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チュンチュン……


雀の声で目を覚ました霧島は、これが朝チュンか…などとどうでもいいことを思い浮かべながら目を覚ました。


隣には嬉しそうな顔で、眠っているひとみがいる。



幸せだなぁ。cv 加山雄○



きっと嬉しいことがここ最近で立て続けに起きた霧島はもう頭のネジがなくなってしまったのだろう。


霧島はひとみを起こすと朝食を、部屋に持ってきてもらった。


「朝も夕もお部屋食なんだね。」


「今日は別館で夕食だから、レストランだぞ。」


「それはいいですなぁ。」


ひとみは満足そうな顔でうなずいていた。


「今日のご予定は?」

とひとみが尋ねる。


「MOA美術館と三島スカイウォーク。時間があれば初島も行きたいな」


「初島?」


「首都圏から一番近い離島と呼ばれる島。

高速船で行くんだけど、面白そうだなって思って。」



「それはよいでふね…!船だけに…!」


霧島はあえて何も返事を返さなかった。

ひとみも何となく気恥ずかしくてそんなボケを挟んでみたのだろうが、自爆していた。



2人は駐車場から車を出し、最初の行き先をじゃんけんで決めた。



その結果三島スカイウォークから行くことになった。


三島スカイウォークとは正式名称を「箱根西麓・三島大吊橋三島スカイウォーク」といい、2015年にできた、歩行者専用としては日本最長の大吊橋である。


霧島は高所恐怖症ではないと思っていたが、大吊橋の真ん中でふと下を見下げてしまった。

霧島はなぜか自分が空から谷底へ向かって落下しているような錯覚を感じ、谷底へ引っ張られるような感覚を味わってしまった。


霧島は腰が抜け尻餅をついてしまった。


「どうしたの!?」


「わ、わからん…腰が抜けた…」

ちなみにあとから霧島が知ったことだが、人間はかなり高いところから下を見下ろすと、高さに魅入られてふっと落ちているような感覚を覚えることがあるらしい。


「何してんのよ笑」

ひとみは笑いながら霧島に手を差し伸べる。

霧島はひとみに肩を貸してもらって、やっとの事で橋を渡りきった。


「お疲れ様でした笑」


「いや、ほんとに。笑」

霧島は情けないやら申し訳ないで少し恥ずかしい。


道中、車の中で、三島スカイウォークで買ったジェラートを食べながら2人はMOA美術館へと向かった。



「着きました、MOA美術館。」


「おー!

ここでは何を見るの?」


「MOA美術館といえば?」

霧島は試すような口調でひとみに問いかける。


「三角縁四神二獣鏡と紅白梅図屏風と色江藤花文茶壺」


「三角縁神獣鏡のことを正式名称で言う奴初めて見た。」


「高校時代の愛読書は美術の教科書と日本史資料集でした☆センター日本史満点でした☆」

ひとみは満面のドヤフェイスで霧島の問いに答えた。


「こういうやつ一番うぜえ」


「キャピ☆」



2人はMOA美術館に入ると、ひとみの挙げた3つをメインに鑑賞した。


霧島曰く、ひとみの知識量は化け物。とのことである。



「中途半端な時間におやつ食べたから変な時間にお腹減ってきたねー」


美術館を出た2人はそんなことを話しながら車を走らせていた。


「じゃあ初島行って見るか。」


2人は車を初島行き高速船の発着ターミナル、伊東港へと向かった。


「船の時間ちょうどよかったね」


「そだねー」


「は?(半ギレ)」


なぜか半ギレのひとみに、霧島はビクビクしながら船に乗り、2人で初島に向かったが、帰りの船の都合もあり、実質2時間しか島に滞在することはできない。


霧島は一刻も無駄にはできないなと思い、着いたらすぐにあらかじめ調べておいた食堂街に向かうことにした。


30分弱ほどで島につき2人は食堂街に向かった。


歩きながら適当に見つけた海鮮の食事処に入った2人は、席に着くや否や

「「海鮮丼!!」」と2人同時に店員に告げた。



出てきた海鮮丼は思いのほか量も多く、大変満足度の高いものだった。


「いやぁ、満腹。」


「右に同じ」


腹一杯に海鮮丼を食べ少し大きくなったお腹をさすりながら2人はホテルに帰った。



ホテルに帰ると、夕食まではまだ時間があるため、まだ堪能していなかった大浴場に2人は向かった。



「隈研吾が設計したらしいよ」


「ほう、熊ね。」


興味ないことはとことん興味ないんだな…。

美術やら日本史が好きなのになぜ建築に興味がないんだろう?


と、霧島はひとみの新たな謎を発見した気持ちだった。


霧島は男湯に向かい、湯に浸かった。

湯に浸かりながら霧島は、幸せってこういうことなんだろうな…と考え、昨晩のことを思い出してしまい、ニヤついていた。


男湯でニヤつく若い男。

周りからは相当奇異の目で見られたことだろう。


しかしそれに気づく霧島ではないし、そんな霧島を注意する結城ひとみも今はいない。

そこにはカオスが広がっていた。

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