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鬼を嫌う理由 ファイナル 泣いた赤牙

 俺は、驚愕している。


 目の前でミナと言う女子の家が火事になり、たった今、消火された。


 だが、驚いているのはそこでは無い。


 火事になった家から少し離れた路上に、男性と女性が刺されて死んでいた。


 親父が言うには死亡推定時間はついさっきらしい。


 そして、男性の方は・・・ミナの父親だそうだ。


 驚愕している理由はこれからだ。


 (この女性・・・アツヤに似ている・・・まさか。)


 レン突き落とし事件の犯人であるアツヤに凄く似ていた為、俺は驚愕しているのだ。


 ちなみに親父は今、アツヤとレンを探しに向かっている。


 (俺の予想では、ミナの家に放火したのもあの二人を殺したのもアツヤだ。まずミナの家に放火した理由は、あの二人を刺し殺した証拠の包丁か何かを処分する為だろう。ミナの父親がアツヤの母親と不倫をしていたのを恨みに思ったと言うのもあるだろうが・・・)


 「アカキバ!レンが見つかった!」


 親父がレンを見つけた様だ。


 「親父、レンはどこにいたんだ!?」


 すると親父は急に口ごもり・・・


 「刺されていた・・・」


 「なに・・・?」


 俺は驚愕した。


 「どこで・・・?」


 「・・・家で刺されていた、母親に聞くとレンは突き落とし事件の所為で風邪を引いたらしく、倉庫に飲み物を取りに行ったきり戻って来なくて見に行ったら刺されていたらしい・・・」


 (どういう事だ?包丁を処分する為に放火したのでは無いとすると・・・やっぱり恨みに思って放火したと言う事に・・・)


 「大変だー!マイカ!」


 突然誰かが俺の苗字を呼んだ。


 「あいつは俺の同僚じゃないか、どうしたー!」


 「今、殺害されたレンの母親が刺された!」


 「「何!?」」


 次々起こる殺人事件、一刻も早くアツヤを見つけなければ次は誰が殺されるか分からない。


 「そんな・・・レンの次はあいつまで・・・」


 向こうからレンとレンの母親の死を悔やむ声が聞こえた。


 恐らくレンの父親か何かだろう。


 取りあえず親父にレンの父親を保護して貰おう。


 「親父、あの男を保護・・・」


 「痛い・・・何をするんだ・・・」


 (遅かったか・・・あれは、アツヤ!)


 俺が包丁を持っているアツヤを見ると、そのアツヤは一目散に逃げ出した。


 「あぁ、逃げた!親父、追いかけるぞ!」


 「分かった!お前は救急車を呼んであの男を治療してくれ!」


 「分かった!」


 親父はレンの父親を同僚に任せ、俺と一緒にアツヤを追いかけた。


 流石は元運動で一番だけの事はあり、速い。


 だが、追い付けなければまた犠牲者が出る。


 だから親父も俺も走った。


 しかし現実は非情で、俺と親父はアツヤを見失ってしまった。


 (クソ、見失っちまった。どこだ、アツヤは・・・)


 「おいアカキバ、あれミナじゃ無いか?」


 「・・・確かにミナだ。何でこんな所・・・」


 俺はその時、嫌な予感がした。


 そもそも何故アツヤがレンやレンの母親や父親を刺したのか?レンを刺した理由は、俺に密告したと疑っているからだろう。しかし母親と父親を刺した理由は分からない。


 そんな事よりも、アツヤがレンを突き飛ばした時その場にいたのはレンとアツヤともう一人・・・ミナだけだ。ミナが危ない!


 そう思うと俺は一目散にミナの所に走った。


 「おいアカキバ、待て!」


 親父の言葉も聞かずに俺はミナの所に走った。


 ミナは、俺が走って来るのを見て手を振った。右からアツヤが来ている事に気付かずに・・・


 (ヤバい!ヤバい!ミナが刺される!)


