03~ 天然偽善者と体育祭② ~
投稿するの遅くなりました。
次の日
昼休みになり洋太は弁当を一緒に食べるために俺の席に来た。
「はぁ〜、やっと1日休める〜! 」
「体育の時間は練習あったけどな」
「うっせ! でも朝練と放課後練習が休みになっただけ嬉しいわ!」
「刀夜、あと約1週間しかないんだぞ? 負けたらわかってるよな? 」
「う、うん。もちろんワカッテルヨ?! 」
洋太の顔があまりにも怖かったので声が裏返ってしまった。なんでこいつ勝つのに執着してるんだ?
「なぁ、なんでそんなに勝ちたいの? 」
「はぁ〜? そんなの決まってんだろ?モテるためだモテるため」
洋太は当然だろと言わんばかりにさらっと言ってきた。なるほど、勝てばモテるのか。
「そういう事か! なら俺も頑張るぜ! 」
勝ったらみんなからの好感度もあがるかな〜。
あ、そういえば練習忙しくてしばらくカード確認してなかったな。
俺は洋太からは死角の机の下でカードを見た。
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レベル1.5
好感度68%
■善342 悪134 計74■
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え・・・レベル1.5になったから善ポイントが2倍のスピードで貯まるのはわかってたから納得だけど、なんでこんなに悪ポイント貯まってるんだ・・・? 俺なんか悪い事したか?好感度68%て高いのか?
最後に見たのはいつだっけ? でも少なくとも体育祭の話し合いの前ぐらいだったよな。
「刀夜? どうした? 」
俺は洋太に話しかけられてる事に気づかずに、体育祭の話し合いや練習を頭の中で再生していた。だが、やっぱり思い当たることが何も無い。
まじでどういう事だ? 誰かが嫌な思いしてるのか?てか、悪の表示見にくいから最初から2倍の数値にしといてくれないかな?
色々と考えていると洋太に方を揺さぶられた。
「おい! 刀夜? どうしたんだ? そんなビックリした顔して」
はっ! やばいこのカードのことを知られたらまずい!
「イヤナンデモナイヨ? 」
「あ?嘘ついてんな? 」
「え?!ついてナイヨ? 」
頼む誤魔化せろ!
「はぁ、まあいいけどさ。なんか悩みとかあんなら言えよ? 内容次第では言いふら━━コホン。相談乗るからよ」
俺が願いが叶ったのかは分からないが、なんとか誤魔化せたようで良かった。心配してくれるのは嬉しいけど、なんか言いふらすって言おうとしてなかったか? まぁ、誤魔化せたからいいか。
「そうだな。んじゃ、早速」
「お、早速か! 」
「この数日間で俺誰かに嫌われるような事した? 」
「は? 意味わかんねーよ。ん〜してないんじゃね? てか、むしろスムーズに体動かすコツとかを皆に教えてたろ? 」
「うん。そうだよね・・・」
どういう事だ? 悪ポイントの貯まる基準が全くわからない。てかそもそも基準なんてあるのか?
「それよりなんでいきなりそんなこと聞いてきたんだ? 」
「え? いや、何でもナイヨ」
洋太が目を細めて怪しむようにジーッと見てきたがそれに構わず俺は言った。
「ま、まぁ頑張ろうぜ」
「あ、そういえば刀夜。代表種目の男女混合二人三脚あるだろ?」
なんかそーゆうのもあった気がするな。代表者の6人は皆運動神経がいいからこれまで練習してなかったな。てきとうに返事しとくか。
「あ〜うん、あった気がする」
「あれ、お前のペア佐藤になったから」
・・・・・・・・・? ・・・ん? ・・・え?!
「はぁ〜?! なんで?! 」
なんで佐藤さんと俺が二人三脚のペアなの?!
