第四十話 イオリと再びの一層目ボス
投稿再開します。
「ふんっ! はっ! ほっ!」
「いきます! 『エリアバインド』!」
さっきから前を行く二人の戦い方を見ているけど、二人は危なげなくこの階層の魔物と戦っていて、俺やフィーネと同じように出会った側から一瞬で魔物を葬り去っている。
これは、さっさと中層以降に活動の拠点を移したほうが良いかもな。
なお、二人の後ろを金魚の糞の様に付いて回っている俺はと言うと、地図を見て方向を指示することすらせず、ただただ前を行く二人が作り上げる魔物の死体の山を次々と『倉庫』へ入れるだけの簡単なお仕事をしていたのだった。
まあ、魔物に出会っても問題なさそうだし、進む方向なども地図が見えているあいつが多少は道に迷いながらも、ほぼ最短の道順を通り進んで行くので、二人の後ろで安心して簡単なお仕事を進められると言った事情もあったりする。
しかし、この階層内は迷路構造となっているのでもう少し迷うと思ったんだけど、スキルかもしかしたら天性の感かもしれないけど、道に惑わされることなく、どんどんと階層の中心へと進んでいる感じだ。
「うーん? なんだか拍子抜けだな? うちが思っていた以上に手応えがなくてつまんないな」
「たしかに、もっとダンジョンを潜っても大丈夫そうな気がします。イオリくんから見た感じはどうでしょう?」
「まあ、今の感じからすると、たしかに低層では物足りない、というのはわかる気がする。十層以降は俺達も潜ったことがないから、あくまで予想でだけど、少なくとも中層までは大丈夫だと思う。フィーネは?」
「私もお二人ならもっとダンジョンの深くでも大丈夫だと思います」
とりあえず、今いる低層では物足りないし、もっと深い階層へ行っても大丈夫そうだ、ということで俺達の意見はまとまった。
そうと決まれば、まずはこの階層の中心で待ち構えているであろうボスを倒して、ひとまずの目標である十層まで行くとしよう。
もちろん、階層のボスが常にいるとは限らないけど。
それはともかく、途中の階層を飛ばして十一層から始めることもできるけど、それをやらないのは、まあ、全部の階層へ行かないと、探索したとは言えないのではないか、と言うこだわり以外は特に理由はない。
話が纏まった俺たちは地図に従い階層の中心部分にあるボスの部屋を目指して進んで行く。
ダンジョンの入り口から飛ばされた先は、前回通った道から外れていたので周辺の情報がない空白地帯だった。
そのため、今は、その地図埋めながら行き止まりで前の道へ戻ってきたり、と多少迷いながらもほぼ最短と考えられる道順を進んでいる。
その間も出てくる魔物という魔物は、どんどんと死体の山を前を行く二人が築き上げるので邪魔にならないように『倉庫』へとしまいこむ簡単な仕事をしていた。
「なかなか、地図が埋まんないな。いっそのこと壁を壊すか?」
「イオリさん、それは無理って話、聞いてませんでしたか?」
「あれ? そうだったっけ?」
壁を壊してショートカットってのができるといいんだけど、どうやらそういうズルはできないようだ。
壁を壊そうとすると、まず問題になるのが、破壊不可能ではないけど、実質不可能なほどの強度と、たとえ傷をつけることができても自動的に修復する機能だ。
そして、それをなんとかできたとして、次に問題となるのが、壁を壊そうとしている最中から徐々に階層内の魔物が、それも大量に集まってくる事。
そして最後の止めとして、あと少しで穴が開くというところで周囲一定範囲の床が全て消えて、丸ごと三十層下へ繋がる落とし穴が出現する。
この三十階層下というのは、要するに低層部分から準備も何もなしに中層へと飛ばれてしまう。
ある意味、腕に自身がある場合は丁度良いと考える者もいるらしいけど、まあ普通はそんな事になったら絶望しかないよな。
