瑛子、改造計画
魔法使いはメンドクサイ?
「私には生まれつき魔力があるのだけれど、王家の人間は魔法使いにはなれないし、
魔法を使うこと自体、ご法度だからずっとその力を抑えていたの。
魔力を持っていることも、対外的には秘密にされていたわ、隠してたのよね。
魔力もちの王族なんて、異端児扱いだもの。
それを見た宮廷魔法使いがこっそり私の魔法を教えてくれたの。
力を溜め込まないようにって。
それが創造と復元、私の能力よ」
とテレーザが自分の力のことを説明した。
かつて、王宮で幼いテレーザが魔力を持っていることが問題となった。
しかし王も王妃も、
「あの子は王位継承には無関係だからほおっておけばいい」
と無関心だったが、
それは、
「魔力を封じ込めよ」
という意味でもあった。
テレーザは幼少期からあまり感情の起伏がなく、激しく怒ったり泣いたりすることが少なかった。
それでも、たまには小さな子ども特融の癇癪を起すこともあり、そのつど魔力が暴発していた。
魔力はその持ち主と同等のエネルギーを持つ。小さなころはほんの小さな魔法の暴発だったが、
4,5歳になるころにはかなりの威力になっていた。
このままではいつか大きな暴発を引き起こすかもしれない。
侍女のレイアはそう気を揉んでいた。
そんな時、テレーザの様子をみた宮廷魔法使い、ダイナ夫妻がテレーザに魔法の使い方を教えたい、
と申し出たのだ。
そのためにダイナ夫妻は第一線の宮廷魔法使いを退いた。
テレーザに魔法を教える、これは極秘に進ませねばならないことだから。
隠居を宣言し、王宮の奥、ダイナの森に丸太小屋を建て、森の番人として移り住みそこでテレーザに魔法を教えたのだ。
幸い、隠居した魔法使いに感心を示すものはおらず、またテレーザの動向も全く注視されておらず、
毎日のように森の奥に通うテレーザが宮廷で話題に上ることはなかった。
「それが王国の習わしなのよ、美の国だけじゃないわ」
自分の持つ魔力について一通り説明を終えたテレーザがため息をつきながら言った。
それを聞いた、みなは何と答えて良いのかわからない。
自分たちとはかけ離れた世界の話だ。
「王国って面倒なんだな」
やっと尊が言った。
「王族も、でしょ」
と葵。
ここ、倭の国では魔法使いの数はあまり多くない。
人種的に魔力を持たないものがほとんどだからだ。
異国からの移民、異国人との間に生まれた子供などが、稀に魔力を持って生まれてくることもあったが魔力を持つこと自体がごくまれなのだ。
そのごくわずかな魔力を持つ者には国が特別機関で養成をした。
しかし、魔力ほどではないが潜在的な能力を持つもの、
それは一定数存在する。
倭の国の極秘機関がその能力の把握と監視を強化し始めている、
と孝太郎は自分の勤める機関で聞いていた。
「でさ、テレーザが美の国で魔法を習った、創造と復元ってのを。
それはわかった。
それがね、ママのために何かになるの?」
と葵が言った。
母の日の食事会、話題はあらぬ方向へと進んだ。
瑛子がだっさい、という家族。
美しい、と言うテレーザ。
両者の対立だ。
「私が、瑛子さんの美しさを引き出すわ。そしておじ様とデートするのよ」
とテレーザが言った。
「デート?」
「だって」
「おかんとおとんが」
葵も、尊も駆もポカンとしながらつぶやいた。
孝太郎も、
「なんだ、デートだなんて若いもんでもないのに」
とぶっきらぼうに言う。
「でもさ、パパとママ、植物園に行ってたんでしょ、それだってデートじゃん」
と葵。
「あれは、瑛子を家にいないようにするための、成り行きだ」
と孝太郎。
「あら、私はお父さんと久しぶりに出かけて、とても楽しかったわよ」
と瑛子が口を挟んだ。
瑛子は自分が散々に言われていても、気にしている様子はない。
むしろ、家族の言い合いを面白がっているようだ。
「まあ、その身なりちょっとは気を遣えば少しはマシに見えるんじゃないの?」
と駆が言う。
また瑛子の蒸し返すように瑛子のあら捜しをしている。
「おじ様、瑛子さんのお洋服、私が買ってあげたいの、わたしのグールブ金貨を買い取っていただけないかしら。あれ、使わない方がいいでんでしょ。だから」
とテレーザが言いだした。
「おいおい、瑛子に洋服だって。それもグールブ金貨だなんて。いくらになるんだ。
きみは内面の美しさを引き出せると言っていたね、ならば洋服など気にしないのではないかな?」
と孝太郎。
その言葉に言い返せないでいるテレーザ。
そうだ、私の能力。
引き出す力。
「じゃあさ、これ、どうかな?」
と葵がスマホの画面を見せた。
「倭の国、ビューティーコンテスト、マダム部門、参加者募集」
そんな画面が表示されていた。
ファンタジーワールドで行われている最高位のコンテスト、
それは「姫君格付けランキング」だ。
それを模倣するようなコンテストがあらゆる国で行われている。
ここ倭の国でもだ。
ビューティーコンテスト、という名で毎年開催されている。
キッズ部門、学生部門、ミスコンテスト、そしてマダム部門にシニア部門。
「いいわ、マダムコンテスト、出ようじゃない」
とテレーザが言い放った。
その言葉に瑛子が初めて焦った表情を見せたが、テレーザの目にはまったくはいっていないようだ。
「さあ、やるわよ」
と拳をあげるテレーザ。
その頬がうっすらと紅潮していた。
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