俺はあまりの驚きにさっきまで考えていた悪ポイントのことが頭から消えていた。
「いや、身長差だ。身長が同じくらいの方が速く走れるだろ? 」
「いや、そうだけど! じゃ、じゃあ洋太はダレとペアなんだ?」
「あ〜俺? 俺は〜、塩対応の塩崎だ」
「あーなるほどね〜」
妥当なところか。この性格悪い洋太には普通の女の子は耐えきれないよな。ん? 塩崎さんがこっち見てるぞ?
「ひっ!!! 」
俺は隣にいた塩崎さんに睨まれて思わず変な声を出してしまった。
「ハハハハハ! なんだその声おもしれぇ〜! 」
こいつ! 嵌めやがったな。最初からこんな風になる事わかってやがったな! この腹黒め!
「ま、そゆことだから頑張れよ? 特に精神的にな? 」
「ん? 精神的にってどういう事? 」
「お前そんなのもわかんねぇのかよ。全くこれだから恋愛経験少ないやつは・・・」
呆れたように言う洋太に俺はカチンと来たが何も言い返すことが出来なかった。何故ならその通りだからだ・・・自分で思ってて悲しくなるな。
「まぁ、なんだ? 理性と、男子からの怒りとかか? 」
はっ!!
俺は洋太に言われてようやく気づいた。
そういえば佐藤さんって美人ランキング1位じゃねぇかぁぁぁぁぁぁあ!
俺が頭を抱えて机に突っ伏してると昼休みの終わるチャイムがなった。
午後の授業も終わり放課後になった。今日は練習が休みだからか、皆帰るのが早い。
「刀夜、帰るぞー? 」
「うん。あ、おい。置いていくなよ! 」
急いで準備をして追いかけたらもう廊下に姿はなかった。
えぇ。帰るの早すぎない? そんなに急がなくても・・・
俺は洋太に追いつくために急いで靴箱へ向かった。すると洋太は太陽が沈み始めた空を眺めていた。
ぼんやりと眺めている洋太の横顔は何故か嬉しそうだった。
「洋太! 何してんの? 」
そう声をかけると涼しい顔で振り返ってきた。
「いや、もうすぐ体育祭だろ? そんで俺らが圧勝したら皆どういう顔するのか想像してたら笑えてきただけだ」
「んあ、そ〜だな。確かに面白い」
それから俺と洋太はいつもよりのんびりと帰り始めた。洋太の家は学校から15分ぐらいの所だ。俺の家と同じ方向という事で5月ぐらいから一緒に帰り始めたのだ。
てきとうに雑談しながら帰っていると公園で走ってる人が見えた。
「あれ。あれって佐原くんだよね? 」
「ん? どこだ? 」
「あれだよあれ、今走ってるあの人! 」
「あ、ホントだ! 今日は練習休みなのによく頑張るよな。佐原って昨日も1番遅くまで残って練習してたろ? そんなに頑張ってなんかあんのかな? 」
「わかんないけど、代表者に選ばれたからじゃない? 」
「そうかもな。ま、帰るか」
俺達は佐原くんが走ってるのを横目に歩き出した。俺は何故か佐原くんの走ってる顔に釘漬けになった。
━━━なんであんなに”悔しそうな顔”をしているんだろうと。
家に帰りいつも通り食事やお風呂を済ませて寝る体勢になった。
だが、さっきの佐原くんの”悔しそうな顔”を思い出して中々眠れなかった。
なんであんな顔をしてたんだろう? 何か嫌なことでもあったのだろうか・・・もしかして昼間の悪ポイント貯まってたのって俺がなにかしたから?! 思い当たることが皆目見当もつかないぞ。
それから俺は何かしちゃったのかなと考えているといつの間にか眠っていた。
朝練があるから最近は特に早起きしないといけない。自分と母さんの弁当を作らないといけないからだ。
「くそ〜眠い」
「刀夜〜。無理してお母さんの分まで弁当作らなくていいのよ〜? 」
「いや、いいよ。どうせ自分の分を作るついでだから」