「それでもやります? 僕はやめておいたほうがいいと思いますけど」
「うーん。今はやめておこうかな」
「今はね…… まあ、深くは聞かないでおこう」
「そういう、あんたは壁を壊してみたいと思わないのか?」
「そんな事、あるわけな…… いや、いけるかな?」
「やっぱり、壊したいんじゃんか」
「いや、俺は可能かどうかの検討を、だな」
「まあまあ、お二人とも落ち着いてください。とりあえず、そう、少なくとも今は置いておきませんか?」
フィーネが俺たちの話に割り込んでくれなかったら、壁を壊せるだの壊せないだの、くだらない事で時間を取られるところだった。
と、そうしていたところで、やっと前回通った道と繋がると、ダンジョン内を進む速度も速くなる。
「ほら。もうすぐダンジョンの中心、ボスの部屋だ」
「やったぜ! 次の階層へやっと行ける」
ちょっと気が早いやつもいるけど、たしかにこの階層での魔物の強さを考えるとボスも簡単に倒せそうと考えてもしょうがないか。
実際に、倒せるだけの実力はあるから、油断していると言ったことではないし、問題ないといえば問題ないかな。
肝心のボスの部屋は、丁度いい具合に部屋の前には人もいないし、部屋の中を確認するとダンジョンのボスも居るらしい。
「じゃあ、準備はいいか?」
「もちろんだぜ!」
勢いよく部屋の中へ飛び込んだあいつは、ボスが部屋の中心に来る前に、そのままの勢いで部屋の中心を超えボス達の元へと辿り着く。
そして、辿り着くや否や、後方に居たゴブリンサモナーの顎に下方向からの打撃を繰り出し、その頭をただの肉片へと変えて部屋の天井へと撒き散らす。
前方に居たもう一匹のボス、ゴブリンメイジも、すぐ横をあいつがが通り過ぎ、ゴブリンサモナーの驚嘆の声に少し遅れ肉片が飛び散る音が聞こえたことに驚き後ろを振り向こうとするが、その途中でハイキックが綺麗に決まり、ゴブリンサモナーと同じく、ゴブリンメイジの頭だった肉片が、今度は床にベチャっと飛び散る。
俺はというと、こちらに振り向きハイキックをするのが見えた段階で、その後に肉片が勢い良く飛び散り、そのまま俺たちの所まで飛んできそうなことに気がつき、慌てて結界を張る。
幸いにして、結界を張るのが間に合ったので大事には至らなかったけど、結界を解除してみると、結界の境目で肉片が綺麗に途切れていた。
あいつはと言うと、ゴブリンメイジの肉片を飛び越えるようにして体をひねりつつバック転をすると、着地とともにこちらに駆け出してきた。
「ちょっとそこで止まれ!」
「えっ?」
「いや、えっ? じゃなくて。お前ちょっと肉片とかついてて汚いから」
「おお! 忘れてた忘れてた。ソータ、よろしく!」
しょうがないですね、と言いつつも頼られたのが嬉しかったのか、少し嬉しそうにしながら、ソータはあいつに向かって魔法を掛ける。
たぶん、汚れを取る魔法だろうけど、魔法の体系が違うのか正確な所はよくわからない。
「なあ、ソータ。今のは汚れを取る魔法だよな?」
「はい。そうですよ? 特に珍しい魔法でも……。そうでしたね、イオリくんから見ると僕たちの世界も異世界なので、別の世界の魔法ということですか」
「そうそう。俺の知っている魔法だと、『洗浄』ってのがあるけど、どうもちょっと違うみたいだし」
「『洗浄』ですか。たしかにちょっと違いますね。えっと、僕らが使うのは、『クリーン』って魔法です。まあ、イオリさんはこういう細かなのが得意じゃないみたいでいつも僕が使っていますけどね」
そう言って苦笑しつつもどこか嬉しそうにしているソータ。
あいつから頼られるのは満更ではないようだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想、評価、ブックマークを頂けると励みになります。
次の投稿は一週間以内の予定です。




