第三十九話 イオリと再びのダンジョン
「よし、じゃあ。ダンジョンに行こう!」
「だな」
あいつは、ロニさんから組合カードを返してもらうと勢い良く立ち上がり、そのまま組合の建物を飛び出して行きそうになるが、ソータに袖を掴まれて照れながら振り返る。
「イオリさん。落ち着いてください、ダンジョンは逃げませんよ?」
「ソータ、ごめんごめん。ついな?」
なんか、どこかで見たようなやり取りなんだけどな、とフィーネの方を見ると、如何にも私は知りませんと言うような顔をしているけど、目が泳いでいるし、頬も少し赤いぞ?
「よし、今度こそダンジョンだな!」
「まったく、しょうがないですね。イオリさんは」
フィーネと同じように、ダンジョンが楽しみでしょうがないという、あいつを先頭に組合の建物を出て朝と同じようにダンジョンへと向かう。
「こんにちは」
「おや? イオリ様とフィーネ様、朝以来ですね。たしか、半日程度の予定だったと思いますが、再度の探索ということでしょうか?」
「まあ、そんな感じです。実は、こちらの二人とパーティーを新たに組んで潜ろうかと」
朝と変わらずに受付をしていた職員のお姉さんに挨拶をし、ダンジョンへと再び潜ることお伝える。
「なるほど、そちらの二人……は、ダンジョンは初めてでしたでしょうか?」
「はい」
「すでに説明をお聞きになっているイオリ様とフィーネ様には申し訳ないのですが、これも規則となっておりますので、こちらのお二人にご説明をしている間、暫くお待ちください」
「俺達のことは気にせずに、二人に説明をお願いします」
「はい、ご理解とご協力ありがとうございます。では、まずは……」
と、俺達と同じように、あいつとソータの二人にもダンジョンのあれこれについて説明が成されているのを、多少は耳に入れつつ今後の予定について考えてみる。
とりあえず、今日は最低でも四人で十層へ行きたいな。
できればもう少し先まで、そうだな、せめて二十層か三十層までは行きたいなと、少し色気を出す。
あいつのステータスは、ほとんど抵抗されて確認できなかったので、どのぐらいの実力を持っているかの判断はし辛いけど、『鑑定』を妨害する系統の魔法かスキルのレベルが著しく高いといった理由がない限りは、ほぼ同じステータスを持っていると考えた方が無難かな。
まあ、俺の『鑑定』スキルは相当鍛えてレベルと言うか習熟値をほぼ最大まで上げてある。
そして『思考共有』で見た、というか見せられたが正しいけど、その冒険譚の中には、戦っているあいつから見たソータの姿もあって、まあ、ステータスは見ていないけど結論から言うと、実力的にはあいつとほとんど遜色ないと思えるぐらいの感じだった。
感覚的には、俺とあいつがほぼ同じぐらいの実力で、遠距離なら俺、近距離ならあいつが辛うじて勝つと思う。
フィーネとソータの場合は、その逆で、近距離ならフィーネ、遠距離ならソータが勝つ感じだろうか?
