思わぬ展開
ハプニング多発の夕食なんとかデザートまで進みました
「いいな、一家団欒って」
そう言いながら笑顔のテレーザ。
この不穏で重苦しい空気、気まずい雰囲気。
それを全く気にも留めてはいないようだ。
「いいの?これが?」
と葵。
「これ、団欒じゃなくて、痴話げんかなんだけど」
と尊。
「でも、本音で話してるんでしょ、すごいなー」
とテレーザ。
テレーザが育ってきた特殊な環境は、みんなが理解をしていた。
それでも、驚かされることばかりだ。
「じゃあ、気を取り直して。
次はアントルコートのロティ ほろほろの実とレフォールの効いたジュ お出しします」
そういうと、フライパンからジュージューと音を立てている肉を皿に取り分けた。
そこに別鍋で作ったレフォールソースを添え、その上にほろほろの実をまぶす。
見た目も鮮やかで、食欲をそそる一皿だ。
それをテーブルへと運ぶテレーザ。
「なんだ、ステーキのことか」
と駆が言う。
「でもうまそうだな」
と。
「今度は取らないでよね」
と駆をにらみながら言う葵。
「あの、まだおかわりあるから、足りなかったら言ってね」
とテレーザが言うと、大きく頷いた駆が、皿の料理を頬張る。
「あら、これもお上品なお味だわ」
そういう瑛子。
これはテレーザのお気に入りの肉料理だった。
しかし、王女が肉の塊を食べるなど品がない、そう言う理由であまり王一家での晩餐に出されることはなかった。
しかし、料理長イーグルはテレーザが一人で摂る夕食の時、こっそりと用意してくれたものだ。
野菜も食べること、この約束を守るかわりに。
「テレーザもお肉好きなのね?
じゃあ、今度バーベキューしに行こうよ。なぎさ公園ってるじゃない、あそこなら道具貸してくれるし気軽にできるんだよ、バーベキュー」
と葵も肉を頬張りながら言った。
「行きたい!バーベキュー」
とテレーザが即答した。
「はや」
と尊。
「じゃあ、ちゃんと日にちを決めて準備をすること」
と孝太郎が瑛子に言った。
いつもの命令口調だ。
「さあ、次は最後のメニューになります。
デザートのメビアピーチとアールグレイのムースとリコッタのアイスクリームです」
ガラスの器にアイスクリームを盛り付けるテレーザ。
それにムースを添える。
見るからに甘く美味しそうなスイーツだ。
「ねえ、これで最後だったらテレーザも一緒に食べようよ。
料理と給仕と、大変だったでしょ」
と葵が言うと、皆も頷きテレーザの椅子を用意した。
少し戸惑いながらテレーザが椅子に座る。
自分のアイスクリームをもって。
「料理人は最後、誰もいなくなった調理場で残った材料で作ったお料理を一人食でべるんだけどな」
とテレーザ。
「そうなの?」
「初めて聞いた」
「どこの風習?」
「だってイーグルはいつもそうしていたもの」
とあれこれ言われたテレーザ言い返す。
「イーグルって?」
と葵。
「王宮の料理長よ。いつも私たちの食事を作ってくれていたの」
とテレーザ。
「さすが王室、専属の料理人がいるんだ。まあ当たり前か。うちでは母さんが専属の料理人だ」
と尊。
「私、母がお料理をしているの、見たことがないわ。
でも、姉や弟のお弁当は作ってたかな、視察に出かける時、馬車の中で食べられるようにって。まあ、容器に詰めていただけだけどね。それから私に作ってくれたことはないわよ。」
とテレーザ。
あまりにもあっさりと言うテレーザのその言葉に皆心がいたんだ。
「そう言えば瑛子さんもお食事を後回しにすることが多いですよね。
とくにおじ様がお帰りになると」
とテレーザ。
瑛子が食事と途中で孝太郎が帰宅すると、自分の食事を中断して孝太郎の事を優先する、
いつもそうだ。
それをテレーザは気にしていた。
その理由がわからなかった。
「だって、パパがお帰りだもの。お仕事の後お腹すいているでしょ」
と瑛子はいかにもそれが当然な言い方をする。
「でも今日はずっと自分のお食事を優先していただきたいと思っていました、でも」
とテレーザ。
でも、葵と駆の言い争い、バラの入れた瓶が倒れて水がこぼれた、
そして孝太郎の激怒。
その都度、瑛子の食事が中断された。
「それは仕方ないのよ。それが私の役割だから」
と瑛子が言う。
「そうそう、ママはみんなのためにいるの」
葵が言うと、
「だよな、俺たちの世話係ってやつだ」
と駆。
「まあ、世話になってます」
と言うのは尊。
「まあ、それはそうだが、主婦と言うのは家族のために尽くすのが仕事だ」
と孝太郎が言い切る。
「でも、仕事もしているけど」
と尊がいうと
「たかがパートだ」
と孝太郎が再び言い切る。
「それを言ったら、ねえ」
と葵が同意を求める、誰にとは言わないが。
「まあ、家事と育児と仕事、これで毎日てんてこ舞いの母さん、せめてもう少しおしゃれとかすれば?」
と駆が言う。
「そうだよ、洋服だってもっと気を使ってよ。
友達に見られたら恥ずかしいじゃん」
と葵も同調した。
「そうだな、これではどう見ても、ただのオバサンだ。」
孝太郎も言う。
小ばかにしたような言い方だ。
「瑛子さんはお綺麗だわ」
その会話を遮るようにテレーザが言った。
「心の底に光る輝きがあるもの」
と。
「お、文学的~、テレーザ」
と葵。
「本当よ、とても美しいわ。私なら瑛子さんの秘めたる美しさを引き出せる」
とテレーザが強気で言う。
「さすが美の国の王女」
とからかうように尊が言う。
「えーなんだよ、このおばさん、どうにかできんの?」
と駆が挑戦的に言う。
「出来るわよ、私」
とテレーザははっきりと言い切った。
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