 俺は走った、全力で走った。


 そして俺は、アツヤが包丁で刺すよりも速くミナに抱き付いて押し倒し、ミナがアツヤに刺されるのを阻止した。


 「アカキバ!ぶっ刺して・・・」


 「アツヤ確保だ!!」


 追い付いた親父がアツヤの両手を後ろから掴んだ。


 「離せ!コイツだけは許せない!コイツが転校して来たから俺は成績が・・・」


 「その気持ちは痛いほど分かる!でも包丁で刺すのは駄目だ!」


 「でもって何だよ!結局お前らは俺が不登校になれば良いとでも・・・」


 「包丁じゃ無く、殴り合いの喧嘩でアカキバに勝て!勝ったら殺人や放火の罪は俺がどうにかしてやる!!それで良いよな!?アカキバ!!」


 親父が大声でそう言い放った。


 「アカキバ君・・・そんなの受けちゃ・・・」


 ミナに限らず、誰でもそんなのは受けないだろう。


 常識で考えろと言われて終わりだ。


 「分かった、その代わり俺が勝ったら何でも言う事聞いて貰うからな・・・」


 だが、俺はここで許せば牢屋に入らずに済む人間を助けずにはいられない。


 「本当にそんな事が出来るんですか?アカキバのお父さん。」


 「絶対に綺麗さっぱり無くしてやるから安心しろ・・・」


 「アカキバ君、良いの!?」


 「良いも何も、俺の所為なんだからしょうがないだろ。」


 そしてアツヤは包丁を親父に渡した。


 俺もミナを親父の元へ向かわせ、俺とアツヤは対峙した。




 「マイカ!レンの父親の傷は命に別状は無い様だ、刺した少年はどこだ!?」


 あ、親父の同僚が来た。


 「それは良かったな、アツヤなら俺の息子と殺人と放火の不問を賭けた喧嘩をやるんだ。邪魔しないでくれ。」


 「何を言ってるんですか!殺人犯を許すなんて馬鹿な話・・・」


 「その殺人が起こったのは元々は、アカキバが一か月で勉強も運動も一番になったからなんだ。それに俺が許すと言ったら例え天国の神や地獄の閻魔がなんと言おうと許す。」


 「ふざけるな!!」


 また親父の考えに反対する男が出た。


 「私のレンを殺した犯人を許す?そんな馬鹿な事が認められる訳無いだろう!!」


 さっき刺されたレンの父親だな。恐らくレンが殺されたと聞いて会社を早引きしたのだろう。


 「そうです、私のアツヤは許されない事をしました。逮捕されるべきなんです。こんな馬鹿な事は止めて下さい・・・」


 また違う男、今度はアツヤの父親だろう。


 「黙れ・・・」


 俺の親父が小さな声でそう言った。


 「許されない事をしました?許す事が馬鹿な事?じゃあ許さない事は良い事なのか?反省してやり直したいと言う奴を許さなくても罪を犯したからそれは正しいのか?アツヤの父親はレンの父親の部下で、アツヤの父親は仕事で一回失敗したけど、それをお釣りを付けて取り戻せる策を思い付いたのに失敗を執拗に責め立てられて仕事が碌に出来なくなったのに許されないのか?アツヤの母親はミナの父親と不倫をしていて勉強や運動を家庭教師に押し付けて母親としての世話も自分の書類上の夫の慰めもしなくて家庭を崩壊させたのに許されないのか?レンが突き飛ばされたのだって、成績が下がったのを執拗に責め立てられたからかもしれないのに許されないのか?レン以外にも周りの生徒に成績が下がった事を理由に虐めを受けていたのに先生も父親も母親もどうでも良いような顔をして無視されたのに許されないのか?アカキバはアツヤの虐めをどうしたら良いか俺に相談して来たぞ?大勢の奴がアツヤを寄ってたかって虐めたのに、殺人をしたから許されないのか・・・?」


 俺の親父の言葉に全員が黙り込んだ。


 「違うだろ・・・?家族が殺された時に本当にやるべきは殺した犯人を牢屋に閉じ込めて臭い飯を食わす、或いは殺した奴を責め立てる事でも無いだろ?殺された理由を考えて、それから二度とこんな事が起こらない様に殺害した奴と殺害された奴、両方が努力する事だろ?殺人犯の自由を奪ったら殺人犯と同じ事をしたと言う事実を美化して誤魔化しているに過ぎなくなるぞ?まだ死んでもいないアツヤを牢屋と言う名のゴミ箱に捨てると言う事になるぞ?あ、刑務所と言っても大小がある。送られる刑務所がこれからアツヤが送る学校生活より快適だったらどうするんだ?許さないと言う気持ちが無駄も良い所じゃ無いか。だったら許されても許されなくてもどっちでも一緒なんじゃないの?喧嘩でこれからの将来決めても別に良いんじゃないの?」


