吸食
第二層はひとまず一本道であった。
俺たちは道中の敵を倒しながら進んでいった。
すると、大きな扉がある部屋に着いた。
扉の隣はいつもの親切仕様で「この先中ボス」と書かれていた。
ガイドブックいわく、中ボス部屋は基本的にB級以上のダンジョンに存在するが、まれにC級ダンジョンにも存在するそうだ。
「なあ、ちょっと異空間で準備してから行かないか」
「…そうだね。私も同意」
俺たちはいったん異空間へと入った。
あれから異空間内は割と整備された。
例のドローンロボットを使って要らないものは焼却し、最初に作った自宅モドキを中心にいろいろと整備した。
なお、ドローンロボットはあまりの性能と力に恐ろしくなって自宅モドキの地下に数十機のドローンの状態で封印した。
俺はベニを自宅モドキに入れ、作業部屋に連れて行った。
ちなみに作業部屋は本物の家では父の部屋である。
「そういえばベニは俺がどうやって物を作っているかは見たことなかったな」
「…うん。気になる」
「じゃあ、今から見せてあげよう」
そう言って俺は作りたいものを想像して両手からビームを出し始めた。
俺が作りたいもの。
それは火炎放射器である。
このダンジョンはパンのモンスターが多い。
パンを燃やせば消し炭になる。
ならば火炎放射器を作れば最強なのではと考えたのだ。
両手から出たビームがだんだんと火炎放射器を形成していく。
見たことがない物を作るため、じっくりと時間をかける。
そうして10分ほどで火炎放射器が完成した。
「さてと、準備も整ったし行くか」
「…私の方も準備万端。行こう!」
俺たちは異空間から出て、中ボスが待ち構えてる扉の先へと行った。
中ボスもパンだった。
しかし、今までのパン系モンスターたちと違い、生の食パンがそのまま巨大化したような見た目であった。
名付けてパンヌリカベである。
「…おいしそう。食べがいがある…」
ベニがふとそうつぶやいた。
「なら、少し焼いてから食うってのはどうだ!」
そう言って俺は距離をとりつつ火炎放射器でパンヌリカベの下部分を炙っていった。
当然、そんな攻撃ではパンヌリカベはひるまない。
「ナンノツモリダ!」
パンヌリカベがそうしゃべりながら俺にのしかかろうとしたその時であった。
銃声が聞こえた。
パンヌリカベのど真ん中に小さな穴が開いた。
どうやら麻酔銃だったらしく、パンヌリカベは眠ってしまった。
「…今だ」
ベニがものすごい勢いでパンヌリカベに喰らいついた。
そう、ベニは敵の能力を得るためにこの隙を狙っていたのだ。
「ヨクモクッタナ!!」
ベニがかじりつくのをやめて後ろに行った直後、パンヌリカベが起き上った。
「モウユルサン!コレデモクラエ!」
パンヌリカベに口があらわれ、そこからものすごい風量の風が放たれる。
俺とベニは壁に打ち付けられた。
吸血鬼じゃなかったら打撲していたところだろう。
「…これがあのモンスターの能力…なるほど。コウ君、ひるまず進んで!」
ベニが俺に指示を出す。
俺はその通りに進んでいった。
パンヌリカベが風を出す。
しかし、後ろからも風が来てそれを打ち消した。
おそらく、後ろでベニが風を吹いてくれるのであろう。
俺は安心して進んでいった。
「燃えろ!」
俺は火炎放射器で直接パンヌリカベを燃やした。
すると、炎は瞬く間に広がりパンヌリカベを焼き尽くしていった。
そして、最後は消し炭になり、黄金の食パンをドロップして消えていった。
「よっしゃ」
「…よっしゃ」
気づいたら俺たちはハイタッチをしていた。
一瞬二人で頬を赤らめた後、勝利の余韻に浸り始めた。
「…やった」
「やったな!」
俺たちは二人して喜んだ。
そして、お互いをねぎらった。
達成ムードに浸かった五分後、俺たちは中ボスべの奥にある扉を開けてその先へ行った。
すると、一層の時と同様に二手に分かれていた。
俺たちは今度は左の方へ行った。
道中の敵を火炎放射器で焼き払いつつ、進んでいくとそこにはこのダンジョン初めてのボスのヒントが書かれている部屋があった。
そこには4つの文章があった。
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クロヤマアリのボスがクロヤマアリとは限らないように、パンのボスがパンだとは限らない
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ここの主は鋼鉄の腕。炎を寄せ付けぬ鉄壁の腕
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鉄腕は大技の後に大きな隙あり
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剛腕、バラバラになる
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「つまり、ボスもパン製とは限らないということか…」
「…そうみたいだね」
「それと、火炎放射器以外の武器を作る必要がありそうだな…」
「…ボス戦前に一回異空間で準備しておこう」
そんな会話を交わした後、俺たちは分岐点にまで引き返し、もう一方の方へ出た。
そして、しばらく進んでいくと3層への階段があった。
俺たちは階段の下へと向かっていくことにした。
次回の更新は明日の18:00からです!
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