所を伝え、身分証明書を提出し、スーツを受け取った。
約10着のスーツやコートと4足の靴を受け取り、スーツケースに入れた。しかしまだ余裕がある。
霧島は、その窓口で伝えられ気づいたがルイヴィトンのトランクケースも10個届いているらしい。
流石に、トランクケースをi8に積むことはできないので、そのままマカオに送ってもらうことにした。
とりあえず日本でやることは全部終わらせた霧島はエマに連絡を取る。
「エマ?霧島です。明日マカオに帰ろうと思いますが、帰りはどうする?」
「かしこまりましたボス。
飛行機に関しては、伊丹に一機すでに常駐させています。
サンズの幹部専用機の短距離航空機ですので大きさは小さいですが、そちらをご利用ください。」
「わかった、いつもありがとうね、エマ。」
「礼には及びません、ボス。
飛行準備を整えておきますので、時間が決まったらご連絡ください。」
「じゃあ17時ちょうど発でお願いしようかな。」
「ありがとうございます。
でしたらその時間に出発するようにアレンジしておきますので30分前までにはご到着ください。」
「了解。」
霧島はエマに連絡をした後はひとみに連絡した。
しかし、電波が届かないところにいるらしく、連絡がつかない。
一応ラインで、連絡できる時間になったら連絡してくれと送信して携帯のホーム画面をロックする。
することを一気にこなした結果、霧島は何もすることがなくなったので、ウィンドウショッピングを開始することにした。
「エマやら他の幹部にお土産買っていこう。」
とりあえず梅田阪急に向かった霧島。
阪急の地下には全国から選りすぐられた土産物が所狭しと並べられている。
まず霧島は一心堂に向かう。
一心堂はフルーツ大福で有名なお店で、霧島の好物でもある。
とりあえず全種類買った。
続いて向かうのは大阪といえばこれ、バトンドール。要はポッキーの高級品なのだが、人気が高い。これも全種類買った。
そして続いては堂島ロールで有名なモンシェール。これは霧島の夜ご飯用だ。一つ購入。
最後はダメ押しとばかりに辻利兵衛本店に向かい抹茶大福を山ほど買った。
途中から阪急の外商部の人が寄り添ってくれて、次回はお家に伺いますのでご連絡くださいと言われた。そして阪急のクレジットカードをアメックスで契約させられた。
そのおかげか、大量の荷物を店員さん方が車に運ぶのを手伝ってくれた。
お土産も買い終え、新阪急ホテルの駐車場から車を出す。
ちなみに阪急梅田本店に駐車場はないため、近隣の駐車場を使うしかない。
なんとなく、気分が乗っていた霧島はそのままセントレジスホテル大阪に向かった。
霧島にとって、本町にあるそのホテルは、その存在は知っているが行ったことはないというホテルで、いつか行ってみたいと思っていたホテルの一つだった。
しかし、本町周辺にマンションを購入してしまったため、そのマンションに移り住むといよいよ行く機会がなくなるだろうなと思っていた。
たまたま時間もあるし、と思い霧島はそのホテルに泊まることにしたようだ。
セントレジスに着くとドアマンが華麗に車を停める。
「ご宿泊でございますか?」
程よく響く柔らかなバリトンボイスでそう告げられた霧島はモナコのオテルドゥパリを思い出した。
「いえ、まだ予約はしていないので今からです。」
そう告げるとドアマンはかしこまりましたと、インカムで何か連絡をやりとりし始めた。
「お部屋に空きがあるそうですので、そのままご案内いたします。」
ドアマンはそう告げると、他のスタッフに何やら合図をし大きなカートを持ってきた。
「お荷物お預かりいたします。お車は鍵をいただければそのままで結構でございます。」
霧島はバレエサービスに感動し、鍵をドアマンに渡し、車を降り、荷物も降ろした。
霧島の荷物は大きなリモワが一つと小さなリモワが一つ、さらに大きなバーキンが一つ。そして阪急で購入してきたお土産の袋が数十袋。
かなりの大荷物だったが、レジスのカートにはちゃんと乗り切った。
ドアマンに連れられ12階のフロントに向かう。
