↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日、あの時、あの場所で。【BL】  作者: 杷木 うきは
第1章 三峰と四ツ谷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/16

最終話 卒業



 大学2年生になったばかりの頃。


 まだ時々肌寒い日はあるが、一緒に寝るほどでは無くなった。

 何ヶ月も添い寝をし続けていたので、1人で寝るのが少し寂しい。


 少し恥ずかしくもあるが、この歳になって抱き枕が手放せなくなってしまった。





 四ツ谷は定期的にライブを見に行っているらしく、今日も出掛けている。


 晩飯は要らないと言われているので、1人でゆっくりインスタントラーメンを食べていると、四ツ谷が帰ってきたようで、鍵を開ける音がした。



 玄関先でバタバタと大きな音がするので、様子を見にいくと、顔を真っ赤にした四ツ谷が慌てて帰ってきていた。



「おかえり?どうしたの、そんな焦って。」

「.........れた。」

「え?なんて言った?」



「柳に告白された!!」



 四ツ谷がなんと言ったのか、飲み込むのにしばらく時間がかかった。



「えっと...柳って、あの柳?」

 高校の時のイメージだと、おどおどしていて、とても告白とかするようなタイプには見えない。



「うん...三峰も知ってる柳で合ってる。」

「そっか。えっと...返事はしたの?」



 頭が真っ白で何を話せばいいのか分からない。

 ただ、四ツ谷がどう返事をしたのか聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちがせめぎ合っている。


 四ツ谷が話し始めるまで一瞬だったはずだが、あまりの緊張で何時間にも感じられた。



「返事は...まだしてない。」


 ホッと胸を撫で下ろす。と同時に、何故ホッとしたのか分からず混乱した。




 そこからは四ツ谷とすれ違う日々が続いた。


 柳の家に泊まっているらしく、数日顔を合わせないこともしばしばだ。



 タイミングを失い、買い損なったリビングのソファは、その後も買うことはなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーー





 大学4年の終わり頃。



 徐々に荷物を片付けて、殺風景になっていく部屋を見ると、もうこの生活が終わるという現実を突きつけられる。



 まだ肌寒いが、心の寒さを誤魔化す為に、ベランダに出て物思いに耽っていると、四ツ谷もベランダに出てきた。



「うわっ!さむっ!こんなとこで何してんの?」

「んー...もうこの生活も終わっちゃうのかって考えてた。」

「......そうだな。」



 しばらく2人して無言で外を眺める。見慣れた景色、住み慣れたこの町ともお別れだ。



「就職したら県外だっけ?」

「あぁ。」

「じゃあ一緒には暮らせないかー。」


 もう決まっている事だったが、思わず口に出てしまった。



「うん...柳と暮らすから...」





 終わりが目の前に迫った今になって、やっと自覚した。

 いや、きっと今までも分かっていたが、ずっと見ないフリをしてきた。



 四ツ谷が好きだ。



 気付いた瞬間、失恋していた。こんな事なら最後まで気付かなければ良かった。



 ありえない事だと分かっているが “もしも” の想像が止まらない。




 四ツ谷が柳に告白された日、その時すぐに、玄関先で、抱きしめて俺も好きだと言えていれば。


 サークル活動の日、先輩が最後のアドバイスをくれた時、その場で、ちゃんと四ツ谷への気持ちを考えていれば。


 高校2年生の冬の日、体育の時、テニスコートで、意外な一面を見せる四ツ谷に惹かれていると気付いていれば。





 いくら考えても、もう遅い。

 深くため息を吐くと、吐いた息が白くなって消えていった。



「あのさ、四ツ谷。俺--」





ーーーーーーーーーーーーーーー





 卒業式の朝は、四ツ谷と一緒に朝食をとった。


 入学式とは打って変わって、時間に余裕がある。数少ないこの4年間で成長した点だ。



 この卒業式が終わったら、こっちでやることも無いので、四ツ谷は引越しをする。既に荷物はほとんど新居に送っているようで、残りは段ボール1箱だ。


 自分も引越しをするが、地元には残っているので、退去時の立ち会いなどは三峰1人で行う事になっている。



 コーヒーを飲みつつ最後の食事をゆっくりと済ませる。お互い無言だが、気まずくないのは相手が四ツ谷だからだろう。




 高校生の頃、朝食は米派だったが、四ツ谷と暮らす4年間の内に、いつの間にか朝はトーストとコーヒーになっていた。


 冬は何かを抱きしめないと寝られなくなったし、檜の香りが凄く好きになった。




 出発の時間になったので、2人で玄関に向かうと、四ツ谷が振り返る。



「今日はちゃんとネクタイ結べてるな。」


 そういって微笑む顔は、どこか寂しそうだった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。