第十九話
体調不良のため少し短めです。
「あれ、木下君も美術部に入ってたんだ」
何やら私が美術部に入部することがご不満のご様子ですが、私としては木下君が美術部にいる方が意外なんだけれども。
や、別に木下君が美術なんかと縁が遠そうだとかそういう意味では無くて、部活動に入部していること自体が意外だという意味だ。
学園が部活動を奨励しているとは言っても入部を強制している訳ではない、お坊ちゃんやお嬢様ともなれば習い事の一つや二つはあるだろうしその他でも多忙を極める人も居るだろうし、入部するしないは個人の意思に委ねられいる。
だから、殆ど毎日のように朝一の授業を寝て過ごすような授業態度の彼が、若しくは、殆ど毎日のように朝一の授業時間を睡眠に充てなければならない程に多忙を極める彼が部活動に入部していることが意外だって訳だ。
「・・・知らなかったのか?」
「知らないって何を・・・、って、木下君のこと?知らなかったよ、というか知っている方がおかしくない?」
内部組は中等部からの持ち上がりで基本的にそのまま中等部の頃と同じ部活に入部することが殆どの為、誰それがどこそこの部活に入部したなんて話題が上ることは滅多にない。だから、自分から調べないと誰がどこの部に入部したかなんて情報は知りようが無い。別に木下君のおっかけでもなんでもない私が知っていなくても当然のことだよね。
もしかして、私、木下君目当てで美術部に入部したとか思われてる?いやあ、それは言ってはなんだけどいくらイケメンとは言え自意識過剰というものじゃあ──
「いやあ、悪いねえ、昨日仮入部した子らがこの子目当てでさ、それで一悶着あってでね、それで不機嫌なんだよねこの子」
前言撤回、いやあ流石イケメンさん、いろいろと大変ですね。
「まあ、入部の動機自体は問題ないんだけどね、それも青春の形だしね。こっちとしては真面目に活動さえしてくれたら大歓迎だったんだけどね」
彼女たちはそうではなかったらしい。部活動よりも木下君に話しかける方が重要だったみたいであんまりにもうるさくするものだから、とうとう木下君がキレてしまいご退場願ったと。
「せっかくの新入部員だったのにね、この子ったらすぐに追い出しちゃうんだからさ」
「いいんだよ、あんなのに居座られたらうるさくて堪ったもんじゃない」
しみじみと勿体なさそうにしながらかいぐりかいぐりと撫でまわす部長さんの手をうるさそうに払いのけて悪態をつく、よっぽど腹に据えかねたのだろうか追い出して清々したと言わんばかりだ。
内部生だけであればお互いに付き合いも長いし、そもそも良いとこのお嬢様たちはお上品なのでこういった騒ぎは殆ど無いそうだけれども、外部生の入ってくる高等部はそうもいかないらしい。
その昨日の問題の子らも外部生だったとかで同じ外部生の私が仮入部してきたことで警戒の対象になったみたいだね。木下君にそういうミーハーな人間なのかと疑われてたと思うと正直ショックなんだけれども当人にとってみたら当然の警戒、か?いやいや、私がそういう性格だったのなら入学してから一月以上も経っているのだしとっくに突撃かましているでしょうよ。
「ほらほら、直もいつまでも仏頂面してないの、これから三年間やってく仲間なんだから仲良くしなさいな」
「ヨロシク、僕の邪魔だけはするなよ」
明らかに部長に言われて渋々といった感じでの挨拶で、なんともまあ小憎らしいといった風情だけれども、部長さんとのやり取りとセットで見るとそれも可愛げに見えてくる。先輩と後輩というよりは姉に頭の上がらない弟って感じだろうか。前世でも今でも一人っ子だったからこういう仲の良い姉弟って憧れるなあ、私も弟か妹が欲しかったなあ、・・・今からでも頼んでみたらいけないかな?あの両親の仲の良さならいけるかもしれないかな?
「あ、そうだ、どうせだし直に森山さんの面倒を見てもらおうかな」
「はあ!?なんでだよ!?」
「え?ほら、同じ一年生だし?」
「一年生なら他にもいるだろうが!」
「同じクラスなんでしょ?だったら猶更仲良くやんないと、じゃあヨロシク~」
もはや決定事項らしく木下君の猛抗議をものともせずにひらひらと去っていく部長、その間、私ずっと放置。
「ええっと、よろしくお願いします?」
「ちっ」
舌打ちしましたよ、この人。
異常に初期好感度が低い気がするけど本当に攻略の対象なのかこの人、いや攻略するつもりは無いのだけれども。こんな塩対応をものともせずに限られた期間で堕とすとか、考えてみればヒロインちゃんの鋼メンタル半端ないな。どんな相手でもその相手にとって最良の選択肢を選び続け、婚約者だろうとなんだろうと障害を全てはねのけて相手をモノにするのだ、正に恋愛無双。
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