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3、河童、泥の底を覗く

今回からまた河童くんが登場です!

麗らかな日の午後、一人の青年が若干挙動不審になりながら商店街を歩いていた。


(…きょきょきょ、今日こそは…!!)


心の中でも挙動不審な彼の正体、それは河童だ。スラリと高身長な体をTシャツとジーンズというシンプルな服装で包み、黒いキャップとマスクをつけ、少し長めの黒髪で表情を隠した、誰がどう見ても立派な不審者である。そんな怪しい彼が向かっているのは、この商店街にある彼の行きつけの店、八百屋だ。河童の彼は例に漏れずきゅうりが大好き。週に2回ほど足を運んでいたのだが、ここ数年ほどはほとんど毎日顔を出している。その理由、それは八百屋の看板娘にある。


(僕が誘っても変に思われないだろうか…嫌がられないだろうか…)


そう、彼はある日八百屋の看板娘に一目惚れをし、一目でも会いたい、一言でも言葉を交わしたい、と日参してる次第である。数年間、短い時間とは言えほとんど毎日顔を合わせているのにも関わらず、未だに挨拶くらいしかまともにできない純情ボーイなのだ。


(…でも。)


彼は突然歩んでいた足を止め、足元を見つめる。


(…僕なんか。)


じわりと河童の周囲の湿度が上がる。彼はとんでもなくマイナス思考であり、色々と思い悩んでしまうタイプであった。路上でうじうじ悩んでいる為、通行人が迷惑そうに河童に目をやる。しかし彼がこんな風になってしまったのには彼なりの理由がある。




それは彼が幼少期の頃まで遡る───




彼の生まれは秘境も秘境、森の奥地の、そのまた奥地にある河童の里である。そこは村とも呼べるような規模で、今や絶滅危惧種である河童がひっそりと暮らす秘密の場所であった。各地にはまだ他の河童の里があるかもしれないが、人間に見つかるリスクを負ってまで交流はしたくないというのが里の総意だ。その為か非常に閉鎖的で、変化や他と違うことを忌避する土地柄である。


その里に河童は産まれた。彼は里一番と言われた美人の母と、里でいちばん強い兵長の父との間に産まれた。上には優秀な兄と美人な姉がおり、末っ子の彼も里の期待を一身に受けていた。待望の子は、真珠のような皿に濡れ羽色の髪、そして目鼻立ちは母に似て器量よしとくれば家族も、そして里の皆も大層喜んだそうな。


そんな愛され望まれてきた彼が変わったのはいつの頃だったか。彼が物心ついてから数年後、その日も彼はいつもの様に里の子供たちと共に川上の方へ水浴びに出掛けていた。河童にとって水浴びとは大切な行為であり、幼い頃から川に親しむことによって水に慣れ、泳ぎを覚え、川と共に生きるモノとしての心構えをするという、ある意味では河童にとっての幼児教育とでも言うような代物であった。彼は一休みしようと川から出て、川辺でのんびりしていたら子供が一言。


「なんかおさら、ちっちゃくねぇ?」


言われたことが理解できずきょとんとしていると


「あ!ほんとだ!ちいせぇ!」

「オレのよりちっさい!」

「ぼくのおとうととおなじくらい!」

「へんなのー」


子供特有の残酷さとでも言うべきか、歯に衣着せぬ物言いで次々と言葉を投げかける子供たち。それは更にヒートアップし、次第に笑いと、からかいと、侮蔑が入り交じったものになってゆく。


「おさらちいせえのってかっこわるいんだぜ!」

「そうだよ!とうちゃんもいってた!」

「かっこわるー」

「へんでかっこわるい!」


居た堪れなくなった彼は、目に涙を浮かべ家の方へ走り去ってしまった。実は河童における美醜には、明確な“決まり事”があった。雌は皿が白く、目鼻立ちの美しいもの、雄は体格が立派で、何より皿が大きいものが好まれる。つまり彼は里の中では美しいとされる基準から外れてしまっていたのであった。


泣きくれる彼を慰めながら話を聞いた母は一言。


「おかあちゃん、雌に産んであげられなくてごめんねぇ…」


と、目に涙を浮かべながら必死に謝ってきた。皮肉にも彼の真珠のような皿と母に似た器量の良さは、雌の美人の条件だったのだ。それから、彼はその皿と顔を隠すように生きてきた。時折里の皆からの、侮蔑の言葉を聞きながら。そんな里にいたくないと、独り立ちを期に人間の街へと越してきたのである。




───だから彼は今日もキャップを被り、マスクをつける。こんな自分は嫌だと自己嫌悪に陥りながら。そして今日もまた()()()のいるBARへと足を向けるのだ。彼女から買ったきゅうりの袋を握りしめて。







まゆみ「河童くん!大変だったんだねぇ(涙)」

河童「…いや、黒歴史過ぎて…(恥)」

まゆみ「大丈夫!白で挟めば黒もひっくり返るよ( *˙ω˙*)و グッ!」

河童「…???」


男「(…そういや最近やたらオセロのアプリにハマってたな)」

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