プロローグ~いつかどこかの宇宙の果てで~
いつか、どこかの宇宙の果て。
人間という種族が知覚どころか認識すらしていないであろう、宙域の一角にオレンジ色の惑星があった。
地表のほとんどが砂で覆われ、水の青や植物の緑がかろうじて視認できる程度の物が点在している程度だ。
惑星デブリ・ダスト。
太陽の間近に位置し、昼間は熱波が地上を焦がし、夜は冷気が地表を凍てつかせる。そんな、かろうじて生物が生きていけるような過酷な環境を持つ惑星だ。
そして、特筆すべき点は惑星のそこかしこに散らばるゴミ山だ。工事現場で使われていたような巨大なクレーンの残骸や、建物の骨組みだったもの、中には危険を意味するマークが刻まれたドラム缶が乱雑に積まれており、中身がこぼれてしまっている物もある。
そんな文明の墓場のような場所がいつからそんな有様になったのかは定かではないが、誰しもがそこを都合の良い処理場として利用しているのは明らかだった。そして今、どこからかやって来た大型の貨物船が大気圏を突破してゴミ捨て場までやって来た。
まるで亀のような形状で腹の部分が上下に突き出た形状をした大型船は、金属が劣化した悪臭漂うゴミ捨て場の上で二対四つのジェットエンジンを使って、その巨大を浮かび上がらせる。
すると、箱のようなボディーの底のロックが重々しい音共に外れる。一、二、三重ものロックが外れると、中に放り込まれていた粗大ごみが滝のようにゴミ捨て場へと落ちていった。
それこそ、ウミガメの出産のように次々と腹の中の物を捨てていった大型船は、作業を終えると再び大気圏へと向かっていく。元の星に帰ればまた多くの粗大ゴミ達が出荷の日を待っている。大型船がこの場所に再びやってくるのもそう遠い未来の話ではないだろう。
所は変わってゴミ捨て場には、既に目の前のゴミの山…もとい宝の山に群がる者たちがいた。廃品回収業者たちだ。
白色の防護服に身を包んだ不格好な姿の者が、今しがた産み落とされたばかりのゴミの山に分け入っていく。
「こちらザナリ、こちらザナリ。あー、本日も我が愛しの惑星の空は灼熱色なり。そして、俺は只今、生みたてホッカホカの廃油の山でゴミ漁りに勤しむ予定ですどうぞ」
『おい、バカ言ってんじゃねぇよ。そんなことより、今日の獲物はどうだ』
男の冗談めかした声に、無線から同業者の叱責の声が響く。音が割れ、聞くに聞こえないような音も、彼には茶飯事なことだった。音割れした中から言葉を拾って理解し、返答する。
「おう、色々あるぜ。型落ちのタービン、修理すりゃ治りそうな家電…おっと、コイツぁ分解して中身をどうにかしないと無理そうだな。ヘヘッ大量だぜ」
『どうでも良いが、さっさとしろよ。ジークん所もお宝の匂い勘づいて動いてやがる。奴さん、レアメタルの販売で最近調子づいてデカい回収車買いやがったからなぁ、金目の物とってとっととズラかれよ』
「へいへい、と。全く、金持ちの練習は“修理”って言葉を知らないのかねぇ?コレとかコレとか直せばまだまだ使えるのによォ」
『さぁな、奴らにゃあり溢れるほど金があるらしいからな。噂じゃボディに傷一つでもついたもんなら、すぐに別のボディーに切り替えるらしいぜ』
「ハッ、羨ましいねぇ。俺なんか、型落ちの部品を騙し騙し使ってるってのによ…お」
無駄口を叩いていたその時、ゴミ山の中にキラリと光る何かを見つけた。他のゴミに触れないように気をつけながら手を伸ばしーー絶妙なバランスで立っているゴミ山は、ふとした拍子に倒壊、ゴミの雪崩に巻き込まれる危険性があるからだーー、ゆっくりと光る何かを掴み取った。
それは、ここらでは見ないような、手の込んだ細工が施された小箱だった。ペンケース程のそれを、男は下から横から、太陽に透かして見せたりと品定めする。
(良いね、中々の上物じゃねぇか)
『あー、こちら本部。おい、何があった。減らず口のお前が黙るなんて珍しいな。なんか見つけたか』
その時、突然無線の声が響き、防護服の男は身体をビクッと震わせた。
「う、うるせぇ。金目の物がないか探してたんだよ!集中を乱すんじゃねぇ!」
急に呼び掛けられたから動揺して、手元からも落としてしまった。だが、丁度良い事に、箱が落ちた拍子に蓋が開いて、中身が出てしまっていた。
防護服の男は再び箱を拾い上げ、中身を確認する。それは、黒い板のような物だった。
「データチップか?」
『何?見せてみろ』
「分かった。…あ」
自分一人でせしめるつもりだったものを、同僚に見せてしまった事に後悔したが、最早後の祭りだった。防護服のカメラが勝手に赤く輝き、映像を共有し、無線の向こうにいる人物に見えるようにした。
『判断がつかねぇな。どこの誰が作ったのかも分からん。だが、記憶チップぽいな。差し詰め、どっかの馬鹿が自分の身体ごと、粗大ゴミに出しちまったんじゃねぇのか』
「そっか、そうだよな。俺らには関係のない品だ」
誰に言われた訳でもないのに、一人で結論づけ、失望感と共にそこら辺に箱を捨てようとする。だが、そこでふと防護服の男は動き続け、手際良く廃品を回収。近くを浮遊していた車の荷台に積み込んでいく。
一仕事終えた男は「帰還する」とだけ伝えると、防護服を着たまま車に乗り込み、廃部にあるチャックを引っ張り中から顔を出した。
「あーだり、ふぅ…呼吸器官の調子が良くねぇのかな。ガスばかり出やがる。ちょっと換気しないとだな」
防護服から顔を出したのは人…ではあったが、防護服以上にツルツルとした緑色の肌を持ち。顔には眼球というものがなく、代わりに液晶に浮かぶ目のアイコンが感情に応じて動いていた。
彼は人間ではない。さまざやなパーツで構成された、人に似た形をしている何かだ。彼は、今後の事を考えながら深い溜息を吐くと同時に、鼻に当たる部分をつまんだ。
「うおっ、くっせぇ!やってられねェ!」
『あー、お前仕事前に嗅覚機能切ってなかっただろ。そんな事だからお前出世できねェんだよ』
「うるせえ!俺が出世できねェのはなぁ。チャンスがないだけだ!さもなきゃ、お前の椅子は今頃なぁ、俺の物だったんだ!」
『ハイハイ、じゃあ事務処理やら何やら全部お前がやって貰えるのならさっさと譲ってやるよ』
「黙れ!」
大声で苛立ちを無線の向こう側にいる相手にぶつけつつ、彼は手元のデータチップの入ったケースを防護服のポケットの中にねじ込んだ。
例えそのまま転売が出来なくとも、酒場で口八丁で適当な奴にぼったくってやれば良い。ギャンブルに賭けてみるのも良いかもしれない。
この後のことを考えながらも、時計に目を
最初に出会った頃よりも遥かに口うるさくなったカカアと、反抗的になった倅の事を思い出しながら、中年ロボットは思わずため息を吐き、急ぎ作業を続ける事にした。
初めまして。自の字と申します。
メカ好き、SF好きで、トランスフォーマーやスターウォーズ、ヒーロー、特撮ものが大好きです。
今回、オリジナル小説を初めてウェブで投稿させていただきました。
遠い宇宙で繰り広げられる旅路に、ぜひお付き合いいただければと思います。
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