「あら、そう〜? ならいいのだけど。あんまり無理しないでね〜? 体育祭も近いんだから」
「うん分かってるよ。あ、応援には来なくていいからね?! 」
「え〜? どうして〜? もちろん行くわよ〜? 」
「は、恥ずかしいからだよ・・・」
いつも体育祭の時に母さんは大声で応援してくるから恥ずかしいのだ。毎回来るなと言っているのに来るのだ。
「それじゃお仕事行ってきま〜す! 」
「はいはい。行ってらっしゃい」
もう説得するの諦めるしかないか・・・
俺は結構朝練には早く来ている筈だが、いつも1番は佐原くんだ。そういえば昨日練習休みだったのに走ってたな。凄い練習熱心なんだな。
佐原くんは皆と練習する時は楽しそうだ。だが、やはり時折悔しそうな顔をする事がある。俺はそれが気になって練習に集中できなかった。
◆◆◆
体育祭まで残り1日になった。体育祭は土曜日と日曜日の2日に分けて行われる。
今日までずっと佐原くんのことを気にしていたけど、体育祭が近づくにつれ悔しそうな顔をする事が増えてるように感じた。しかも、悪ポイントもちょっとずつ増えていっているのだ。
今日、なんで悔しそうな顔をするのか聞こうと思い、いつもよりもっと早く学校に来たのだ。
ちょっと待っているとすぐに佐原くんは来た
佐原くんは俺が早く来ていたことに驚いたのか一瞬固まっていた。
やっぱり早いなぁ〜。何でなんだろ?
「おはよ〜佐原くん! 」
「あ、あぁ。おはよう真田くん」
「とうとう明日から2日間体育祭だね〜! 」
「そうだな」
それから体育祭についての話をしながら皆が来るまで2人でバトンパスなどの練習をしていた。
「佐原くんってさ。なんでいつもこんなに早く朝練に来るの? 放課後の練習も最後まで残ってるしさ。それに、この前の練習が休みだった日に公園で走ってたでしょ? 」
「か、関係ないだろ」
「うん。そうかもしれない。なら何で時々ものすごく悔しそうな顔してるの? 」
「っ!! 」
その事について聞いたら佐原くんは俯いて黙ってしまった。
「そんなに頑張らなくても佐原くんの運動神経は凄いじゃん! 」
俺は佐原くんを慰めるつもりで言った。
━━━そのつもりだった
だが、佐原くんは突然バッと顔を上げて俺を睨んできた。その顔はまさに鬼の形相だった。
「お前に俺の何がわかるんだよ?! 俺がどれだけ必死に練習して来たかとか。どんだけ努力して運動神経を良くしたと思う?! 」
「・・・・・・ごめん。わからないよ」
「ハハッ。だろうな? 才能が無いやつがどれだけ頑張っても才能の壁は越えられないんだよ! 」
「━━━それは! 違うよ! 」
「何が違うって言うんだ!! 」
佐原くんは俺の胸倉を掴み揺らして訴えてきた。その顔は悔しくて悔しくて堪らなくて、今にも泣いてしまいそうだった。
ザワザワ
「なに? どうしたのあの子たち」
「なになに? 喧嘩? 」
俺達が喧嘩してるのを聞いていた周囲の人達がザワザワし始めた。
「クソっ! ・・・これだから嫌いなんだよ」
佐原くんはそう言い俺を突き飛ばしてどこかえ走って行ってしまった。
俺がしりもちをついて呆然としていると、さっきの騒ぎを見ていたらしい同じB組の人達が近寄ってきた。
「おい刀夜何があったんだ? お前もしかして佐原になにか言ったのか? 」
「真田くん大丈夫? 怪我してない? 」
「全く、明日が体育祭だって言うのに何をしているのかしら」
「え、えぇ? 佐原くんどうしちゃったの? 」
と、洋太と加田野さんは何があったのかを。佐藤さんは俺の心配を。塩崎さんは呆れていた。
ハッ?! なんでこんな事になったんだ?聞いたのがいけなかったのか?
