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異世界のイオリと伊織  作者: 猿丸駿
第一章
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第四十一話 イオリと再びの十層目ボス

「えっと、『くりーん』だったか?」

「『クリーン』です。さすがに、魔法体系が違うのですぐに使えるってことは……」


 なるほど、なるほど、たしかに、これは同じようなことが出来るけど違うな。

 なんていうか、位置筋が違うと言うか、目的地は同じだけど、歩いていくか自転車で行くか、それともバスで行くか、みたいな感じで、魔力の消費とか起動にかかる時間とかが俺達の使っている魔法とソーヤ達が使っている魔法は違うみたいだ。

 もしかしなくても、この世界の魔法や魔道具も違うって考えたほうが良いかな。


「『クリーン』。おっ! 出来たかな?」

「えー。ちょっとぎこちないですけど、何で出来るんですか? 普通そんな簡単に出来ないですよ、まったく」

「まあまあ、できちゃったものは仕方がないだろ?」

「それは、まあ、たしかに」


 ダンジョンのそれもボス部屋の中ですることではないとは思うけど、あいつを魔法で綺麗にしたソータを引っ張り、魔法について少し話をしていたけど、どうやら、フィーネ達もちょうど区切りが付いたようだ。

 ソータを引っ張り込んだところで、あいつにフィーネも引っ張り込まれて、というよりは興味津々で進んで話をしに行ったような感じもしたけど気のせいだよな?


「うーん。やっぱり、手ごたえがないな」

「やはりそうですよね。イオリ様もそう思いませんか?」


 あいつ的には、どうやら手ごたえがなくてつまらなかったみたいだ。

 それに共感を受けたのかフィーネはあいつの手を握って、そうですよね、と仕切りに話頷いていた。

 それを見て、ため息を履きながら次の階層へと進むために奥の部屋に向かって歩いていく。

 まったく、このパーティーの女性陣は血の気が多くて困るな。


「……とりあえず次の階層行くから、奥の部屋に行くぞ」


 二層目以降も一層と同じように、前を行く二人に対して出会う魔物が弱すぎるようで魔物は出会った側から次々と肉塊へと変えられていく。

 まあ、そのまま放置しておくと魔物の死体が邪魔になるのと、素材という宝の山をそのままにしておくのも勿体無いので、俺は次々と『倉庫』に放り込んでいく訳だ。

 これも、ほぼ無限と言ってよいほどの物を『倉庫』へ収納できる俺やフィーネならではだな。


『そういえば、お前やソータは収納系の魔法かスキルを使えたりするのか?』

『ん? ああ、一応は、うちもソータも『アイテムボックス』ってのが使えるけど、うちはこんなぐらいしか物が入らないな。ソータは結構たくさん、そうだな、少なくとも文字通り一山ぐらいは入れられたと思うぞ』


 あいつとソータの二人も俺達が使える『倉庫』とか『収納』のような、物を何処か別の空間に仕舞える魔法は使えるようだ。

 あいつ自体は『思考共有』で、小さめのテーブルに山盛りいっぱいの荷物を指し示して、このぐらいって言っていたことからも、『アイテムボックス』という魔法かスキルは、ソータの方が得意らしい。

 そういえば、あいつらと出会ったとき、たしか荷物をほとんど持っていなかったけど、俺やフィーネと同じように手持ちの荷物以外は収納していたわけか。

 とりあえず、俺達じゃなくても荷物を収納できるようなので、一つ心配事が減ったな。

 おっと、そうそう、今はそんなことより目の前に出来つつある魔物の山を片付けなくては。


「……そういえば、さっきから魔物とよく出会う気がする」

「どうされました? イオリ様」

「ん? ああ、なんでもない」

「そうですか……」


 すこし、魔物と出会うことが多くなった気がしたけど、まあ、ダンジョンに潜るのはまだ二回目だし、以前との比較も出来ないから気にしてもしょうがないだろう。

 途中、ダンジョンへ同じように潜っている他の探索者パーティーと鉢合わせることが何回かあったけど、毎回のごとく驚かれることはあっても絡まれたりなんてことは特になく、階層の探索と階層ボスが部屋に居れば討伐、居なければそのまま奥の部屋へと行き次の階層へ進み、あっという間に十層のボスの部屋の前まで来てしまった。

