表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/119

第四十四話

先週はインフルエンザのせいで更新できず申し訳ありませんでした。

熱も下がったことですし更新を再開していきたいと思います。

生まれて初めてインフルエンザに罹りましたが結構苦しいものですね。

皆さんも健康には十分にご注意してください。

 私には玲奈さんの考えていることがよくわからない。

 確かに成松君は「キュンパラ」というゲームの登場人物で、場合によっては私はその彼と恋愛模様を演じることもあったかもしれない。

 ゲームのファン心理としてはその光景を見てみたいという欲求も分からないではない。私だって入学当初はゲームに纏わる色々ないざこざに巻き込まれたくはないと思いつつもゲームの中で展開されていたであろう場面の数々は見てみたいなどという思いも少なからず抱えていたし。

 でも、この世界はゲームの世界とは全くの別のものだ、と私に断じたのは玲奈さんだし、実際に成松君を取り込まんとする親族たちを蹴散らかしゲームとはかけ離れた状況を作り上げてしまったのも当の玲奈さんなのに。

 それなのに度々こうして私に対して”攻略”してみたらどうかと持ち掛けてくる、しかも自分の婚約者まで含めて。

 その言葉に私が唆されて本気にでもしたらどうするんだろうかと思ったんだけれども、案外それが狙いだったりして。ゲームの主人公に転生したからと言ってホイホイと玲奈さんの言葉を真に受けて婚約者に手を出すような人物だったのならゲーム内での配置よろしく苛めたおして潰すつもりだったとかね。

 ゲームの中の宇都宮玲奈が主人公に対してどんなことをしたかは知らないけれども、そのあたり玲奈さんだったらよっぽどうまくやりそうだしなあ。


 「華蓮」


 「玲奈お姉様、華蓮お姉様、お待たせしました」


 玲奈さんの発言の真意がわからずに少し考え込んでしまっているところを水着に着替え終わってやってきた双子に呼びかけられて意識が戻ってきた。

 双子の水着姿、那月ちゃんの方は更衣室で一度見ているのだけれど、花柄のセパレートには胸元にフリルがあしらわれていてほっそりとした那月ちゃんの可愛らしさをより引き立てている。

 一方の智也くんの方はというと、男の子らしく飾り気の少ない標準的なトランクスタイプの水着を履いていて水着自体に語るところはないものの、その体つきはというと来年度には高等部へと上がろうというのに筋肉がついているようには全く見えず、体毛は薄いというよりも無い。男性ではなくまさに男の子という表現がぴったりである。

 今日ここが貸切で良かったと切に思う、もしここに抑制の効かないお姉様方がいたらそのままお持ち帰りされてしまんじゃないかという危機感は全くの妄想ではないはず。

 何が言いたいかというと、二人とも控えめに言っても天使です。


 「さて、二人も来たことだし何して遊ぼうか。と、言ってもレジャープールというわけでもないし出来ることも限られているだろうけれど」


 「バレー」


 「ビーチボールを借りてきましたのでこれで遊びませんか?」


 既に空気を入れられてまん丸に膨らませられたビーチボールを差し出してくる智也くん、弱冠いつもより目が輝いている気がするけれどボール遊び好きなのかな。


 「定番だし、いいんじゃないかな。玲奈さんはどうします?」


 「私は遠慮しておくわ、激しい運動は苦手なの」


 そう言って傍らに置いてあった文庫本を再び手に取ってそちらに目を落としてしまう、ほんと何しに来てるんだ貴女は。まあ、プールサイドでそうやって寛いでいるだけで目の保養にはなってくれるからいいんですけれどもね。

 


 ひとしきりビーチボールでパスを回し合ったり追いかけっこしたり、普段の眠たげなどこかぼんやりとした雰囲気からは想像できないパワフルさを見せつける智也くんとその双子の那月ちゃん。

 その馬力に最初から最後まで付いていくことは適わず今はプールサイドで休憩中。双子はまだ元気に遊びまわっていてこれが若さか、などと一つしか変わらない年の差に戦慄を覚えてしまう。


 「玲奈さんは泳がないんですか?」


 「さっきも言ったでしょ、激しい運動は苦手なの」


 そうは言うものの玲奈さん、学園での運動の成績、悪くないどころか私よりも上なくせに。


 「本当に、懐かれたものねあの子たちに」


 「智也くんの方はわかりませんけれども、那月ちゃんの方は玲奈さんのおかげですよね?」


 「そうね、彼女の場合、ちょっとだけ事情があってね。貴女と知り合うことでガス抜きになれば、と思ったのよ」


 「ガス抜き、ですか?」


 「そ、私よりも貴女の方が彼女と話が合うと思ったから、なんせ私とあの子じゃ親子と言っていいくらいの差があったからね」


 ということは前世関連の事情かなにかでもあるのかな?変に重い事情とかじゃなければいいんだけれど。


 「そう警戒しなくても大丈夫よ、込み入った事情とか重い話とかじゃあ無いから。ただ、あの子の話に付き合ってくれればそれでいいのよ」


 「はあ、まあ、それくらいでいいのなら。那月ちゃんも智也くんも可愛いですしずっと一人っ子だったので弟妹が出来たみたいで嬉しいですから」


 玲奈さんは「あの子のこと、これからもよろしくね」と言い残して歩いて去って行ってしまったのだけれど。結局、一度もプールに入らなかったし本当に何しに来たんだろうね、あの人は。

お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