と、とりあえず佐原くんを探さないと!
「ご、ごめん皆。俺佐原くんを探してくる」
そう言って俺はおしりについた土を払い校舎に走っていった。
後ろから
「練習どうすんだよ! 」
「なにがあったの〜? 」
「大丈夫なのか〜? 」
などと言われたが今はそれどころじゃない。
俺が怒らせてしまったんだ。この責任は俺が取らないと・・・
俺は必死なって校舎を走り回っていた。
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はぁ〜、やっぱり嫌だ。嫌いだ。これだけ努力しても才能の壁は越えられない・・・
なんでだよ・・・誰だよ努力は必ず報われるとか無駄な努力はないとか言ったやつ。全部嘘じゃんかよ・・・。こんな事なら最初から代表者にならなければ良かった。いや、最初から分かっていたのかもしれない。どれだけ頑張っても真田くんや谷川くんのようにはなれないと。
高校からはもっと上手く行くと思ってたのにな。やっぱり無理だったか。これじゃあ中学の時と変わんないな・・・上手くいくと信じてた俺が馬鹿だった。ハハ・・・もう体育祭なんてどうでもいいや。さっきの喧嘩皆見てたしな。学校になんてもう来なければ俺には関係ないか。
俺、佐原勇心は何故こんなことを思うようになったのかは中学時代まで遡る・・・
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俺は中学生になり部活に入ってみることにした。小学校の部活はもちろん、クラブや習い事もしていなかった。
小学校の頃は運動神経が良いと、先生や友達によく褒められていたからそこまで心配はしていなかった。俺はちょっと前から興味があったソフトテニス部に入った。
だが、他の部員は小学校の頃からクラブでやっていたらしく俺だけが初心者だった。
1年の終わりぐらいには結構上手くなれていた。だが、2年になると皆との差を改めて感じるようになった。
俺は試合には出れたが毎回負けてしまう。ペアの人は毎回俺の事を邪魔そうな目で見てくる。それはだんだん酷くなっていき、部員全員が俺を邪魔者扱いするようになった。
「この前の試合あいつがミスばっかするから負けたんだぜ? 」
「まじ邪魔だよな」
「下手くそは部活来んなっての」
「さっさと辞めてくんないかなー? 」
などとわざと俺に聞こえるぐらいの声量で言ってきたりもした。
最初は優しく励ましてくれた先輩や後輩もだんだんといなくなり、ついに俺は孤独になってしまった。それどころか、ボールをわざと当てて来たり打ち合いの練習の時は変な方向に打ったりと、まともに練習も出来なくなっていた。
それから見返してやろうと血が滲むような練習をテニスコートを借りてしたが、どれだけ練習をしても皆には勝てなかった。結局は才能がなければ勝てないんだと実感した。
俺はみんなの期待通りに部活を辞めた。これでテニスコートを借りて練習した時間もお金も無駄になってしまった。
これでもう嫌がらせや悪口はなくなると思っていた。
だが、部活を辞めても悪口はや嫌がらせは続いた。
とうとう精神的に限界が来て俺は学校に行けなくなってしまったのだ。最初、友達は心配して家に来てくれたが、日が経つにつれ俺は最初からいなかったかのように誰も家に来なくなった。
所詮仲良しごっこだったってわけか。そう思い高校ではもう友達なんて作らないそう思ったのだ。
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これが俺が才能があるやつを嫌うようになった理由だったりする。じゃあなんで高校からは上手くいくんじゃないかと思ったのかは、不登校になってから半月がたった2年の終わり頃だった。
俺はチラシと一緒に入っていた高校のパンフレットを見つけた。その高校は行事が盛んでとても楽しそうで目を引かれた。ここの高校なら上手くいくんじゃないかと不思議と自分の中で思ったのだ。この高校で俺はやり直す!そう決めたんだ。