 ここまで来るのに、おおよそではあるけど、今日最初に俺とフィーネだけで潜った時の半分の時間も掛かって居ないと思う。

 俺とフィーネが潜った時は、地図が全く埋まっていない状態で、今回はある程度は埋まっている地図を見ながらの探索という違いはあることはあるけど、それを加味しても、ここまでは結構な速度で進んでいるんじゃないだろうか。


「おし! うちが十層のボスを倒せば、とりあえず最初の目標は達成だな!」

「だな。 地図が埋まっているにしろ、予定よりかなり早くここまでこれたから、この分なら二十層か三十層ぐらいまでいけるかもな」

「まあ、とりあえずはボスを倒してから話し合いませんか?」

「そうですよ。早く次の階層へ行きましょう! イオリ様!」


 なんか、フィーネは戦い方が似ている分あいつと波長が合うのか、それとも強い魔物と戦いたいと言う欲求を自身が持っているからなのか、いつも以上に落ち着きがない。

 何はともあれ、目の前のボスを倒してからだな。


「よし! 今度のボスも、うちが()るでいいか?」

「僕はそれで構いませんよ。そもそも、聞くまでもなく倒すつもりだったんじゃないですか?」

「……まあね。それで、あんたらは?」

「任せた」

「同じく、お任せしますね」


 これまで、すでに倒されていてボスが待ち構えていない階層もあったけど、ボスがいる階層に関しては、二人で協力して倒したり、ソータ一人で倒すよりも、半分ぐらいはあいつ一人が飛び出していき、さくっと倒してしまうことが多かった。

 まあ今のところは、あいつもソータも階層内の魔物はもちろんのこと、ボスに関しても危なげなく倒しているので心配はしていないけど。


「んじゃあ、行ってくる!」


 そう言って、ボスの部屋に入るなりボスが中央までやってくる前に倒すつもりなのか、ここ何回かでお馴染みとなっているように、すごい勢いで部屋の中を走り抜ける。


「はい。僕の分までお願いし…… せっかちですね、イオリさんは」

「なあ、ここまでボスの部屋をあいつに任せることが多かったけど」

「えっと、それはですね、どうも出会う魔物が弱くて、イオリさんのストレスが少し溜まっているようなので、少しでも発散してもらえばいいなという魂胆なのですよ」

「なるほどね。ソータも大変だな」


 フィーネの方を見ながら言うと、俺が言外で言いたいことにソータは気が付いたようで、苦笑いをしながら頷いている。

 フィーネはと言うと、何故こちらを見たのか分からなかったようで、首を傾げていた。

 そんなフィーネを視界の端にいれつつ、ソータと少し雑談をし始めたタイミングでこちらに向かって走り込んでくるあいつの姿が見えた。

 ……どうやら、また魔物の血や肉を被っているようで、ちょっとしたホラーな状態になっている。


「……まったく。『結界(mupingo)』」


 そのまま飛び込んできそうな勢いで、こちらへと走り込んで来ていたので『結界』を張りつつ制止を掛ける。


「とりあえず、そこで止まれ!」


 どうやら、ちょっと声を掛けるのが遅かったかもしれない。

 制止を掛けた声にはギリギリで気がついたようだけど、案の定だ。


「へっ? へぶっ!」


 そのまま、勢いを殺さずに『結界』へと激突し、少し跳ね返ったあとで地面にべちゃっと落ちる。


「んんんーっ!」


 どうやら当たりどころが悪かったようで、顔を抑えながらしばらくゴロゴロと転がっていた。

 ちなみに『結界』は、あいつが跳ね返ったタイミングで解除しておいた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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次の投稿も一週間以内の予定です。

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