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幼きM女


両親は共働きだったから、子供の頃はマンションの隣に住む老夫婦の元にいつも預けられていた。

しかし、引っ越しが決まってついに私も保育園に通うことになった。

年中さんのいつだったか忘れたが、中途半端な時期だったのを覚えている。



「今日から、新しく皆のお友達になる中澤真理ちゃんですよ!」

保育士さんに元気に紹介されて、朝礼の列に並ばされた。

「真理ちゃんはここかな?麗華ちゃんの後ろ。」

彼女は私の背と周りの子とを見比べながら、背の順の位置を指定してきた。

言われた通りに並ぼうとすると、

「あんた、後からきた奴なんだから私の前よ。」

麗華ちゃんと呼ばれていた少女は、やや不機嫌そうに私に命令をする。

あぁ、背の順後ろがいいんだな。

子供の頃に良くいる身長の勝ち負けにこだわる子。

もちろん、それ以外のものも感じとっていた。

昔からいるのだ。

生まれながらのいじめっ子といじめられっ子。

私はいじめられっ子タイプ。で、麗華ちゃんはいじっめ子タイプ。

その時感じ取った麗華ちゃんに対しての恐れの様なものは、すぐに確実なものとなった。


麗華ちゃんに対して、びくびくしながら命令に従う子。

幼少時ならではの元気さではしゃぎまくってたにも関わらず、麗華ちゃんが来た瞬間に縮こまる子。

麗華ちゃんの命令で、弱いものいじめをする子達。


3日もしないうちにそれらの光景が幾度と無く目に入る。


麗華ちゃんにとっては、全ての子が手下。

その中でも更にターゲットを決めて、手下と共に集団いじめを楽しむのだ。

なら私は?

中途半端な時期に突如出現した女。身長もどうやら自分よりやや高いらしい女。

そして、弱弱しい表情に人見知りで口数少なく今にもいじめてくれと言わんばかりのいじめられっ子満点女。

ターゲットにならないわけがない。

だがしかし、彼女の私に対する接し方は予想とは違うものだった。

もちろん、荷物持ちをさせられたり、真冬でも生意気だと上半身裸で過ごすのを余儀なくさせられたり、

土から生えた雑草を食べさせられたり、そんな事は日常茶飯事。


何が他の子と違うのかと言うと、彼女は何故か私とべったり行動を共にするのだ。

誰も家に呼んだ事のない麗華ちゃんの家に、何故か招きいれられる日も度々。

そう言えば、特別麗華ちゃんと仲良い子はいなかったな。

対等に話せる子すらいなかった。

私は彼女お気に入りの手下みたいなものなのだろうか。


特に深く考えもせずに、しばらくたったある日。


「ねぇ、上脱いで。」

園庭の隅っこの木陰まで連れて来られ、麗華ちゃんに囁かれる。

「何で?麗華ちゃん?」

「いいから、脱いで。早く。」

言われるがままに、ブラウスのボタンを外していく。

麗華ちゃんも同じように、ブラウスを脱ぎ上半身裸になった私に触れる。

「?麗華ちゃん・・・?」

状況が飲み込めないまま戸惑っていると、麗華ちゃんに抱きつかれていた。

彼女の肌と私の肌がぴったりとくっついている。

麗華ちゃんがじっと私を見つめる。

ハーフの様に美しく可憐な顔立ちの彼女の顔が近づく。

周りの音が突如聞こえなくなる。時間が止まった気すらした。

触れるような口付け。

ゆっくりと離れては、また繰り返す。

何度か繰り返した後に再び抱きしめられる。

どのくらい抱きしめられていたのだろうか。本当は3秒程だったのかも知れない。

ぱっと離れた麗華ちゃんが笑顔で言う。

「2人の秘密だよ。」


麗華ちゃんはとても可愛い子だった。美人と言う表現のが合っているかもしれない。

両親も美男美女で、お金持ちでお嬢様。

そんな彼女が、保育園で女王様の様に君臨していても何ら不思議ではない。

典型的なパターンではなかろうか。


じゃぁ、私にあんなことしたのは何故だろう?


正直私は何も考えてない子だった。

だから当時も麗華ちゃんの行為にびっくりしたものの、気にしないことに決めたのだ。


私が何よりも恐れていたのは母だった。

仕事から戻ると、イライラしながら玄関まで蹴り飛ばされたり物を投げつけられたり・・・

何度も叩かれていると、8つ離れた兄が必死に母を止めようとする。

兄と私はいつも母の顔色を窺っていた。

機嫌を損ねないように、何でも言うとおりにしていた。

私は自分の意思を伝えることを禁止する事に決めていた。そのうち言うとおりにする方が楽になってきた。

だからなのか正直、麗華ちゃんの事は怖いと思っても何をされても命令されても平気だった。

だって母より怖いものはいないと思ってたから。

麗華ちゃんのいる保育園より、家に帰る事の方が恐怖だったのだ。

ヒステリックに喚き叫びながら、私を叩き蹴り飛ばす母。

それは、夢でも鬼の姿と化して出てくるのだ。

うなされて起きると、今度は母の姿をした鬼がいた。


麗華ちゃんとはその後もあいかわらずだった。

保育士さんの好きを見ては、服を脱がされキスをされる。

その行為の意味も、何故私なのかも分からなかったけど私は麗華ちゃんにされるがままだった。

1つだけ言う事を聞かなかったのは、彼女の嫌いな子をいじめるという事。

「ごめんね。それだけは出来ないの。」

「言うことが聞けないの?殴るわよ。」

「ごめんね・・・」

彼女はくやしそうに私を叩く。

私は麗華ちゃんを崇拝しているわけでも、恐れおののく奴隷でもないのだ。

でも、何故か放っておく事が出来なかった。

怖いと言う気持ちはすっかり無くなっていて、それでも基本的には命令に従う。

分からないが、彼女の事が嫌いではなかった。


当時の記憶はうっすらしかなくて、麗華ちゃん以外の人の記憶はほとんどない。

確か、ジャイアンみたいなガキ大将に好かれ追いかけられてたり、

親が離婚して母親に育てられてた情緒不安定でいつ何をしでかすか分からないような、

皆が怖くて近づかない男の子に何故か好かれて追いかけられてたり。

おかげで涙腺弱い私は泣かない日がなかった。


麗華ちゃんは卒業が近づくに連れて、私以外の子を見なくなった。

卒業の時は泣きながら離れようとしなかった。  

家から離れた私立保育園だったので、小学校はお互い違った。

土日は習い事ばかりさせられていて、その後麗華ちゃんに会う事はなかった。


当時、私が何を思いながら日々過ごしていたのか。

麗華ちゃんは私に何を求めていたのか。


保育園で誰よりも親の迎えが遅く、特別に20時頃までいつも預けられていた私。

皆がいなくなってから、園庭で意味不明にバタンバタンと倒れていた。

前にバタン。後ろにもバタン。

痛くなかった。

何だか楽しくて。気持ちよくて・・・

保育士さんが慌てて止めに来る。

あちこちに出来た擦り傷に絆創膏を貼っていたら、徐々にヒリヒリしてきた。


あぁ、やっぱり痛いな。







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