8.生徒会勧誘
「今日集まってもらったのは、各学年の成績上位三名だ。知ってると思うけれど、君たちには生徒会員となる権利を与えられる。もちろん拒否権はあるし、拒否した場合はまた成績順に呼びかけを行うから、気負う必要もないよ。……この中で権利を破棄する者はいるか?」
そう言ってレオンは生徒会室に集まった八名を見渡したが、皆何も言わないので話を進めることにしたようだ。
その頃、セラはいつもと違う生徒会メンバーに驚いていた。
(シオン生徒会入るの!?てっきり拒否すると思ってたんだけど!あとノアさんもいるし、どういうこと!?まだあの人差し指事件覚えてるからちょっと…いやだいぶ気まずいし!もしかして二人とも、リリアと関わらせるためにゲームの強制力が働いたとか!?……ありえる。)
「じゃあ、自己紹介から始めようか。三年は事前に話し合って役職を決めてるから、それも含めて紹介するね。私はレオン・フォレスト。生徒会長をすることになったからよろしくね。…………」
「副生徒会長を任されたセドリック・ルーンです。……」
(いや、ここまではゲームと同じなんだけど…)
「会計監査を任されたノア・リィンです〜。ゆった〜りのんび〜りやっていきたいので、よろしくお願いしま〜す。」
「おい真面目にやれよ〜」
ノアとレオンの軽い言い合いで場が和むが、セラの頭の中はさらなる混乱を巻き起こしていた。
そして次の瞬間、セラはついにパンクした。
「俺はカイ・ルービンシュタインって言いまーす。よろしくー。……あー、あと一ついい?君、かわいいね。俺と付き合わん?」
と、目を見ながら言われたから。一瞬、生徒会室の時が止まった。
「……は?」
ーーカイ・ルービンシュタイン。
攻略対象の中で唯一の二年生。国一番の商家の長男。髪は明るい赤色で、長いから後ろで軽く結っていて、跳ねてるけど、あれは多分毎日作ってる。目は猫みたいな金眼。ゲームでは、とにかくチャラく、軽いキャラだ。
「すみません私に言ってます?」
「もち。」
ノアが呑気に「お〜大胆〜」なんてほざいているのが聞こえる。さっき和んだはずの雰囲気が一瞬で奇妙な沈黙に変わり、ノア以外は唖然としている。
(チャラいと言ってもここまで来るとゲームのキャラとして成り立たなくない!?)
「えっと…ごめんなさい。ちょっと無理です。」
(ちょっと言い方キツすぎたかな…でもこっちは、あんたたちの恋愛で死活問題に発展するんだぞ!こんなイレギュラー認められん!!)
「……でも好きな人いないなら、まずお試しで付き合うのもアリじゃね?」
(『アリじゃね?』とは?もしかしたら言語が違うのかも。うん。きっとそうだ。会話が出来なさすぎる。)
謎にしつこいカイに虚無り始めたセラを見かねて、それまで傍観していたレオンが口を挟んだ。
「ストップ、ストップ。とりあえず自己紹介を終わらせよう。ね!」
セラは救世主に遮ってくれてありがとうの気持ちと、もっと早く腰を折って欲しかった気持ちで複雑になったが、とりあえず空気が元に戻ったことに感謝した。
「ふふ、ノアさんといい、カイさんといい、セラはモテモテね」
リリアは隣でそんなことをほざいていた。
♡ ♡ ♡
ーー生徒会会議後の廊下
(はぁ……なんだったの今日……攻略対象ならヒロインナンパしなさいよって感じなんだけど……)
結局その後は残りの二年生とセラたちの自己紹介をして終わった。セラは、何か嫌な予感を感じ取って、早く逃げてきたのだが…
「セラちゃーん」
(ゲッ……走って来た)
仲良くするのが目標とはいえ、絶対に今ではないと確信したセラはとりあえず無視する。
「もう帰っちゃうの?さっきの話なんだけど…」
そう言って肩を組んできたので『前世でその行為はセクハラだ!』という言葉を飲み込み、もう無視できないと堪忍した。
「だから無理って言ったじゃないですか!?」
「いやお試しでいいから!」
「それもダメです!」
「俺、絶対優良物件だし!めっちゃ大事にするよ!」
「……(攻略対象とそういう関係になりたくないんだってば!)」
一瞬黙ったセラを見て、押せばいけると思い込んだのか、どんどん言葉を重ねていく。
「なんか欲しいものがあったら、買ってきてあげれるよ。ショコラーデのチョコとか、伝手ですぐ買えるし!」
「……(……え!むっちゃ食べたかったチョコじゃん…生きてられる一年じゃ買えないから何十年も食べてないんだよ………今回カイルート試してみる?…付き合うが断罪の条件じゃないし…攻略対象と付き合った周回ないし………決してチョコに釣られたわけじゃないから!生存戦略!)」
「頭も良いから、勉強も教えてあげるよ!来年も生徒会入りたいなら成績をキープしとかないと……」
カイが言い終わらないうちに、いつからいたのかはわからないが、生徒会室を先に出た二人に追いついたシオンが会話に割り込んできた。
「…おい、セラ。今日から一緒に勉強するって決めただろ」
「あ!その約束って今日から!?」
「……ぇ?」
シオンがセラの肩に乗ったカイの手を強引に払って、カイから離すようにセラの手を引く。
「ちょっと待ってよシオン君。俺、セラちゃんに真剣に告ってる途中なんだけど?」
カイは、少し拗ねたようなムスッとした顔をする。
セラもカイの告白に傾きかけていたため、カイに加勢する。
「シオン。先に図書室行っててよ。ちょっとカイ先輩と話してから行くから。」
それを聞いたカイは勝ち誇った顔をし、シオンは呆れたような顔をした。
「……はあ。もので釣られたのか?さっきまであんなに嫌そうだったのに。」
「…いやそういうわけでは……」
「ふーん。もので釣られるようなやつだったなんてな〜。しかも公爵令嬢ともあろうお方が。残念だな〜」
(プッツーン)
「釣られてないから!カイ先輩と話そうと思ったのは、ちゃんと断るためだし!勘違いしないで欲しいんだけど!」
「えっ、ちょっと待ってよ…」
「ってことで、先輩そういうことらしいので……セラ、行くぞ。」
「セ、セラちゃん?」
「ごめんなさい!」
シオンはカイを申し訳なさそうに振り返るセラをズルズルと引っ張りながら、図書室へ向かった。
セラはカイを振り返るのに必死で、隣でシオンが安堵するようにホッと息を吐いたことに気づかなかった。
カイが仲良さそうな二人をどんな気持ちで見ていたのかも。
ちょっと小話
実はカイは周りに女子を沢山侍らせています(流石に生徒会室では侍らせてません)!その女子たちには自分の商品の広告塔にするためにプレゼントを沢山しているそうです!