勉強は人並み程度にしか出来なかったから卒業まで家にひきこもって頑張った。
━━━━結果は言うまでもないだろう・・・
高校に受かったは良かったもののやっぱりやり直せなかった。
「クソっ! 俺にもっと才能があったら・・・」
そう思うと今まで堪えてきた涙が一気に溢れ出てきた。
うぅ・・・くそ。人に迷惑はかけるし、なにより逃げ出した自分が憎い。
━━━━いや、才能があるやつがいけないんだ。
俺が独りで屋上に続く階段の隅で膝を抱えて泣いていると
「佐原くんっ! 」
そう言って真田くんが話しかけてきたのだ。俺は顔を上げずに
「うるせぇ、あっち行け」
と冷めた声で言うと、真田くんは息を切らしながら言ってきた。
「やっと・・・はぁ・・・・・・みつけた」
「俺に構うなよ! 早く練習戻れよ! 」
頼むから早く行ってくれ。これ以上ここに居たら殴るかもしれない・・・
願うように真田くんが行くのを待っていたがいつまで経っても行く気配がない。
「もう関係ないだろ?! 俺の事なんかほっとけよ」
それまで黙っていた真田くんが口を開いた。
「関係あるよ!! ありありだよ! 佐原くんは俺の大事なクラスメイトだ! それに俺と同じ代表者だよ」
「っっ!!! 」
俺はいきなり大声で言われて思わずビクッと肩が跳ねてしまった。
「それと、こうなったのは俺の責任だ! 責任ぐらい取らせてよ!」
「真田くんは何も知らないからそんなことを言えるんだよ・・・」
そうだ、真田くんや谷川くんは何も知らない。才能がある人は才能がない人を助けようとしない。
━━━才能がない俺が悪いんじゃなくて才能がある人が悪いんだ。
そんな考えを頭で繰り返していると、真田くんが包み込むような優しい声で言ってきた。
「何か気に触るようなことを言ったから怒ったんだよね。ごめんね」
「うるせぇ、謝んじゃねぇよ! 俺が悪いんだから! 才能がない俺が全部悪いんだ! だからもう俺に構うな・・・」
そうだ、やっぱり才能がない俺が悪いのか・・・
「俺にはなんでそんなに怒ってるのかが分からないけど、ごめんね。何がいけなかったのか教えてくれないかな? 」
うるせぇ・・・うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!
「うるせぇんだよ! 」
俺は気づいたら真田くんの胸倉を掴み、壁際に押しつけていた。もう泣いている顔なんてこの際どうでもよかった。俺は怒りに任せて全部吐き出した。
「うるせぇんだよ! 謝るなよ! 全部全部全部お前らみたいな才能があるやつがいるからいけないんだ! ━━━お前らはいいよなぁ?! 才能があるから努力なんてそこそこしかしなくてもそんなに運動神経がいいんだからよぉ?! 毎日毎日死ぬほど努力してきた俺の気持ちがわかんのか?! それに━━」
「だから、それは違うよ! 」
真田くんは俺の声よりも大きい声を出して俺の話を遮ってきた。
「俺も才能なんてない。いや、もしかしたらあるのかもしれない。だけど! それでも努力は死ぬほどしたよ! 洋太だってそうだ、佐藤さんや塩崎さんや加田野さんもきっとそうだよ。ただ見てる景色が違ったからそう感じたんじゃないかな? 」
「━━━は? 見てる景色? 」
「そう。佐原くんはいつも悔しそうに下を向いて練習してるよね。だけど俺達は前を向いて楽しみながら練習してるんだよ。下を向いてちゃ出来るものも出来なくなる、それに楽しまないと伸びるものも伸びないんだよ」
あ・・・あぁ。なんだ簡単なことじゃないか俺は楽しまずに下を向いてただ黙々と努力してたから成長しなかったのか。馬鹿だな俺こんなことも分からないなんて。
「何か辛いことがあったのなら話してみてよ。励ますことは出来ないかもしれないけど、話してみるだけでもちょっとは気持ちが楽になるかもしれないよ? 」