パーティーの組み合わせ的には、だいたいバランスが取れていて、女性陣は近距離特化、男子陣は遠距離から中距離ぐらいに特化、とそんな感じだ。
なんというか、男性が近距離を得意としていて、男性に比べて筋力に劣る女性は後衛って事が多いと思うけど、見事に俺達のパーティーは逆を行っているな。
と、一人で考え事をしていたけど、どうやら説明が終わったようだ。
「お、説明は終わったか」
「おう、バッチリだぜ」
「えっと、僕がしっかりと説明を聞いておきましたから大丈夫だと思います」
「えー、なんだよそれ」
「えーって言われても、いつも中途半端に話を聞いていて大変な目に合うのは僕や周りなんですよ?」
「そ、そうだっけ? うち、ちょっと、覚えがないな―」
ソータに突っ込まれて目が泳いでいるけど、どうやら話を聞かずにやらかしてしまった事があるようだな。
自身に対してもだけど、あいつに対しても、忘れず気を付けておこう。
「ほらほら。とりあえず、説明が終わったんだったら、ダンジョンに行くぞ」
「もう、イオリさん、あんなに楽しみにしていたのでしょう? ……私も楽しみですけど」
「おう、そうだった、そうだった。ソータのせいですっかり忘れてた」
「ちょっと、イオリさん。僕のせいじゃないですよね!」
あいつのせいでソータがすこし不機嫌になったようだけど、これからダンジョンに潜るのだから、この調子じゃ困るぞ、ソータ。
「まあまあ、落ち着けソータ」
「うう、すいません。毎度のことだと分かっているのですけど。僕、つい反応しちゃうんですよね」
「まあ、これからダンジョンに潜るんだから気持ちを切り替えてくれよ?」
「はい、大丈夫です」
「よし、じゃあ、説明にもあったと思うけど、この石碑に手を置いて……。置いたな?」
全員が石碑に手を置いていることを確認し、今日二度目のダンジョンへと潜るために呪文を唱える。
「『ダンジョンへ』」
さて、今日二度目のダンジョン探索の開始だ。
「えーっと? ああ、以前の開始位置はここか。地図がちょっと埋まっていない場所があるな」
「お? 地図があるのか? そういえば、ダンジョンの地図は売っていなかった気がするけど、どこで売ってたんだ?」
「ああ、全部は埋まってないけど、途中からならまっすぐボスの部屋まで行けそうだな。あと、地図は俺の魔法で作った、自前だぞ?」
「なんだ。で、結局その地図ってどこにあるんだ?」
「ああ、とりあえず書き写したものがあるけど、そうだ! 『思考共有』で共通ししてみるか」
一応、さっきダンジョンへ潜った時にフィーネに見せるために作った紙の地図があるにはあるけど、全部埋まっているわけではないし、と思ったけど、俺達には『思考共有』という便利な能力があったな、そういえば。
「おお! なるほど。へー、中央にボスの部屋があって、こうこがこうで、あそこが、ああなっていて……」
「なんか、新しいおもちゃを貰った子供みた…… おっと」
「そこ! 聞こえてるぞ! まったく、うちの身長が小さいからって子供扱いするなよな!」
「ごめんごめん」
とりあえず、あいつはアレでいいとして、ソータにはとりあえず紙の地図を渡しておこう。
「ソータ、ほい!」
「へ? あっ、はい。ああ、これがこの階層の地図ですか。空白部分があるってことは、自分の通った部分を記録するってことでしょうか。うーん? あっ、すいません」
「ああ、気にしなくてもいいぞ。別に隠すほどじゃないしな」
しかし、地図を見ただけで魔法の特性に気がつくとはね、なかなかやるじゃん、ソータ。
「よし! だいたい把握したぞ!」
「じゃあ、行くか。配置はどうする? 基本的には二人にはどんどん先に進んでいってほしいと思うんだけど」
「おう、うちはそれでいいぜ。なぁ、この地図は目の前に出たまんまになるんだろ? だったら、迷うこともなさそうだしな」
「はい、僕もそれで問題ないです。あっ、素材はどうしましょうね」
「えっと、素材はイオリ様がどんどん拾っていけばよいのではないでしょうか?」
「ああ、さっきはそうやってたな。それでいいか?」
「僕としては、構わないですけど」
「うちもいいぜ。なーなー。さっさと進もうぜ?」
もはや、待ちきれないとばかりにその場で足踏みをしだす。
子供に見られるのは、案外背丈だけではなくて、そういう行動をしたりと落ち着かない様子からも、そう見られるんじゃないかな。
約一名、待ちきれない子供もいるので……。
「それじゃあ、進むか」
「おう。待ってました!」
そんな感じで、ダンジョン探索二回目の俺達と、初めてダンジョン探索を行うあいつらとパーティーを組んでの、ダンジョン探索が今ここから始まった。
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