3-2-2 想像演習
氷晶湖探索パーティー
(レイラ、エヴァ、シェリー、ルナ)
魔法の馬車の揺れが単調さを帯び始めた頃、レイラが改めて口を開いた。先ほどまでの高揚は薄れ、声は自然と落ち着いている。
「もしドラゴンに出くわしたら、どう動くか整理しておきましょう。水中か、氷の下に潜んでいる可能性が高いわ」
「水中戦は避けたいわね」
エヴァは《天秤の鎖》を指先で確かめながら応じる。
「動きが制限されるし、向こうは本来の力を発揮する。
一番の課題は、誰も捕まらないこと。鎖で全員を繋いでおけば引き上げられるけれど、力任せでは持たない可能性もある」
シェリーは膝上の《双魚の鏡》を見つめる。
「鏡が先に映してくれればいいけど……警告が遅れたら手遅れかもしれない。
だから、映った瞬間に動けるように、あらかじめ役割を決めておこう」
「いざとなれば私が前に出る」
ルナは《巨蟹の腕輪》を軽く叩く。
「防御は任せて。攻撃の隙は必ず作る。その間に決めてくれればいい」
レイラは小さく頷き、まとめに入る。
「理想は戦わずに済ませること。でも、戦闘になった場合は私が《宝瓶の壺》で水流を操り、動きを制限する。
エヴァが鎖で拘束、あるいは距離を取る判断を。
シェリーは弱点の把握、ルナは守りの維持。
一連の流れを、頭に入れておいて」
エヴァが静かに息を吐く。
「楽な相手じゃなさそうね。でも、想定できている分だけましだわ」
四人は互いの視線を受け止める。
昂りは落ち着き、代わりに実務的な覚悟が形を取り始めていた。
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焦土の大渓谷探索パーティー
(ミーナ、エレイン、カリナ、ヴァイ)
「渓谷でドラゴンに遭遇したら、逃げ場は少ないわね」
ミーナの声は先ほどより低い。
「その場合、正面から受ける覚悟は必要になる」
「まず私が受け止める」
エレインは淡々と言う。
「《白羊の盾》ならブレスもある程度は防げる。ただし、過信はしない」
「私も前に出るよ」
カリナが《金牛の鎧》の縁を叩く。
「岩場を使えば動きは制限できるはず。ただ、長期戦は避けたいね」
ヴァイは《天蠍の弓》の弦を軽く引き、音を確かめる。
「攻撃の軸は私になる。遠距離から弱点を狙うが、位置を悟られれば対策される。無駄撃ちはできない」
「集中攻撃なら、私が引きつける」
ミーナは《獅子の剣》を抜き、刃を確かめる。
「動きを止めることを優先する。アルカンティスもいる。状況次第では空からの援護も可能よ」
エレインが静かに確認する。
「最優先は全員の生還。それが難しければ撤退」
ミーナは一度深呼吸し、仲間を見渡した。
「私たちなら対処できる。焦らなければ」
闘志はあるが、先ほどの昂りとは違う。
言葉は少しだけ現実に寄り始めていた。
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天頂の浮遊群峰探索チーム
(サーラ、セレナ、シオン、フィー)
浮遊群峰の風を想像しながら、サーラが口を開く。
「空中で遭遇した場合、地上とは別の戦いになるわ。風の加護があっても、体力が尽きれば終わり」
シオンが槍を握り直す。
「近接は不利です。突進の威力も落ちる。無理に距離を詰めない方がいい」
「そこで私の《磨羯の籠手》の出番ね」
セレナが簡潔に言う。
「空中でも一時的に足場を作れるから、攻撃に集中できる」
フィーが双剣を軽く振る。
「攪乱は任せて。真正面からやり合うより、その方が向いてる」
「私は《処女の書》で風の流れを調整する。全員が動きやすいようにサポートするわ」
サーラが続ける。
「最悪の場合は強制的に引き離す。無理はしないでね」
シオンが確認する。
「撤退判断は迅速に。体力温存を優先します」
フィーが肩をすくめる。
「……でもさ、ドラゴン相手に空中戦なんて、こんな機会めったにないよね。最高じゃない?」
サーラは小さく笑った。
「大怪我しない程度にね」
「大丈夫、ちゃんと戻ってくるって」
空気は張り詰めてはいない。
想定は現実味を帯びつつも、まだ余裕が残っている。
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移動を続ける馬車の中で、サーラは再びエーテルサインを手に取る。今度はやや軽い調子だ。
「レイラ、ミーナ。例のポール、頃合いを見てお願い」
すぐにレイラの声が返る。
『了解。この先の丘が使えそう』
続いてミーナ。
『崖上に設置するわ。目立たない位置にね』
「頼りにしてるわ」
サーラは通話を閉じた。
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揺れる座席に身を預けながら、エレインがふと口を開く。
「そういえば、アルカンティスは?」
ミーナは肩をすくめる。
「四人乗せて長距離はきついってさ。今は後ろをついてきてる」
エレインは小さく頷き、窓外へ目を向けた。
風は静かに草原を撫で、アルカンティスの影がのんびりと空を横切る。
この平穏な景色の向こうで、同じ空の下、
命を賭けた戦いが始まっているなど、誰が思うだろう。
空はまだ高く、旅路は長い。
ブクマでサーラたちの応援をお願いします!