そう優しく微笑みかけてくる真田くんに、俺はいつの間にか過去のこともすべて話していた。俺は泣きながら話していたが、真田くんは決して中学の部活の人達のように嘲笑う様なことなどはせずに真剣に話を聞いてくれた。
全て話し終わると、
「そんな事があったんだね。でも今日で佐原くんは変われたよ! その辛い過去を話したことで一歩前進だよ。あとは、前を向いて楽しく生きることだよ! 」
俺はやっとの事で泣き止んで落ち着いてからお礼を言った。
「その、ありがとう。ここまで真剣に向き合ってくれた人は真田くんが初めてだった。それと、突き飛ばしたりしてごめん」
「あはは! 別に大丈夫だって! あ、クラスのみんなには練習サボったことちゃんと謝らないとね! 」
真田くんは笑ってすぐに許してくれた。
「クラスのみんな許してくれるかな? 」
俺はそれを不安に思ってつい聞いてしまった。
「大丈夫だと思うよ。そんなに強く責めたりする人はいないと思う。クラスのみんなを信じてみよう! 」
「そ、そうだな」
真田くんはいつも少し、いや結構抜けた感じでアホらしい感じがしたけど今は何故だかとてもかっこよく見えるなぁ。
そういえばとどれくらい時間が経ったんだろうと思い、スマホで時間を確認すると時間はまだギリギリ1時間目が始まる前だった。
「時間が無いぞ! 急ぐぞ! 」
そう言って真田くんは俺が顔を洗い終わるのを待ってくれて、2人で急いで教室に向かったのだった。
●●●
俺、真田刀夜はなんとか無事に佐原くんをみつけ説得したりして教室に着いたのだった。
まさかあんな辛いことがあったなんて分からなかったな。でも、これで一歩前進できたよね。これから俺や、このクラスの人達と一緒に成長して行ければいいなぁ。
あ、それと今度から迂闊に発言しないようにしないとな。
教室に入るなり俺は佐原くんと一緒にクラスメイトに謝ったのだった。クラスの皆はすぐに許してくれた。
「ほら、言った通りだったでしょ? 」と佐原くんの方を向いて微笑んだ。佐原くんも「そうだね」と言わんばかりに微笑み返してきた。
はぁ〜、これで一件落着! 悪ポイントもそこまで増えなくてよかったぁ〜!
それから休み時間に洋太や塩崎さん、加田野さん佐藤さんが心配したり何があったのかを聞いてきたがてきとうにはぐらかした。深くは追及してこないところ、察しがよくて助かる。
その放課後から佐原くんは楽しそうに、しっかりと前を向いて練習するようになっていた。
良かった良かった。それにしても俺に才能なんてないからな〜。才能あるとか言われた時はびっくりしたな〜。
などと思い出していたらあっという間に時間は過ぎていった。
明日から2日体育祭が始まる。練習が最後という事でみんなで集まって塩崎さんが話をしていた。
「明日から体育祭だけど、体調管理をしっかりして練習の成果を思いっきり出しましょう。サボったりしたら殺すから覚えててね」
それからみんなでエンジンを組んで佐原くんが思いっきり元気な声で
「体育祭悔いが残らないように一生懸命やるぞ〜!!! 」
と言った。それに答えるようにみんなで
「「「「「「お〜!!! 」」」」」」
と声を出し気合を入れて解散した。
てか、今更だけどサボったら殺すって塩崎さんこわっ! ちょっとつり目でいつも怖いのに、さらに目を細めて言われたら誰も怖くてサボれないと思うな・・・
そして、俺はサボらないように注意しようと洋太と話しながら帰路に着いたのだった。
現在の記録
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レベル1.5
好感度68%
■善627 悪282 計345■
<修正>
悪ポイントの表示を最初から2倍のポイントを表示に改善
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