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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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それくらいで、

学校は楽しかったようですね

「私、褒められたんだ」

中学校からの帰り道、改めて思うテレーザ。

なんだかじわじわと嬉しさがこみあげてくる。


「テレーザ王女は勉学に秀でていらっしゃる」

家庭教師がそう言ったが、


「フィオナ・クリスティーネの優秀さとは比べ物にならない」

と国王が一言。


「テレーザ王女は、お歌を唄うのがお好きでございます。

お好きなだけあって、なかなかお上手だ」

と音楽の担当が言えば、


「でもエミリアの方が数段上手いわ、あの子の歌はプロレベル、本格的に歌わないかと奏の国からオファーが来ているくらい」

と王妃が自慢げに言った。


父も母もそうやっていつもテレーザを認めようとはしなかった。

美しく、優秀な3人の姉、そして、何をしても許される天使のような弟。

そんな姉弟になかで、テレーザはいつしか、「褒められる」という感覚すら忘れてしまっていた。


家に帰ると、瑛子が出迎えてくれた。


「ただいま」

とう言うと、さっさと部屋に行く駆。

先ほどまでとは打って変わって愛想がない。


「おい、お前も言えよ、ただいま、って。ここに住んでんだろ」

何も言わず、靴を脱いでいたテレーザに駆が言った。


「あの、ただいま」

そう言い家に入るテレーザ。


「あれ、この靴は?」

テレーザが脱いだ靴を見て、瑛子が言う。


そうだ、靴を返すのを忘れてしまった、学校で借りた靴をそのまま履いて帰ってきてしまった。

テレーザは瑛子に事情を話す。


「じゃ、とりあえず葵のスニーカーを借りて、この靴は洗って駆に学校に返してもらいましょう」

と瑛子。


そう言いながら、瑛子は軽食を用意していた。

学校帰りのテレーザが小腹が減っているだろうから。


食卓で、瑛子の作ってくれたサンドイッチを食べながら学校であったことを話すテレーザ。

すごく楽しそうだ。


「初めてだらけなのね」

と瑛子はその話を聞きながら思う。


そこに制服から着替えた駆の合流した。

同じく、サンドイッチをつまみながら、


「数学では難問解くし、歌はうまいし、すっかり人気者だった」

と駆は言う。


食卓での話声が聞こえたのか、尊も部屋から出て来た。

食卓に座り、テレーザと駆の話を聞いている。


「でね、私、褒められたんです」

とテレーザ。

その顔はいかにも嬉しそうだ。


「またその話か、それくらいのことで、そんなに嬉しいの?褒められるってそんなに喜ぶこと?」

と駆が言う。


「当り前じゃないですか、それくらいの事、じゃないですよ。だって私、褒められたことないんだから」

とテレーザ。


「えー、お姫様なんだから周りからちやほやされっぱなしだったんじゃないの?」

と駆が言うが、


「まあ、私はいてもいなくてもいい存在だったので」

とさらりと言うテレーザ。


テレーザの事を、以前から知っている瑛子、そして家族構成を聞き、察している尊、

この二人は、テレーザが「ついでの姫」と呼ばれて疎んじられていたことをわかっていた。

が、駆にとっては王国の、しかも5大王国の姫君なら、超VIP待遇されていると信じて疑わない。


「王家の姫様のイメージ変わりそうだ」

と駆。


「そう言えば、学校では誰もお前が美の国の姫とは思わなかったようだな」

駆が不思議そうに言った。


「そのほうがありがたいです。テレーザ王女が表に出てはマズいので」

とテレーザ。


旅行者の事をあれこれ詮索はしない、自ら話さないことを聞かない、それが旅行者を迎える側の

認識だ。

自分から名乗らない限り、ここでテレーザが王女であると言う事に気付く者は皆無に等しいというわけだ。


「ま、おまえが王女だって、わかっていても姫様とか呼ぶ気になんないし。

ここではうちの居候、テレーザだ」

と駆が言う。


「イソウロウ?」

その言葉をタブレットで調べるテレーザ。


「え、私はそれなりの対価をはらって住まわせていただくつもりです。

道場のお掃除でしょ、それから」

と慌てて言うテレーザ。


「そんなことを気にしなくてもいいのよ、ここに居る以上、あなたはうちの子なんだから」

と瑛子が駆を一瞥しながら言った


「道場の掃除だけで、食費くらい稼げてるぞ、堂々としていればいいんだよ」

と尊も言う。


「冗談だよ」

駆はバツが悪そうにそう言うと、部屋に引き上げて行った。


「掃除だってしなくてもいいのに」

と瑛子。


「でもそれくらいはさせてください。

働かざる者、食うべからず、です」

とテレーザが言うと、


「お前が言うんか、なんか似合わない」

そう言って尊が笑った。


「お掃除、いつもすごく丁寧で、オオヤマさんたちも喜んでいるわ」

と瑛子が言う。


テレーザが道場の掃除をするようになって、なんだか道場に活気が戻った。

そんな気がする、とオオヤマは言っているのだ。


「また褒められちゃった」

とテレーザ。


「ここに居る間は、いくらでも褒めてあげますよ」

と瑛子。

瑛子には、テレーザが今まで過ごしてきた境遇を察することが出来た。

大国の王女とはいえ、大切にしてはもらえない存在。


実際、テレーザから、家庭のぬくもりを感じたことは今まで一度もない。

父と母からあふれる愛情を注がれたように見えとこともない。

何事においても、どこか他人事で、何も感じないように心を制御している。


「では、さっそく道場のお掃除をしてまいります。

みなさんが喜んでくださるなら、お掃除のし甲斐があるぅてものだわ」

そう言うと、テレーザは席を立った。


「あいつ、そんなことで喜ぶんだ」

と尊。


「そんなこと?テレーザにとってはとても大切なことなのよ」

と瑛子が言った。


道場に向かうテレーザの瞳が少し潤んでいたのを、瑛子も尊も見逃しはしなかった。


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