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第八十三話

今日は二話更新します。

こちらは二話更新の一話目です。

 「私が断罪されれば貴女が勝彰を幸せにする」


 「シナリオを受け入れれば未来は約束される」


 「このままだったら勝彰を不幸にしてしまう」


 「そんな未来は要らない欲しくない許さない」


 「だから私は断罪されなければいけないのよ」


 予想外の言葉に真っ白になってしまった私にかまうこと無く玲奈さんの言葉が連続して叩きつけられる。

 玲奈さんは言った。そうすれば成松君が幸せになれるんだって。そうすれば・・・どうすれば?嫌がらせ?違う、断罪されればと、シナリオを受け入れればと言った。そうすれば成松君を幸せにしてくれる。誰が・・・貴女が・・・私が?

 玲奈さんがシナリオ通りに悪役令嬢として断罪されるなら、私がシナリオ通りに成松君と結ばれるなら、幸せな未来が約束される、ゲームのエンディングみたいに。


 「・・・それ、本気で言っているんですか?」


 「本気じゃなかったらそんなことするわけないじゃない」


 玲奈さんの視線が私の右手に注がれると咄嗟に包帯に包まれた右手を隠す。隠す必要なんて全く無いのにどうしてそうしてしまったのか分からない。


 「玲奈さんが断罪されたからといって、私が成松君と付き合うことなんてありませんよ」


 「勝彰のルートに入っている以上、勝彰が貴女に好感を持っているのは間違いないわ。貴女だって勝彰の事は嫌いでは無いのでしょう?だったら問題ないじゃない。ねえ、いいでしょう、このまま貴女と勝彰が結ばれれば二人は幸せな未来を迎えることができるんだもの」


 成松君の事は嫌いではない、どちらかでと聞かれたのなら好きと答えるだろう。「キュンパラ」を買ったのもパッケージに描かれていた成松君が目当てだったし、転生した今でも時々見惚れることもある。入学前に心配していた性格だって、この世界では気さくで優しくて、好きになる要素は沢山ある。私が成松君に恋をする可能性は決して低くは無かったと思う。

 このまま玲奈さんを悪役令嬢として断罪して、学園から追い出して、そうして成松君と恋人同士になれば、シナリオに従って進めばその先に約束された幸せが待っている。


 「私と成松君が付き合って、恋人同士になって幸せになって、それで玲奈さんはどうするんですか!学園から追い出されて、悪者として後ろ指差されて、それでもいいって言うんですか!?」


 「良いに決まっているでしょう。このまま私との婚約関係を続けたって幸せになれる保証なんてどこにもないのよ?でも、貴方と結ばれれば幸せになれると世界が保証してくれているの、何を迷う必要があると言うの?」


 本気で言っているのかな?本気で言っているんだろうな。自分を不幸に陥れて、成松君のことを好きなればそれでいいって、この人は本気で言っているんだ。

 ・・・あったまきた!


 「言いわけ無いでしょう!玲奈さんを追い出して、ゲームのシナリオ通りに幸せになる?そんなことで!そんなことが、本当に幸せなわけないでしょう!あんまり私も成松君も、見縊らないでください!そんなことをしたって誰も幸せになんてなれません!誰にも祝福されるわけがありません!」


 「私には好きな人がいます!成松君じゃありません、他の人です!成松君と付き合えば絶対に幸せになれるって言われたって諦めることなんてできません!その人以外の事を好きになるなんて出来ません!」


 「じゃあ、どうすればいいって言うのよ!貴女と結ばれれば勝彰は幸せになれるのよ!?だったら──「玲奈さんが!」


 「玲奈さんが、幸せにしてあげればいいじゃないですか」


 なんでこんなに拘るんだろう、なんでこんなに恐れるんだろう、この世界がゲームじゃないって、違う結末を選び取れるって、私に教えてくれたのは玲奈さんじゃないか。

 

 「だって、分からないのよ、もうどうすればいいのか分からないの・・・」


 「分からなくたっていいじゃないですか、この世界がゲームとは違うって教えてくれたのは玲奈さんじゃないですか、この世界が現実だって言ってくれたのは玲奈さんですよ、現実なら先が分からないのなんて当り前じゃないですか」


 膝からくずおれて肩を震わせる姿にいつもの大人びた様子は一切なく同い年の女の子にしか見えない。今にも消え去りそうな彼女は背後から自分に呼びかける声に肩を跳ねさせると少しの間をおいて立ち上がり体を向ける。


 「勝彰・・・、話は聞いていた?華蓮をいじめていたのも階段から突き落としたのも主犯はこの私よ、このような卑劣な行いをする女が成松の家に相応しいとは思えないわ、婚約は解消ね」


 「玲奈は・・・本気でそれを望んでいるのか?」


 「当然よ、勝彰だって不幸にするかもしれない女よりも、幸せになれる女を選ぶでしょう?」


 まだそんなことを言って!ってカッと頭に血がのぼるけれども震える姿を見てすんでのところで言葉を飲み込む。それに、今は私が口を出す場面じゃないと思うから。


 「そうか・・・、分かった。だったら玲奈の言う通り、今の婚約関係を破棄しようか」

お読みいただき、ありがとうございます。

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