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温度差

エマの周囲との軋轢?

エマがテレーザ王女の特別な存在(大切な侍女)となってしばらくが経った。

いつもテレーザ王女の側にいるエマ。


かつて寮で同室だった仲間と宮殿内で出会うことも多々ある。すれ違い程度だったり侍女としての打ち合わせだったり。

が、しかし、だれもエマに話しかけてはこない。

エマの方から挨拶をしても、ぎこちなく会釈を返されるだけだ。


ある日、ルナ・ルイーズとエマは広間で鉢合わせた。

ルナは第一王女、フィオナ・クリスティーネの侍女としてそこにいたのだ。


テレーザ王女の側にいるエマ。

ルナが仕える、フィオナにも二人の特別な存在(大切な侍女)がいるが、その両名はルナからしてみれば同じ侍女とは思えない遠い存在だ。


その二人と同等の立場にいるエマ、王女と同列に並び、王女と一緒に移動する、一歩後ろに下がることもしない。

そして、テレーザ王女が親し気にエマに話しかけ、そしてエマも当たり前のようにそれに答えている。


ついこの間まで、自分と同じ新入りだったのに。

辺境の小国から来たばかりの、田舎娘だったのに。

自分は未だに、お仕えしているフィオナ・クリスティーネ王女と直接話をしたことなどない。

それどころか、フィオナ王女は自分の名前も知らないだろう。


「なんで、あの子ばっかり」

とルナ・ルイーズが思う。


エマばかりが優遇され、いい思いをしている。

自分は王都クラウディアータの出身なのに、高貴な家柄の娘なのに。


嫉妬心が大きくなるばかりだ、

しかし、それをあからさまに態度に出すわけにはいかない。


「でも、テレーザ王女の特別な存在(大切な侍女)よ、

あの、ついでの王女、の。羨ましくなんかない、妬んでなんかいない」

とルナ・ルイーズはそう思って心を鎮める。

それしか、落ち着かせる方法がわからないのだ。


それに、その日広間で行われたのは週に一度の定例である「報告の儀」

フィオナ・クリスティーネ王女の功績はいくつも報告されたが、テレーザ王女に関することはなにもない。

それどころか、テレーザ王女の関わって案件の芳しくない結果がついでのように発表された。


「やっぱりついでの王女よ」

とルナ・ルイーズ、


テレーザ王女はその不評な発表を聞いても、落胆することもなく平然としている、その姿を見ながら、

「羨ましくなんか、ないわ」

とつぶやくルナ。


報告の儀が終わると、まずは王族が広間から退出する。

その様子をひざまずきながら待つのが侍女としての慣例だ。


が、エマはテレーザ王女と腕を組み、王女と一緒に部屋出た。

これも特別な存在(大切な侍女)の特権なのだ。


同じく同室だった、アレクサンドラも多少の違はあれど、エマに対する気持ちはあふれ出す嫉妬心をなんとか押し殺している、そんな感じだ。

先輩のルイスとエレナもだ。


アレクサンドラはいつだったか、洗面室で偶然エマと鉢合わせした。

エマは嬉しそうに話しかけて来た、それなのに。

アレクサンドラは快く返事をすることができなかった。

少し顔を曇らせるエマ、しかしすぐに平静を装うとそのままアレクサンドラから離れて行った。


エマの後姿を見ながら、アレクサンドラはとても嫌な気分になっていた。

自分に対して腹が立っていた。

なんで、エマに冷たくしたんだろう、エマは今まで通りに接してくれたのに。


エマと自分の間には、もう埋まられないほどの温度差がある。

そう思った。

エマが今まで通りのエマであったとしても、もう自分はこれまでの様にはできない。

それだけの差があるのだ。



「ねえ、私の特別な存在(大切な侍女)になって、後悔していない?」

とテレーザがエマに聞いた。


「するわけないじゃないですか。もう聞かなきでくださいね」

とエマが答える。


テレーザはエマが周囲から浮いていることに気が付いている。

自分の特別な存在(大切な侍女)だから。


「王女たるもの、そんなことを気にしてはいけません。

私はこの栄誉を本当に誇りに思っていますから」

エマがテレーザを慰めるように言う。


この頃には、エマはテレーザ王女の特別な存在(大切な侍女)であるという自覚がはっきりと芽生えていた。

あくまでも、自分は王女に仕える侍女である、話し方も決して馴れ馴れしくなりすぎない。

そんな線引きをきちんとしたうえで、それでもテレーザはエマにとって、「親友」のような存在になっていた。



そんなある日、テレーザ王女の元に国王の側近がやってきた。


「王の部屋にお越しください。王よりテレーザ王女に大切なお話がございます」

と。

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