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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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瑛子の修行

いよいよ修行、でもその前に。

孝太郎の勤務先では、極秘案件とされた、

ホイ王子の倭の国への訪問に関する、事前打ち合わせが水面下で進んでいた。


家族にも言えないこの最高機密事項。

孝太郎は多少のストレスを抱えながら、担当者として準備に追われていた。


完全極秘のこの件は、「G案件」と呼ばれていた。

フィル・グレン侯爵、そのグレンからとったイニシャルだ。


テレーザに続いて、こんどはホイ王子。

今年はどうしたというのだ。

普通に暮らしていれば生涯会うこともない、5大王国の王族に立て続けに二人も接点を持とうとは。


もう毎日家に帰ることにはクタクタだ。

それなのに、家事の分担をこなさなければならないなんて。

孝太郎の歯ぎしりが、だんだんと増えていた。


そして、

いよい瑛子の修行が始まった。


テレーザは日の出とともに修行を始めたい、と希望したが

家族から却下された。


「ママが起きる時間に私も起きるの!日の出とともにって原始人なの?」

と葵がぼやいた。


「朝陽のパワーをもらいたいのよ、すごい力なのよ、何なら葵もどう?」

とテレーザも引かない。


テレーザは瑛子の修行を決意して、オルト爺と婆を訪ねることにした。

ここ、倭の国でテレーザの正体をきちんと知っているのこの老夫婦だけだ。

テレーザの持つ能力もこの二人は把握している。


テレーザは一人でオルト爺の家を訪ねた。

尊や葵が付き添うと申し出たが、断った。


ここに来てから、一人で出かけるのははじめてだ。

まあ、ノジマの診察を受けた際、病院から逃げ出しひとり街をさまよったことはあったのだが。


そして、美の国でも外出の際はいつも付き添いの侍女がいた。

一人で行くのは、王宮奥にあるベルデの森、そのダイナ夫妻の小屋くらいだ。

しかし、これはあくまでも表向きには、なのだったが。


「本当に一人で大丈夫?」


「バスに乗って行くんだよ、乗り方わかるよね?」


「迷ったりしたら、すぐに連絡して」


尊や葵以外の皆も、心配そうに色々と言う。


「大丈夫ですって、私だって一人でバスくらい乗れるもの」

とテレーザが自信ありげに言うが、


「でもさ、バス乗ったこと、ないよね?」

と葵。


「美の国は馬車だから、乗合馬車っていうのか、それもないんだろ?」

と尊。


「乗合馬車、なんですか、それ?」

とテレーザが言う。


「だよな、乗合馬車なんか姫君は乗らないよな」

と駆。


「タブレットのナビゲーション機能を最新にしておいた。

これを頼りに行くといい。ナビの誘導通りに行けば、迷うことはないよ」

と尊が言いうと、


「まかせてください。大丈夫、無事に着くから」

とテレーザが言い残し、家を出た。


「タブレットを持っていれば、テレーザの居場所は把握できる。

万一迷子になっても安心だ」

と尊が言う。


以前は、タブレットを操作しないと位置情報が更新されなかったが、

リアルタイムにテレーザの居場所がわかるように改良されたのだ。


「でもさ、一歩間違えばストーカーだからね、それ」

と葵が釘をさす。


「もちろん、もしも、に備えてだ。四六時中見張っているわけないだろう」

と尊の言い分は少し歯切れが悪い。



「おお、テレーザ、よく来たね」

ナビの誘導もあり、無事にオルト爺の家に着いた。


「一人でバスに乗って来たのよ」

とテレーザ。

その顔はかなり自慢げだ。


初めてのバス。

こんな乗り物は美の国にはない。


運転手が一人で大勢の客を運ぶ。

それがバスだ。

乗る時に、コインをひとつ、運転席の横にある箱に入れる。


幾つかのバス停に止まりながら、オルト爺の家付近までやってきた。

降りるときには、席の上側に付いているボタンを押す。


「ピンポーン」

と音がして、その次のバス停に止まるシステムだ。


なんて画期的な乗り物なんだろう。

美の国でも採用すればいいのに、

一瞬、そう思ったテレーザだったが、すぐにもう自分は二度と美の国に戻ることはない、

と心のどこかで感じていた。


「そうか、お前さんが一人でバスで。

すごいな、明日の王室新聞の一面だ」

とオルト爺が笑った。

テレーザが美の国の事を一瞬でも考えたのがオルト爺には筒抜けだ。


「さあ、まずはお茶でも」

と婆が言う。


テレーザはオルト婆の入れてくれた紅茶を飲みながら、

ここに来た理由を話した。


瑛子の秘めたる力を引き出したい、と。


「おお、お前さんが誰かに対して何かしようとするとは」


「修行なんて堅苦しく考えないで、良いところを目覚めさせてあげる、それでいいのよ」


とオルト夫妻はテレーザに言った。


「相手の心に語り掛けるの、もちろん心の中でね。

そうすれば必ず応えてくれる。あなたにはそれだけの力があるわ」

とオルト婆が言う。


「そうだな、おまえさんの魔力は創造と復元、

それを持つ者なら、できるはずだ。

なんせ、おまえさんはダイナの愛弟子だ」

オルト爺がいうと婆も頷いた。


美の国、最高の王宮魔法使と言われたダイナ夫妻。

それが、テレーザの指導のため、あっさりと引退し表舞台から姿を消した。

テレーザの秘めたる力を見抜いていたからだ。


「われわれの王女はものすごい、とんでもない逸材だ」

と、ダイナ夫妻はオルト爺婆に手紙を送ったことがある。

そればまだテレーザが幼い頃だ。


「この子の将来が心配だ。

我々は、命を懸けて王女を守り、導かなければならない」

その手紙はそう結ばれていた。

ダイナ夫妻にはまだ幼いテレーザのみらいがみえていたのかもしれなかった。

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