いらっしゃいませの声に迎えられた霧島。
「禁煙室でできるだけ上のフロアをお願いします。」
そう霧島が告げると、すぐに対応してくれた。
そして、霧島はグランドデラックススイートに案内されそこに宿泊することを決めた。
ホテルマンに連れられ部屋に入ると霧島は荷物を置き、ホテルマンが部屋を去る際に四足のジョンロブを預け、靴磨きをお願いした。
部屋で一息ついた霧島は食事をとるために、ホテルのイタリアンレストランであるラ・ベデュータに向かった。
海外では1人での食事も全く苦にならなかったが、日本ではなぜか周りの目が痛く感じる、
食事を終えると早々に店を退散し、セントレジスバーに向かった。
バーに着くと霧島はカウンターの端に座り、バーテンダーと会話を楽しんだ。
「ブラッディマリーを。」
「かしこまりました。もしかしてご存知で?」
「もちろん。」
周りから見ると意味がわからない会話である。しかし、これにはちゃんと意味がある。
知らない人も多いだろうが、ブラッディマリーというカクテルはセントレジスNYが発祥の地である。
それを知って霧島はブラッディマリーを頼んだのだ。
「霧島様はご旅行ですか?お仕事ですか?」
「いや、仕事の合間にやっと日本に帰ってきたので、郵便や宅配便の確認に。」
「なるほど。お若いのに世界中を飛び回って活躍されてるのですね。」
「いやいや、巡り合わせですよ。運だけはいいもので。」
「そんなことはありませんよ。素晴らしいことです。」
そんなたわいもない話をしていると横に1人の美しい女性が座った。
「隣よろしいですか?」
「ええ、もちろん。」
霧島はそう答えた。
「さっきちらっと聞こえてきましたけど、お若いのにご立派なんですね?」
そう言って色香が漂う笑みを霧島に向ける。
「いやぁ、全くそんなことはないんですが…」
霧島はしどろもどろだった。
しかし、霧島の中には、こんな女性はあまり好きではないなぁと思う冷静な部分もあった。
「なんのお仕事をされてるんですか?」
「株です。」
「まぁすごい!
その若さでこんな高級なホテルに泊まれるくらいですから、成功なさってるんですね!」
「そんなこと言う貴女だってここにきてらっしゃるじゃないですか。
貴女は何をされておられるんですか?」
「私は飲食店を数店舗経営しております。
ぜひいらしてください。」
霧島はキャバだろうなと思いつつ、その女性が差し出してきた名刺を眺めた。
そこには北新地の高級クラブ街の住所と店の名前が書いてあった。
裏面には系列店舗の名前と住所が何店舗か書いてあり、この女性がかなりやり手であることがうかがえる。
名刺を出されたため、それを無視しては失礼にあたる。この心地よい空間を乱したくない霧島は自身の名刺を返した。
霧島はローレックスの会社で名刺を作っていないため、サンズの名刺しか持っていない。
ちなみにサンズの名刺にはラスベガスサンズの社外取締役の肩書きとベネチアンマカオCEOの肩書きが全て英語で書いてある。
(会社に食いつかれたら嫌だな…)
その名刺を見た女性の顔色は案の定すぐに変わった。
「サンズって、あのサンズですか?
カジノ大手の!」
「まぁ、そうですね…」
「その若さで、そんなところまで登りつめてらして、素晴らしいですね!」
食いつきが良すぎて霧島は恐ろしくなった。
笑って受け流していたら今から食事に行こうなどと言いだし、いよいよめんどくさくなってきたので、霧島は
「明日にはもう海外に向かうので、またの機会に。」
と角が立たない断り方をして、バーの会計を払おうとした。
するとそのやり手の女性が払うと言い出した。
(もう勘弁してくれ…)
「ではお言葉に甘えて。」と、その女性が会計を済ませている間に、表面上は穏やかに微笑みそそくさと部屋に帰った。
バーテンダーが気を利かせてくれ、ホテルの裏を通してくれたのでとても助かった。
部屋に入ると、霧島は疲れた…と呟きシャワーを浴びてバスローブを纏いベッドに入った。
女性の圧力に疲れた霧島はすぐに眠りについた。




