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09

 小さな村に一泊ずつして、三日目にカリュースの領地入りした。

 そのお屋敷はマーベラスより小さくてなんとなくホッとした。



 初めはマーベラス夫人、カリュース夫人と呼んでいたが次第に仲良くなり、名前で呼んでいいと言ってもらえた。

 勿論私も名前で呼んでもらえることになった。

 

 カリュースの屋敷で二泊して王都に向けて出発した。

 村や街が増え、あちらこちらへと観光がてら立ち寄りゆっくりと進んだ。

 四日で着く距離を七日かけて王都へ着いた。


 アデレートとは違う王宮に感嘆の声を上げ、街の発展に驚く。

 やはりここにも噴水があった。

「ここがマーベラスの屋敷だよ」カリュースが指す屋敷はやはり大きかった。

 カリュースは勝手知ったるという風に「自室があるんだ」と言って私を客室に案内して自室へと下がっていった。

 マーベラスは苦笑して「今日はゆっくりして」と言って去っていった。

 ほっと息を吐いてソファーに腰を下ろした。


 マーベラスのメイドがお茶を私達2人に出してくれ、下がっていった。

 ヴィーノと2人になり、座るように勧める。


「ヴィーノも休んで」

「ありがとうございます。流石に疲れましたね」

「移動が続いているものね。ヴィーノも休める時にはしっかり休んでね。何日こちらにお世話になるかわからないけど、帰りもあるからね」

「はい。ありがとうございます」

「絶対よ。私の世話は程々にね」

「かしこまりました。お嬢様」


 その日の食事は客室で提供された。



 朝食はダイニングに来るよう誘われ、食後のお茶を飲んでいると、カリュースが立ち上がり舞台役者のように大きな身振り手振りで話だした。

「さぁ、疲れはとれたかな?!もし、元気なら一緒に来てほしい場所があるんだっ!」

 その仰々しい素振りに皆が笑う。


「ご心配ありがとうございます。疲れも取れました」

「よし、では行こう!」

「このままの格好でよろしいのですか?」

「勿論いいとも」

 私の格好はシンプルなものだったので、その辺を見て回るのかな?くらいの気持ちでそのままついていった。

 

 カリュースに馬車に乗せられ、ニーカとシャッテが乗り込んできて扉が閉められる。

「あれ?カリュース様は行かなくていいんですか?」

「今日は邪魔よ。それに仕事もあるしね」

「あぁ、そうですよね。私のことで長い日数をいただいてしまって」


「休暇中だからいいのよ。でも王都に来ると嫌でも仕事が舞い込んじゃうから」

 父のことを思い出し、納得する。

「この時期に休暇というのはラーセスマイトでは普通なんですか?」

 アデレートではこの時期に休暇を取ることはない。


「普通というか、貴族が順番に休暇を取るのよ」

「そう、私達の休暇が終わったら次の誰かが休暇になるわ。それに合わせて仕事の調整をするのが大変らしいけど」

「あら、私達も大変よね。居ない時に限って面白い話が出回ったりするし」


 クスクスとニーカとシャッテが笑う。

 私は小首を傾げて曖昧に笑う。

「去年の休暇中にね、ある2人が出会って恋に落ちたらしいの。でもその殿方が鬘だったらしくて相手の女性は知った途端恋が冷めたらしいのね。それで仕方なく親のすすめでお見合いをしたらしいのね。そしたらその相手もまた鬘で!」

 クスクスと二人が笑う。

「もう嫌だと言って修道院に入ってしまったのよ。その女性が実は王女様で、王様と王妃様が慌てて修道院へ迎えに行ったっていうことがあったの」


「かつら、でですか?一瞬で恋は冷めるものなのですね」

「あら、その反応は恋に落ちたことがないのね?」

「残念ながら」

「恋はいいものよー」

 夢見るような表情で何かを思っているのかシャッテがうっとりしている。

「恋をされたのですか?」

「ええ。大恋愛をしたわ。ローランと」

 興味津々で話の続きを望む。

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