Task2 準備を整え、街に向かえ
パンティ・スーは、西大久保の村から東大村の街にやってきていた。数多くの建造物が建ち並び、広場では多くのプレイヤーが露店を開いていて、さらにその露天をのぞくプレイヤーも数多くいる。このゲームでは、露店を開くだけなら特にスキルなどは必要ない。
「賑やかなものだな……」
ただし、思い描くのは、あのプレイヤーやこのプレイヤーがどんなパンティを履いているのだろうかということだけである。
はっきり言わなくても最低である。
プレイヤーは、ファンタジーの正統派の鎧やローブを着た人々が半分程度、残り半分はビジネススーツやビキニ、熊の着ぐるみ、宇宙服、メイド、和服、チャイナドレス等々の好き勝手な格好をしている。こうしてみてみると、なかなかのカオスっぷりである。
パンティー・スーは、街で一番高い場所、教会の屋根の上にいた。隣には、大きな鐘がある。
依頼内容は、通称聖女と呼ばれるプレイヤーの撃破である。先ほどとの少女とのやりとりを思い起こす。
―聖女は、恐らくチートをつかっています―
―あれだけ強力で多彩なスキルと魔法を使いこなすなんて、廃人プレイヤー程度では、説明がつかない―
―決して、チヤホヤされてうらやましいなんて思っていないんだから! 勘違いしないでよね! ―
最後の台詞は、ハンカチをかみしめながら言っていた。
パンティ・スーも、実際に何人かのプレイヤーから聖女の情報を聞いて裏取りをしたところ、確かにチート級に強いプレイヤーであるらしい。最も、装備品によって補っているのではないかという意見もある。
だが、実際のところ、どうかなどは関係ない。自分は、パンティを稼ぎに来ただけなのだから。
問題は、神出鬼没な聖女をどう探すかであるが、彼は、聖女を探すよりも、おびき寄せることにした。おびき寄せるための準備は整っている。
パンティー・スーは、拳で思い切り教会の鐘を殴りつけた。
ゴーン!ゴーン!ゴーン!
街中に鐘の音が響き渡る。本来なら、1時間ごとになる鐘が、唐突に大きく鳴ったものだから、プレイヤー達は思わずに教会の屋根を見た。
やがて、鐘の音が収まると、パンティ・スーは一つの宣言をした。
「プレイヤー達よ! 私は、今、エレメンタル・ティアラを持っている! 」
その発言に、プレイヤーの多くがどよめく。なぜなら、イベント限定のレアアイテムだからだ。見た目も荘厳で美しく、装備すればパラメーターを二倍にすると言う破格の性能を誇る。ただし、女性プレイヤーしか装備できないが。
「見事、私を倒して見せよ! 倒した者にエレメンタル・ティアラを進呈しよう! 」
プレイヤー達がどよめく。既に、イベントでの入手は不可能とされ、唯一手に入れる方法は露店などで購入するぐらいしかない。しかし、購入するぐらいなら、別の装備品を整えた方がいいぐらいには値が高い。
「なにそれ? イベント? 」
「GMじゃなないよな? 何者? 」
「非公式イベントかな? 」
「やっべー、ほしい。超ほしい」
「倒して売ろうぜ」
「真っ赤だから、速さ三倍? 」
「おーい、ギルメンに連絡して」
「おうどん食べたい」
パンティ・スーは、教会の屋根から降り、壁を走りながら地上にたどり着き、そのまま広場の中心に走っていく。超人的な身体能力を見せつけていた。
「やべーよ壁走りだよ」
「忍者? 」
「OH! 忍者! 」
「おうどん食べたい」
再びのどよめきを気にすることもなく、パンティ・スーは走っていく。何人かの女性プレイヤーとすれ違っていくときに、手を一閃していく。そうして、広場の中心にたどり着き、立ち止まる。その両手には、色とりどりの小さな布切れが大量に持たれていた。
パンティである。
「え? 」
「は? 」
「嘘!? 」
「ま、まじ。えー! 」
「え、いや、ちょっと、いやー! 」
「取られた! 」
「変態! 変態! 変態! 変態! 」
「変態だー! 」
「死ね! まじ死ね! 」
「通報しろ通報! 」
「最低! 」
「死にさらせ! ワレェ! 」
「つけてない、はいてない! 」
「すっごくスースーする」
「いやー。キャー! 」
「おうどん食べたい」
阿鼻叫喚の騒ぎであった。女性プレイヤー達が、股間を押さえながら顔を真っ赤に赤らめている。
パンティ・スーは周りの騒ぎなど意にも介さずにウロボロスの指輪にパンティを収めていく。ウロボロスの指輪は、元の世界に戻るために必要なものであるが、アイテムボックスとしても使える。その容量はおよそ、桐タンス二つ分。
だが、ふとパンティ・スーの手が止まった。赤いレースのパンティを手に取った瞬間にそのパンティを捨てた。あの、パンティ・スーがパンティ・スーがパンティを捨てた。
ズカズカと股間を押さえる女性プレイヤー達に向かっていく。パンティ・スーが歩き出した瞬間に、女性プレイヤー達がズサァと引いていく。まるで、モーゼである。
そして、一人の金髪ロリ巨乳のプレイヤーの前に立ちはだかる。
「な、なんだ!? パンティ返せよ! 」
「貴様、ネカマだな!? 」
「な、何のことだか」
金髪ロリ巨乳の目が泳ぐ。
「私の嗅覚を侮るな」
パンティノーズによって、パンティの匂いから性別を見抜いたのである。
説明しよう、パンティノーズとは、パンティにだけ犬並みの嗅覚を発揮するのである。
「ネカマは死ね! 」
パンティ・スーの怒りの鉄拳が炸裂した。金髪ロリ巨乳は、数十メートルほど吹き飛ばされていった。
「全く、性別を偽るなど。はた迷惑にも程がある」
はた迷惑の中心人物のお前が言うなである。
そんなパンティ・スーには、大量のプレイヤーが向かってきていた。
「面白い。女性のパンティを奪い尽くしてくれよう」
パンティ・スーが、大量のプレイヤーを前に、指をポキリと鳴らした。