第4話 呪いのエルフ、配信デビューをする
突如、眼鏡をつけた側の視界が一部乱れる。そこに、見覚えのある銀髪の姿が映って、ようやく事態を理解した。
小鳥が観る景色が、片眼鏡に映る。見えたのは、私の姿だ。
「へえ~、本当に私が映ってるね」
どういう仕組みになってるんだろう。小鳥を覗き込んでみたけど、何もわからなかった。
と、そこで視界の端に何かが蠢いたのを捉えた。
《キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!》
《デッッッッッッッッッッッッッッ!!?》
《かわいい!!》
「え? え?」
視界に映る私の、その手前に文字が流れていっている。慌てて手を振るけど触れることもできないから、きっとこれはさっきニドゥカが言っていた配信画面に映ったモノなんだろうと、ぼんやり理解した。
『――今ギルハは配信に乗ってる、っぽい。オレは画面が観えてねえからちゃんと映ってるか知らねえけどな。この国の王が前もって色々準備してたから、ちゃんと成功してるんだろ。……配信プラットフォームは大手配信サイト。対象は日本って場所で、言語は日本語。まあその小鳥を通してなら、どんな言語も相互に自動で翻訳されるけど。で、その画面に流れてる文字列はコメントって言って、この配信を観てるヤツが感想とか、ギルハとコミュニケーションを取ろうと打ち込んでるんだよ』
『――えっと、ニドゥカ? なんで喋らずに魔術で会話してるの? 近くにいるんだから一緒にお話ししよう?』
『――バカ。せっかくのデビュー配信で、ペアでもないのに他人と映るヤツがいるかよ。今はオマエが主役だ。オレは画面には映らないで、こうやってオマエに指示を出すからそのつもりでいろよ?』
『――そんなあ』
『――ほら、せっかく他の人に観られてんだ。あんま待たせんなって』
『――で、でも何を言えば……』
『――最初は自己紹介からだろ。後は、まあコメントを上手く拾って、会話を広げるんだな』
そう頭の中に流れるニドゥカの声が強制的に打ち切られて、私は絶望する。寄る辺もなく、しかし流れていくコメントがチラつく中、どこにも逃げ場はないのだと悟った。
コミュニケーションは苦手だ。これまでのエルフ生で会話らしい会話をあまりしてこなかったし、そもそも相手が何を思っているのか。自分のことをどう考えているのか。下手なことを言って傷つけないか、雰囲気が悪くならないか、考慮することが多すぎるから、それが怖くて竦んでしまう。
けど。
目の前には誰もいない。会話相手は映っていなくて、目も合わないし雰囲気が悪くなることだってない。
いるのはただ、粘土細工の小鳥だけ。私はそれを真っ直ぐに見つめて、戸惑いながらも元気よく声を出した。
「えっと、初めまして! エルフのギルハって言います! これからよろしくお願いしますね!」
こうして私の、明日を生きるための配信活動が、幕を開けた。
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