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第十八話

 え、あれ?稔君・・・だよね?

 え、なんで女子の制服なんて着ちゃってるの?

 稔君は実は稔ちゃんでした。・・・ってこと?

 目の前の幼馴染だと思しき女子生徒?をまじまじと見つめてしまう。

 正直、とても不躾な視線をぶつけてしまっている自覚はあるけれども、それに構っている余裕も無い。

 女子の制服を着ているのに不自然な点は見受けられない。というか似合いすぎでしょう。手足も全体的に華奢でとてもじゃないけれども男子が女装して女子の制服を着ているようには見えない。・・・すね毛なんて生えてなさそうだなあ。

 顔は・・・取り扱説明所で見た顔そのままだ、引っ越していった頃の稔君が成長すればこうなるんだろうなあって予想図の通り。

 でも、女の子だなんてことって有り得るの?乙女ゲーの世界で、攻略キャラが、実はというか登場から女の子。もしゲームみたいな強制力とか主人公補正とか働いてたら私、女の子を攻略させられるところだったの?斬新すぎるでしょう、誰得だよ。

 ・・・本当に、女の子なの?実は男の娘ってことはない?


 「あれえ?蓮ちゃんだよね?・・・もしかしてボクのこと覚えてない?」


 なにい!?ここにきてボクっ娘属性追加だとお!?これもう、本格的にどっちかわかんないな!?


 「稔・・・君?だよね?」


 「あ、よかったあ、覚えててくれてたんだ。人違いは無いと思ってたのに反応無いからてっきり忘れられちゃったんじゃないかって思ったよ」


 朗らかに笑う彼女?は可愛らしくて正真正銘の女の子にしか見えないし。

 

 (「稔君って、女の子だったんだね」)


 聞きたい、聞きたいけれども・・・、これ聞いちゃっていいのかな?踏んだら爆発するとか無い?

 あ?でも、今のこのタイミングなら子供の勘違いでしたって笑い話にできるかも?


 「あ、あのね、稔君って女の子だったんだね、小っちゃい頃はずっと男の子だとばっかり思ってたからびっくりしちゃった。あ、もう稔君って呼んじゃだめか、あはは・・・」


 「え?あー、うん、そうなんだぁ」


 え、あれぇ?ちょっと稔さぁん?なんでそこで曖昧なお返事なんでしょうか?その笑顔はどうしたのでしょうか?とっても艶めかしいとうか妖艶な感じがしてますよ?さっきまでのお日さまの様な笑顔は何処へいったのでしょうか。



 結局、事実ははっきりする前にお昼休みが時間切れになってしまった。貴方、本当にどっちなんだよ。

 あの後、玲奈さんに聞いても「どっちだろうねー」とか笑ってはぐらかされるし、まったく。

 稔君とは連絡先を交換して今度の休みに会ってゆっくりと話そうかってことになってる。稔君の正体?はさておいても、いろいろと積もる話があるからね、私にもきっと稔君にも。

 ひとまず稔君のことは置いておいて今日は予定通りに部活動の方へ参加しよう、あまり気にしすぎても仕方ないし取りあえずは再会できたことを喜んでよしとしたいもんね。

 


 さて、放課後です。

 顧問の先生には今日出席することはもう伝えてある。副担が顧問だとその辺が楽でいいね。

 すでに部室の目の前には到着済み、躊躇う理由もないのでさっさとノックして入室することにしよう。


 「あら、来たわね、新入部員候補さん」


 「ええ、昨日はすみませんでした」


 にこやかに迎え入れてくれる部長さんに昨日の欠席の事を謝っておく。出席についてはかなり緩くて自由参加で来れる日に来ればいいとの説明は受けているけれども仮入部直後はなるべく出席しておきたかったのもまた事実だしね。ちなみに部長さんとは仮入部の申し込みのときに顔合わせは済んでいるよ。

 

 「じゃあ、ちゃっちゃか紹介しちゃうわね、幸い今日はフルメンバーだから二度手間にならなくて済むしね──はいみんなー、一旦手を止めて、新入部員を紹介するわ、といっても仮入部だから正式入部してくれるように精一杯好印象を稼ぐようにね。はい、森山さん自己紹介ヨロシク」


 「はい、えーっと、まだ仮ですが新しく入部させていただきました森山華蓮です、絵を描く事は好きでしたがこうして美術部に入るのは初めての事なので分からないことも多々あると思いますけれどもよろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げるとこちらに注目していた部員の人たちからパチパチと拍手を貰う。

 という訳で、私が仮入部したのは美術部でした。絵を描くのが好きだった、というのは本当、今も前世も。とはいうものの前世の私が描いていたのは美術とかいう高尚なものではなく、盆と正月に国際展示場で行われる祭典に出品されるような絵がメインだったけれどもね。まあ、前世では地方の田舎在住だったせいもあってそういった催しに参加できたことはなかったんだけれども。今世でもやっぱり絵は好きでよく風景のスケッチや水彩を描いていた。ただ、さっき言ったように美術部に入部したりして知識や技術を教えてもらったことは無くて、趣味というか気が向いたときの時間つぶしみたいなものだったけれども。


 「じゃあ、今日は天気もいいし、外にでも出てスケッチでもしましょうか」


 パンパンと手を打って部長さんが今日の活動内容を仕切っていく。普段は各自で自分の制作活動をしたりしなかったりで好き勝手やってるんだけれども、この時期だけは新入部員とか何やったらいいかも分かんないしで部長が活動内容を決定していろいろと体験させてくれるんだって。

 部長さんの指示に従たって銘々がスケッチブックと筆記用具を持って美術室から出発していくなか、準備をするでもなくでこちらを睨むかのように見ている男子生徒が一人。


 「お前も美術部に入部する気なのか」


 何でこの人、こちらに向けてため息なんて吐いてるんでしょうかねえ。

 

お読みいただき、ありがとうございます。

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