 「「「「「「・・・・・・・」」」」」」


 誰も反論する事が出来ない。


 「これ以上は時間の無駄だな。アカキバ、アツヤ、喧嘩を始めてくれ。アツヤのお父さんその他大勢、邪魔したら許さないからな・・・」


 誰も邪魔しようとする気になれなくなった。


 そして・・・


 「「アァァァァ!!!!!」」


 俺とアツヤは掛け声を上げてお互い殴りかかった。


 先に当たったのはアツヤの拳だ。


 アツヤが更に追撃して来た。


 俺はその拳を受けながら右手に力を溜めていた。


 そしてアツヤが拳を振り上げた時、腹を思いっきりぶん殴った。


 アツヤは苦しそうに咳をした。


 俺は手を緩めず、顔にひじ打ちを喰らわせ、足を蹴ってやった。


 だがアツヤも負けてはいなく、俺は体当たりを喰らってしまった。


 俺はアツヤに押され、俺もアツヤを押し返す。


 お互い手に爪をたてたり、お互い蹴ったり蹴り返したりを何度も繰り返す。


 やがてお互い殴り合った。お互い何度も喰らって殴る速度も低下して来た。


 だがお互い諦めない、アツヤは今後の人生が、俺はある願いが賭かっているからだ。


 そして拳から血が出て、お互い殴る元気も無くなった。


 「もうこれ以上は止めて!アカキバ君もアツヤ君もこれ以上喧嘩しないで・・・」


 ミナが声を上げたが、


 「ミナ、アカキバとアツヤの喧嘩をここで止めたらどうなるか・・・予想してみな。」


 俺の親父が冷たく諭した。


 そして俺とアツヤは頭に力を入れ・・・


 「アァァァァ!!!!!」


 お互い頭突きをした。


 その反動でお互い後ろによろけた。


 そして・・・


 「グッ・・・」


 俺が地面に片膝を付いた。


 「アカキバ君!」


 「まだ・・・負けないぞ・・・」


 俺は気力を振り絞り立ち上がった。


 それと同時に突如、何かが倒れる様な音が聞こえた。


 見ると、アツヤが後ろに倒れたではないか。


 俺は立った状態を維持したが、アツヤは何秒経っても立ち上がらなかった。


 そして俺の親父が・・・


 「この喧嘩は!アカキバの勝ちだ!」


 俺が勝ったと宣言した。


 「アカキバ君!アツヤ君!大丈夫!?」


 ミナが俺とアツヤを心配して声をかけた。


 「俺は大丈夫だが・・・アツヤ、大丈夫か?」


 「もう立ち上がれねぇよ・・・勉強でも運動でも負けて、人生を賭けた喧嘩でも負けちまった・・・もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ・・・」


