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私たち家族の秘密は・・・『うん、知ってた。』レベルのものだったようです。

お久しぶりです。ヨハナが男性を連れて帰って来たよ。

「たっだいま~。村がめちゃくちゃ変わってて、ビックリだよ。危うく別の村に来たと思って出ていくところだっ」

「誰!?」

「え、ミーネ、それはなくない?可愛い妹のヨハナちゃんですよ?」

「誰なの!?ヨハナ、その後ろの!!」


まさかの彼氏連れ!?裏切られた!!ヨハナに裏切られたよ!!!


「後ろの・・・アレは、いないものだと思っていいから。」


ヨハナは非常に嫌そうな顔をしながら、全く後ろを振り向かずそう言った。


「あら、ヨハナお帰り。」

「お帰り、ヨハナ姉。」

「あれ?ヨハナ姉ちゃん、帰って来たんだ。」

「わーい!ヨハナお姉ちゃん、ご飯作って~」

「お、おかえりなさい。お姉ちゃん。」


ちなみに、それぞれ母、イッカ、ムラト、ナナリー、ヤスミンの言葉だ。その後、急に皆は静かになった。後ろの男性に注目が行く。


「初めまして、ヨハナさんのご家族の方々。僕はシドニー・マーレイと申します。ヨハナさんにはいつも」

「それより、お父さんとお兄ちゃんは?」

「ヨハナ、僕をご家族全員に紹介してくれるのか」

「私、いろんな食材を持って帰って来たの!今日はまだ夕食の用意はしてない?私が作りたいんだけど。」

「その間に僕はヨハナのご家族と」

「いい加減に出てって!勝手に人の後ついて来て、このストーカー!」

「すとおかあ?」

「あー!もう嫌!!ほんっとに嫌!!」


どうやら、恋人ではないらしい。ポカンと二人のやり取りを見ていた私たちだったけど、イッカが動いた。


「マーレイさん、僕は弟のイッカと申します。姉は私たち家族と積もる話もありますので、ひとまずマーレイさんは、この町の宿を取ったらいかがですか?」

「イッカ君、できれば僕はヨハナと離れたくなくてね、このお宅の庭にでもテントを張らせてくれないだろうか?」

「でもさ、ヨハナ姉ちゃんは嫌がってるから、父ちゃんやフーゴ兄ちゃんが許可してくれないぜ?」

「では、お二人に許可をいただくために、お二人をここでお待ちしてもいいだろうか?」


イッカがそっとマーレイさんを家から追い出そうとしたのだけれど、マーレイさんは居座るつもりのようだ。ムラトがイッカに加勢しているけれど、マーレイさんが折れる気配はない。ヨハナがもっとイライラしているのがわかる。


「そうねえ、とりあえず、マーレイさん、お茶でもいかが?」

「お母さん!!こんな奴もてなさなくてもいいんだってば!」


こんなにもヨハナが毛嫌いをしてるとなると、答えは一つ。


「ヨハナ、マーレイさんにご飯でも食べられたの?」

「食べられたなんてもんじゃないよ!こいつ、行き倒れてて、一度だけはご飯を分けてあげたよ?でも、それからずっと付きまとって私の作ったご飯を横取りして、私の食べる分が毎食減ってるんだから!!」

「一応、狩りにも協力して食材の提供はしているのだが」

「私の作った量に対して、私の食べる割合が少ないのがおかしいでしょ!?」


ああ、うん。駄目だよ、ヨハナから食べ物を奪っちゃ。食の恨みって結構根深いと思うけど、それがヨハナだよ?壮絶な恨みになってるに決まってるよ。


「あっれー。ヨハナじゃん。男連れ?やっるぅ。」


全く緊張感のない声で兄が帰ってきた。その後ろから、父も家に入ってくる。


「何ぃ!!ヨハナが男連れだと!?そう簡単に結婚を許してもらえると思うなよ!!」


この後、うちがさらに大混乱になったのは言うまでもないだろう。仕方ないので、荒ぶる父を母とヤスミンにまかせ、イッカには茶々を入れる兄を黙らせてもらい、ヨハナを落ち着かせるためにナナリーに食べ物を用意してもらって、マーレイさんには私とムラトが対応する。


そのマーレイさんは父の剣幕に驚いた風もなく、むしろ、キラキラとした眼差しで父を見ている。何だろう?これがヨハナだったら食べ物関連かと思うんだけど・・・まさか、怒られるのが好きなそっち系の方!?


