第二百六話 ご本人登場
最近更新が遅れがちで大変申し訳ありません。
息子の風邪をもらって体調を崩していたため全く書けていませんでした。
今回の話も短めになっています。
次話からしっかりと書いていきます。
大変申し訳ありません。
先輩に絡まれた翌日から、綾香はひっきりなしに告白されるようになった。
朝の登校途中に昼休憩、そして放課後。
繰り返される告白は、そのほとんどが『好きでした』という未練を断ち切るようなものだった。
しかし、中にはあわよくばお近付きに、というような告白もあり、晴翔は頭を悩ませる。
「はぁ〜、なんなんだこの状況は……」
体育終わりの更衣室。
晴翔はジャージから制服に着替えながら大きく溜息をつく。
隣の友哉がシャツのボタンを留めながら応える。
「もともと綾香は高頻度で告白されてたけど、今はそれ以上だよな」
「なんで今更告白ラッシュが起きてるんだ?」
晴翔が渋面で首を傾げていると、少し離れたところから佐藤がやってきた。
「それは東條さんが大槻と付き合いだしたからだよ」
「ん? どういうことだ?」
佐藤の言葉に友哉が首を捻る。
「今までの東條さんは、男子を避けていて壁を感じる存在だっただろ? でも、大槻と付き合いだしてその壁がなくなったんだよ」
「近付きやすくなったってことか?」
「そう。大槻の隣にいる東條さんは、今まで以上に魅力的だからね」
そう言った後、佐藤はキラキラとした目で晴翔を見る。
「大槻の魅力で、東條さんがさらに輝いているんだよ!」
「そ、そうなのか……」
熱のこもった視線に、晴翔は若干身を引く。
「でも、東條さんの今の魅力は、大槻の隣にいるからこそなんだよな。みんなそれに気づいていないんだ」
佐藤はグッと拳を握りしめて言う。
「東條さんをより魅力的にできるのは大槻だけなんだよ! それをみんな理解していない! 俺、大槻の凄さをもっと宣伝する!」
決意表明をした佐藤は、そのまま更衣室を後にする。
去って行く彼の背中を眺めながら、友哉が呟く。
「推し活ってやつか、あれは?」
「ど、どうだろうな? ありがたいことではあるが……」
佐藤の行動に感謝の気持ちはありつつ、純粋に喜んでいいものか悩む晴翔。
綾香に『晴翔は凄い』を刷り込まれてから、佐藤は熱狂的に晴翔を支持している。
「まぁ、ちょっとそれは置いておいて、取り敢えず綾香に対しての告白をなんとかしないとな」
「もう婚約してるって全校生徒に宣言すればいいんじゃね?」
「それだけで告白が止むか?」
「完全脈なしってことで、変な下心は浮かばないだろ? 昨日みたいな先輩には効果的だと思うぞ?」
「うーん」
確かに友哉の言う通りかもしれない。
しかし、未練を断ち切ろうとしている人たちにとっては、効果的なのだろうか?
「もう少しインパクトがあるような何かがあれば……」
「いや、高校生で婚約って相当インパクト強いぞ? お前の感覚がバグって来てるんだよ」
「そうなのか?」
いまいちピンと来ない晴翔に、友哉がポンと手を叩いた。
「あれだ! 夏休み前のあれをやればいいんじゃね?」
「どれだ?」
「あれだよ! 皆藤先輩がやった公開プロポーズ! あれ以上にインパクトのあることはないだろ!」
「公開プロポーズ……いや、でもあれはなくないか? 綾香もドン引きじゃ?」
「ほぼ初対面の相手にやられたら、そりゃあ怪異レベルだけど、ハル達はすでに婚約してるから大丈夫だろ」
「まぁ……大丈夫か? でも指輪もないしな……てか、皆藤先輩はどうやって婚約指輪を買ったんだろうな?」
以前晴翔が軽く調べただけでも、高校生がホイと買えるような代物ではなかった。
着替えを終えて、更衣室から出ながら晴翔が言うと、友哉も首を傾げる。
「確かにな。それこそ、本人に聞いてみればいいんじゃん?」
「皆藤先輩にか? どこで指輪買ったんですかってか?」
「おうよ。先駆者に聞くのが一番確実だぜ」
「そうだけど、さすがに皆藤先輩本人に聞くのは――」
「俺に何か聞きたいのか?」
「っ!?」
背後から突如聞こえて来た声に、晴翔は驚きながら振り返る。
そこには当の本人である皆藤先輩がいた。
まさかのご本人登場に、晴翔は言葉を詰まらせる。
「あ、や、その……」
「お前が東條さんの恋人の、大槻だな?」
皆藤先輩は、晴翔を品定めするように眺めてから口を開く。
「はい、そうです」
「……俺もお前に話したいことがあるんだ」
「俺にですか?」
かつて全校生徒の前で、綾香に公開プロポーズをした猛者である皆藤先輩。
その彼の話したいことに、晴翔は若干身構える。
「あぁ。今日の放課後空いているか?」
皆藤先輩は、廊下を行き交う多くの生徒たちに目をやる。
「ここだとゆっくり話ができないからな」
「放課後は特に予定はないですが……」
皆藤先輩がゆっくり話したいこととは一体何なのか。
綾香に公開プロポーズをした彼のことだから、十中八九彼女のことに関してだとは思うが。
「そうか、なら飯おごってやる。どうだ」
「……はい。ありがとうございます」
頷く晴翔を見た後、皆藤は友哉に目を向ける。
「お前もどうだ?」
「俺もいいんすか?」
「あぁ、かまわない」
頷く皆藤に、友哉は晴翔と目を合わせる。
「じゃあ、俺もゴチになります」
「わかった。じゃあ放課後、校門前で待ってる」
そう言い残すと、皆藤は立ち去ってしまった。
その背中を眺めてから、晴翔はおもむろに口を開く。
「皆藤先輩の話したいことってなんだ?」
「まぁ、綾香のことだろうな」
「それは確実だと思うけど……」
晴翔は眉間に皺を寄せながら、綾香に今日は帰りが遅くなることを連絡した。