 アツヤは敗者らしく、潔く諦める様だ。


 「分かった、好きにさせて貰う・・・親父!」


 俺は願いを何でも叶えて貰う事にした・・・親父に。


 「人間は指定していないから親父に願いを叶えて貰っても別に良いよな?」


 親父は笑いながら、


 「おぉ、良いぞ。早く願いを言え。」


 と、了承した。


 「アツヤの罪を無かった事にする様に全力で取り組んでくれ。」


 「「「「「「えっ!?」」」」」」


 親父以外の全員が俺の願いに驚いた。


 「何だよ、願いは願いだからそれで良いだろ?」


 「アカキバ・・・お前って奴は・・・」


 アツヤは呆れているのか喜んでいるのか良く分からない言葉を述べた。


 「アツヤ、頼みがあるんだけど・・・」


 「何だよ、お前の親父に願い叶えて貰ったんだから俺は叶えないぞ?」


 「まぁ一応聞いてよ。」


 そして俺は、


 「お前、俺と友達になれ。」


 「・・・・・は?友達?」


 「うん、友達。なってくれない?」


 アツヤは俺の言葉に少しの間黙り込み、


 「ハハハハハハハハ!!」


 横になりながら笑った。


 「お前、バカか?それとも変人か?親の顔が見てみたいぞ!ハハハハハ!!」


 「ここにいるんだが・・・」


 親父が小さな声で突っ込んだ。


 「それで、返事は?」


 俺の質問にアツヤは・・・


 「・・・考えさせてくれ、親父~」


 「・・・何だ?アツヤ。」


 「おんぶして家まで連れて行ってくれ、疲れて動けないんだ・・・」


 「分かった、帰ったら俺が好きな物を食わしてやろう。」


 アツヤの親父は、アツヤをおんぶして家へ帰った。


 「さてと、親父・・・」


 「何だ?」


 「絶対に俺の友達を守れよ・・・」


 「・・・・・当たり前だ!任しとけ!」


 親父は高らかに宣言した。




 そして翌日。


 「え・・・?アツヤが首を吊った!?」


 学校に来た、俺とアツヤの親父二人の言葉に今まで感じたことが無い程の驚愕を受けた。


 「ごめん・・・アカキバ・・・任しとけと言ったのに・・・」


 俺の親父は申し訳なさそうな顔をしている。


 「俺がアツヤの好きな物を作り終えて、アツヤを呼びに部屋に向かったら・・・アツヤが首を吊っていて・・・これが机に・・・」


 そしてアツヤの親父は、手紙の様な物を俺に渡した。


 「これは・・・?」


 「アツヤの・・・遺書だ・・・俺もまだ見ていない・・・呼んで貰えないか?アカキバ君・・・」


 俺は手紙の封を剥がし、手紙を読み始めた。


 「親父、母、レン、レンの両親、ミナ、ミナの両親、その他俺の同級生全員、担任の教師、そして・・・アカキバとアカキバの親父へ。これを見ていると言う事は俺はこの世にはもういないのだろう。アカキバとの喧嘩の疲れが引いた後、外を見てみると大勢の人が俺を逮捕しろと大騒ぎになっていた。アカキバの親父は止めろと言って全力で鎮めようとしたが、大勢の人がアカキバの親父を殴ったり非難したりし始めた。墓にも窓に石を投げたり、他の家が巻き添えになったりで大変だ。やはり殺人犯を無罪にするのは無理があるみたいです。なので俺はこの遺書を書き、地獄にでも行こうと思います。俺が殺した人は天国にいるでしょうか、それとも地獄にいるでしょうか。地獄にいたとしたら俺は心をこめて謝ろうと思います。最後にアカキバ、俺と友達になったらお前にも被害が及ぶかもしれない。だから俺は遠くに出掛けます。もう戻っては来ないでしょう。でも、お前の事は忘れはしない。いつまでも・・・いつまでも・・・俺の唯一の親友、アカキバ・マイカ、ありがとう。次にあったらまた、親友になろう。アツヤ・アオヤマより。」


 俺はその手紙を見て、突き飛ばされた日に見た紙芝居の泣いた赤鬼を思い出した。


 (何がありがとうだよ・・・お前が青鬼になって犠牲になったって現実は全く変わらないんだよ・・・紙芝居とは違うから社会の赤鬼に対する評価なんか変わらない・・・俺に言わせれば社会は凶悪で赤鬼や青鬼なんか足元にも及ばない鬼だ・・・俺は心優しくは無いけど、犯罪者を許そうとするから世の中から嫌われる赤鬼だ・・・そんな赤鬼なんかたった一人の青鬼がいなくなったからって変わる訳が無い・・・俺は今・・・世の中、自分、友達のアツヤ・・・色々な鬼が、全て嫌いになった・・・鬼なんか嫌いだ・・・)


 そして俺は泣き出した。


 世の中に嫌われ、友達を失って泣いた。


 涙が枯れ果てる頃には、アツヤの葬式が終わっていた・・・




 「以上、俺が鬼が嫌いな理由だ。」


 「・・・・・」


 イヴァンはアカキバの、想像以上に重い理由に黙り込んでいた。


 「ん?廊下に誰かいる・・・?」


 「イヴァン、外にも誰かがいた様な・・・」


 二人は気のせいだと思い、部活を後にした・・・

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