「あ、あのぅ、マーレイさん。」

「ああ。すみません。予測はしていたんですが、本当にヨハナのお父様だったんですね。感激です。」

「?父を知っているのですか?」


キラキラとした眼差しのままマーレイさんはこちらを向くとしゃべりだした。


「それはもう!!この世界を救ってくださった勇者様ですから!!となると、ヨハナのお母様は聖女様ですね。ああ!!ということはこの村の方々が勇者様御一行!!ああ。お話が聞きたい。」

「はぁ?何言ってんの?勇者に聖女ってそんな大層な人がこんな村にいるわけないじゃん。」


ナナリーの作ったお菓子を食べながら、ヨハナが呆れた声でマーレイさんの言葉を否定する。あ、ヨハナの怒りレベルが下がってきてる。やっぱり食べ物を与えて正解だった。でも、マーレイさんの言ってることは本当だと思う。村の人たちまで勇者一行っていうのはわからないけど。


「勇者物語を知らないのかい?ヨハナ。」

「さすがにそれくらいは知ってるよ。お子様向けのおとぎ話よね。読んだことはないけど。」

「まあ、確かに子供が寝るときに聞くのが一番多いとは思うけど、おとぎ話ではないよ?」

「へえ。そうなんだ。内容はあんまり知らないんだよね。」


と、ヨハナの言葉を聞いて思い出した。私たちの下の、イッカ、ムラト、ナナリーは立て続けに生まれて、両親は大変だった。で、私たちの世話をしてくれたのは主に姉。なぜか寝かしつけるのは兄だった。そう言えば、兄は勇者物語を話してはくれなかったな。というか、ヨハナはさっさと寝ちゃってたし。私も勇者物語を知ったのは、母がヤスミンに話していたのを聞いたからだ。


「あら、ヨハナには話さなかったかしら?私が聖女、お父さんが勇者として魔王討伐の旅に出た話。」

「え!?本当の話なの!?」


ヨハナが母の言葉に驚いていると、今度はナナリーとムラトが驚いた。


「ええ!?知らなかったの!?ヨハナお姉ちゃん!」

「俺だって知ってるけど、何で姉ちゃんだけ知らなかったんだよ。」


その反応に、ヨハナは私の方を向いて、目を丸くして聞いてきた。


「もしかして、ミーネも知ってたの?」

「う、うん。」


若干目が泳ぐ。薄々、疑ってたぐらいだけれど。周りの知らなかったの!?に押されて、知ったかぶりしてみた。


「だって、聖剣が納屋にあるじゃない。ヨハナお姉ちゃん、気付かなかった?」

「ああ、あれな。聖剣らしく、岩にぶっ刺したかったんだが、いい岩がなくて、仕方なく土にぶっ刺しといたんだけどな。村が拡張されて町になる時に邪魔だからどかせって言われてなあ。」


そして納屋へ・・・聖剣可哀想!


「何で家族の私が知らなくて、ストーカーのあんたがうちの事情を知ってんの!?」


ヨハナの矛先はマーレイさんに行ったようだ。


「僕の父が勇者様御一行に魅せられてね。その雄姿を余すところなく拝見したいと、陰からずっと」

「親子そろってストーカーか!!」


うわぁ。勇者御一行のストーカーってとんでもなくハイスペックなんじゃないの?戦闘とかも潜り抜けてるってことでしょ?


「・・もしかして、ライド・マーレイ?」

「は、はい!そうです!父のことを覚えていてくださったんですね!」

「いや、あの強烈な男は忘れられないぞ。旅の最初の方から最後までずっと付いてきたよな。後半にパーティーに加わった奴なんか、同じパーティーのメンバーだと思ってたぞ。」

「そうねえ。戦闘の時はさすがに隠れていらしたけれど、それ以外はずっと一緒でしたもの。それに、彼は所々の事実を見繕って勇者物語を刊行してくれたわ。」

「ああ、うまい具合に秘密にしておきたいところはぼかしてな。ああいう文才は俺らの中で持ってる奴はいなかったから助かったよな。」


ストーカーなのに、感謝されてる。マーレイさんのお父さんってすごいな。

お読みいただきありがとうございました。

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