第二百八話 一発ぶちかますべきです
更新が遅くなり申し訳ありません。
少し情報を整理するために、作品を読み返してました。
そろそろプロットが必要になってきたのかも知れません。
脳内メモリーが破裂寸前……。
土曜日のお昼ちょっと前。
私は行きつけのカフェで、注文したカフェオレを少しずつ飲む。
そこに、咲がやってきた。
「やっほー綾香。早いね」
「うん。今日は晴翔が家に帰っちゃったから暇で」
「お? いきなり惚気ですか」
「ち、違うから」
咲は揶揄うように笑いながら私の対面に座る。
「雫ちゃんはまだ来てないのね」
「さっき、もう少しで着くって連絡が来たよ」
「そっか、そっか」
今日は咲と雫ちゃんの3人でお茶をする予定。
言い出したのは雫ちゃん。
木曜日くらいに突然『今週の土曜日に女子会です! 作戦会議です!』って言い出したんだよね。
「それにしても、今週の綾香は大変だったわね」
「う、うん。まさかあんなに告白されるとは思ってなかった……」
「てかさ、異常だよね? 夏休み前よりも増えてたじゃん?」
「そうかも……」
「彼氏いるのに告白って、何考えてんだろう」
「う〜ん……告白してくる人たちは、未練を断ち切るためって人が多かったけど、中には前から話してみたかったって人とか、記念にみたいなことを言ってる人もいた」
「記念って、なんだそりゃ……」
咲が呆れ顔を浮かべる。
「晴翔君がそばにいてもお構いなしで告白してくる人もいるしね」
「そうなんだよね。晴翔もそれで悩んでて……」
「来週は私もそばにいて、告白男子を追い払ってあげようか?」
心配そうな咲に、私は小さく首を振る。
「ううん。それで咲が恨みとか買っちゃったら嫌だし」
私のせいで咲が傷つくのは絶対にイヤ。
と、そこにカフェの扉が開いて、雫ちゃんが店内に入ってきた。
キョロキョロと見渡して私たちを探してる雫ちゃんに、咲が大きく手を挙げる。
「お〜い。こっちこっち」
咲の声に雫ちゃんはすぐに反応して私たちの席までやってきた。
「ふむふむ。ここがアヤ先輩と咲先輩の愛の巣というわけですね」
「そうそう。いいところでしょ?」
「雰囲気バッチグーです」
雫ちゃんの冗談に咲が適当に合わせながら答えてる。
咲は雫ちゃんの冗談を受け流すの上手だなぁ。
「アヤ先輩が飲んでいるのは何です?」
「これはアイスカフェオレだよ」
「なるほど、ちなみにここのイチオシは?」
「うーん、何でも美味しいけど、私はこのアイスカフェオレを飲むことが多いかな?」
「なら、アヤ先輩の意見を参考にして、私はこのメロンソーダデカ盛りフロートにします」
「私の参考になってる?」
相変わらず自由な雫ちゃんに私は苦笑する。
「咲先輩もデカ盛りフロートいきます?」
「いんや。私も綾香と一緒のでいいや」
「そうですか」
雫ちゃんがマスターを呼んで大盛りメロンソーダフロートを咲がアイスカフェオレをそれぞれ頼む。
雫ちゃんはお冷を一口だけ飲んだ後、相変わらずの無表情を少しだけ引き締めて口を開く。
「ではでは、早速本題に入りましょうか」
「そういえば雫ちゃん、作戦会議だって言っていたけど、それってやっぱり綾香の告白のこと?」
「です!」
威勢よく頷いた雫ちゃんは、ピシッて私の方を見てきた。
「アヤ先輩はハル先輩との婚約を大々的にカミングアウトするべきです!」
「えぇっ!?」
唐突な提案に、私は思わず驚きの声を出す。
「な、なんで?」
「根性が腐った男子どもを純愛という炎で焼き払うためです!」
綺麗な眉を吊り上げて雫ちゃんは熱弁を始める。
「アヤ先輩はハル先輩の嫁なんですよ? 人妻に告白するなど言語道断! 特にあの発情モンキー先輩は今度アヤ先輩に近づいたら即座にぶちのめしてやります」
「発情モンキー先輩って……」
無表情で鼻息を荒くするという器用なことをしている雫ちゃんに、咲が苦笑してる。
「でも、晴翔とのカミングアウトってどうすればいいのかな……?」
「体育祭です。来週開催の体育祭でぶちまけましょう」
「た、体育祭?」
「です。できるだけ注目を浴びるタイミングでカミングアウトしましょう」
そう言った後、雫ちゃんは「いいこと思いつきました」ってポンと手を叩く。
「混合リレーの表彰式でやっちゃいましょう。表彰台に乗って、その上からハル先輩への永遠の愛を叫ぶ。完璧な作戦です」
「え? 表彰台の上からやるの?」
雫ちゃんの提案に、私は尻込みしてしまう。
「表彰台の上って、すごく注目を浴びてる状態だよ……」
「だからいいんじゃないですか。その上から『私は晴翔の妻です! 身も心も捧げてます!』って宣言すれば、愚かな男子どもを効率よく焼き払えます」
腕を組んだ雫ちゃんは「軟弱男子の一斉駆除です」なんて言ってる。
