4-114 捕虜のラフラン達との別れ
食事会の最中、俺は自分が発端となった厄介事を片付けるためにこっそり会場のフードコートから抜け出す。
マップで彼女達を探すとリンドウさんも同じ事を考えていたのか、食事を持って屋上へと移動していた。
今姿を見せれば間違いなく揉めてしまうし一旦隠れて離れた場所から様子を伺ってみよう。
俺は取りあえず屋上に向かう階段の踊り場で待機した。
「いいからいいから、持っていきなヨ」
捕虜となっていたアシュラッドのカルラ族部隊は屋上に集結してどさくさに紛れて逃げ出そうとしており、リンドウオバちゃんはタッパーに入れたニラ玉チャンプルーを半ば強引に押し付けていた。
「どうしますか、隊長。美味しそうですけど……じゅるり」
「いいからいいから、持っていきナ! お腹減ってるんだロ?」
その光景はご近所さんが作り過ぎた煮物を押し付ける様にも似てコミカルだったが、敵対する相手からそんなものを受け取るべきかわからず、副隊長のウタはどうすべきか困ってしまう。
「御厚意感謝します。ただこんなには食べられないので残りはそちらで食べていただけますか?」
「ん、受け取るのか」
だが隊長のラフランは素直に料理を受け取る事を選び、ファルコンは意外そうな反応をした。
「毒が仕込んである事はないでしょう。私達を殺そうと思えばいつでもそうする事が出来たでしょうし」
「確かに敵であるはずの私達に手当てもしてくれましたからね。私なんか島バナナを十本くらい食べましたし。紅芋タルトとかちんすこうも」
「あなたは寛ぎ過ぎです。太り過ぎて飛べなくなっても知りませんよ」
「うぐっ。流石にそんな事は。まさかブクブク太らせて情報を聞き出そうと……!」
「んなわけありません」
割とお気楽な性格っぽいウタは捕虜生活を満喫していたらしく、カロリー的に充実していた日々を回顧する。
虜囚の彼女達が全く抵抗しなかったのはNAROの面々がちゃんと敬意を持って接してくれたからだろう。
「何だい、拠点で配られたお菓子がそんなに気に行ったのカイ? ならこれもあげるヨ、お土産のレモンケーキ。皆で食べナ」
「クッ、誰が言うかッ! フリー乗車券があればモノレールやバスに四十八時間乗り放題な上に観光施設で割引されるだなんてッ!」
「あなたはなにを言ってるんですか? アマテラス派の伝承に出てくるハナザワのオマージュですか?」
ウタはレモンケーキに屈して沖縄観光のお得な情報を語ったが、二重の意味で意味を理解する事が出来なかったラフランはポカンとしてしまう。
でもそっか、へー。流石は観光都市沖縄、長崎も似た様な事をしていたけど随分と太っ腹な事をするものだ。
多分そんな機会もないだろうけど、平和になった世界線で沖縄を観光する日が来るかもしれないし頭の片隅に入れておこう。




