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ゆめのおちかた~終わりに向かう二つの世界、小説家とアニメーターを目指す何者かになりたい若者と、夢破れたTSダメ親父が紡ぐ英雄のいない物語~  作者: 高山路麒
第四章 悠久のニライカナイ、黄昏の空を飛び続ける天龍【第一部4】

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4-32 ゾンビの正体についての仮説(推理失敗)

 ベロヴォーディエ紛争とゾンビハザードの考察は続き、少しずつ真相に近付いた俺達は更に掘り下げる。


「正体がゾンビかどうかはともかく、人を狂暴化させる何かや致死性の感染症自体は確かにあの戦争で存在していた――」

「そしてそれはゾンビに似たものだと言えるかもしれない。もう一つ気になった事があるんだけどいいかな」

「ああ、言ってみろ」


 いくつかゾンビの正体の候補が出てきたところで、ヒカリは神妙な面持ちで語った。


「私達は博多ドームや錦界収容所で泥が擬態した怪物と戦った。それも関係あるのかもしれない。ううん、きっとあると思う」

「泥が擬態した怪物か……」

「そうだ、タイガーウルフだゾ!」


 そして俺が返答する前にキーアはナジム自治区の騒乱で登場した疫神の名前を叫び、全員の注目を集めてしまう。


「あれもなんかドロドロしてた変な魔獣だったゾ! 正体は確かコロリ? だったっけ?」


 幸いにして俺達はタイガーウルフを消し去る事に成功したが、もし出来なかったのならば今頃疫病が蔓延していたかもしれない。


「かなり今更だけどノミコちゃんはあの泥を原初の泥って言ってたよね。あれがなんなのかノミコちゃんは知ってるの?」

「そうだね、そろそろちゃんと原初の泥について教えたほうがいいかな。といってもまだ話せるのは少しだけだけど」


 この場で最もミステリアスなノミコは少し考えた後、世界の真実の一端を語り始めた。


「万物の根源である原初の泥は人が想像出来る全ての物に変化する事が出来るんだ。それこそ金やダイヤモンドでも、動物でも人間でも、神でも悪魔でもね」

「マジか。って事は金目の物を作ったら億万長者になれるじゃねぇか!」

「うまくコントロール出来ればね」


 金にがめついリアンは儲け話に食いつくもノミコは冷めた目で否定する。


 もしもそのような物体があれば金など何の意味もなさないだろう。


 金で手に入るものは大抵作り出す事が出来、金では手に入らないものも自由自在に作れるからだ。


 人間は既存の科学ですら上手く制御出来ていないのに、それほどまでに凄まじい物質を手にして欲望のままに使えば身を滅ぼすのが目に見えていた。


「つまり博多ドームのダルマオンナや、ナジム自治区のタイガーウルフは原初の泥を媒介に、人々の妄想や恐怖が具現化した存在って事なのか」

「ざっくばらんに言えばそんな感じだね」


 ダルマオンナもタイガーウルフも所詮悪意に満ちたデマに過ぎなかった。


 けれど悪魔をも凌駕する人間の悪意が形になった場合、それは人類にとって恐るべき脅威となるのだろう。


 そしてそれらの情報を統合し、俺とヒカリはある結論を導き出した。


「人々はベロヴォーディエで麻薬漬けの兵士や暴徒を目撃した。彼らへの恐怖が未知の感染症という妄想を作り出したのなら!」

「それが原初の泥によって具現化して、ゾンビが生まれた……! どうなんですか、まれっちさん!」


 確証はなかったがこの仮説はあながち間違っていないはずだ。


 ヒカリはようやく真相に辿り着きそうになり、全ての真実を知っているであろう希典先生に顔を向けた。


 だけど先生は、


「正解……と言いたいけどハズレだね。掠っていない事はないけど」


 と、あっさり仮説が間違っていると否定した。けれど掠ってはいるそうなのでまったく的外れな答えではない様だ。


「違うんですか」

「もっと根本から考え直した方がいい。見ようとしなかっただけで真実は最初から目の前に存在しているんだよ」

「最初から、ですか」


 俺達は与えられた常識によって視野が狭められているのだろう。だからきっと俺達は気付く事が出来ない。


「具体的に言えばお前さんが異世界転移した八月九日もそうだったねぇ。あの日の事をよーく思い出してごらん。ヒカリちゃんもお魚落下事件の時にヒントを言ったでしょ?」

「え? なんか言ってたっけ」

「やれやれ……ほれ、これでも食って考えな」

「ありがとー」


 希典先生はさらにヒントを出しヒカリは渡されたバナナをもしゃもしゃと食べる。なおそのバナナは島バナナではなく、本土で流通している細長いタイプだった。


 何故先生は沖縄で手に入りにくい普通のバナナを渡したのだろう。この行為には意味があるのだろうか。


 なんだっけ、確かイナエカロへの道中でバナナのトリビアについて前に話をした様な……だけど病気に弱くてすぐに全滅するっていうのは関係があるようで関係がないし。


 俺が異世界転移をしたあの日、空からは粉雪が降っていた。


 しかしドローン爆撃があった事以外はいつも通りの寒い朝だったはずだ。


 見ようとしなかっただけで真実は最初から目の前に存在している――それは一体どういう意味なのだろうか。

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