私のことを思っての提案だっていうのわかるし、そのことはとても嬉しいけど、ちょっと過激すぎるような……。
「咲はどう思う?」
「う〜ん、私もその作戦にちょっと賛成かも」
咲は少し考え込むように俯いてから、雫ちゃんの提案を肯定する。
「やっぱり、いまの綾香の状態が続くのはよくないと思うのよね」
自分の考えをまとめるように、咲は視線を上に向けながらゆっくり話す」
「なんか綾香への告白を見てるとさ、流れに乗って告白しました。みたいな男子もそこそこ多いと思うんだよね。みんなが告白してるから自分もしました。みたいな。そういう流れを止めるためにも、表彰台での嫁宣言は効果的なのかも」
「さすが咲先輩です。男の扱いがわかってます」
「いや、そこまでじゃないけど」
ふむふむと頷く雫ちゃんに、咲は苦笑を返したあと、少し眉間に皺を寄せる。
「問題は表彰台に上がれるかどうよね」
「確かに……」
混合リレーは体育祭の中でも一番注目を浴びる競技。だから、本気で優勝を狙っているクラスは相当力を入れている。
その中で表彰台に乗るのは難しいような……。
「なに弱気な顔をしてんですかアヤ先輩」
「だって、私そんなに足速くないし……」
「練習を頑張っていたじゃないですか」
「それは、クラスの代表として全力を出さないといけないから。でも……」
混合リレーには、私よりも断然速い人がほとんどだろうし。
そんな不安を感じていると、雫ちゃんが無表情を崩して優しく微笑む。
「心配無用ですアヤ先輩」
「雫ちゃん……」
「アヤ先輩は凶悪な武器を兼ね備えているので」
「へ? 武器?」
てっきり励ましの言葉を掛けられると思っていたら、予想外のことを言われた。
凶悪な武器? なんだろうそれ?
「アヤ先輩の武器、それはその無駄にでかい乳です!」
「っ!?」
雫ちゃんにビシッと胸を指さされて、わたしは思わず両手で隠す。
「ど、どいうこと!?」
「それをバインバインゆらしながら走っていれば、男子どもは強制的に前屈みになり、フォームを崩されます。女子もメンタルを攻撃されてスタミナを消費することでしょう」
「えぇ……そんなことある?」
「あります。アヤ先輩の『乳揺らし』は『臭い息』にも匹敵する強力なデバフです」
雫ちゃんは「アヤ先輩はモ◯ボルもびっくりなデバフキャラです」なんて言ってる。
臭い息ってなに? モル◯ルって誰?
って、なんか咲も笑いながら「確かに」って頷いてるし……。
「なんか嫌だなぁ……」
「アヤ先輩! 勝つために手段は選んでられませんよ!」
「で、でも……」
「乳を揺らしたその先に、ハル先輩との幸せな学園生活が待ってるんです!」
「晴翔と学校でも楽しく過ごしたいけど、雫ちゃんの言い回しがなんか嫌」
「む。相変わらず、わがままですねアヤ先輩は」
『やれやれです』って雫ちゃんが肩をすくめてる。
私がわがままというより、雫ちゃんの言い方が悪いと思うんだけどな……。
「ともかく、リレーで表彰台に上がって嫁宣言ってことでいいですね?」
「それは、そうだね」
それで告白ラッシュが止まるなら、やるしかないよね。それに、婚約を学校でカミングアウトしたら、堂々と晴翔の妻ですって言えるし。
ふふふ、晴翔の妻……あ、逆に晴翔のことを『私の主人です』とか言えちゃうのかな? ふふふ……。
「綾香、顔がすごくニヤけてる」
咲の指摘に、私は慌てて緩んだ表情を元に戻す。
「はうっ」
「アヤ先輩のことだから、どうせえっちぃことを妄想してたんですよね?」
「違うからっ!」
もう! すぐ雫ちゃんはそうやって私をいじめてくるんだから!
頬を膨らまして不満をアピールしていると、雫ちゃんが「そういえば」と話題を変えてきた。
「前にハル先輩とオタノシミでしたねって言った時に、アヤ先輩盛大に動揺してましたけど」
雫ちゃんはゆっくりと前傾姿勢になって、私に問いかけてきた。
「実際にはどうなんです? もうヤッたんですか? ハル先輩と」
「っ!? そ、そそ、それは……」
「んん? どうなんですか?」
雫ちゃんは『逃しません』というように私のことをジッと見つめてくる。
うぅ…….あの時のことを思い出して、鼓動が早くなる。顔も熱い。きっと赤くなってるんだろうな。
あの時は、結局何もなかったけど、夫婦になるのなら、いつかは……。
いっそのこと、咲と雫ちゃんに相談しちゃおうかな。
「じ、じつは……」
私は、激しく胸を打つ鼓動を宥めながら、あの日の出来事を二人に話した。
お読み下さりありがとうございます。
告知です。
遅くなってしまいましたが、本作の書籍版第6巻が発売中です。6巻ではカズ先輩も挿絵に登場しています。秋乃える先生の描くカズ先輩も最高です。
また、かじがくシリーズが累計10万部を突破したそうです。応援してくださっている皆様に心よりお礼申し上げます。




