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天球を穿つ  作者: 有間ゆう
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   記憶の発芽4

―――私ね!これまでの『雪操(せっそう)』としての活躍を評価されて第2班に任命されたんだ!


 (つがい)が心底嬉しそうに、そう報告してきた。


 第1班が道を拓き、第2班が道を敷く。登山隊の中でも特に精鋭で組まれるこの二つの班は、故郷(こきょう)の住人の憧れの的だ。第1班はメンバーがほとんど固定のため、実力で抜擢される班としては第2班が最も前方だという考え方もできる。本当に立派なことだ。


 俺たちは故郷の中ではまだまだ新参者だが、番が登山家として活躍してくれているおかげでみんな俺にも一目おいてくれている。番の功績を、まるで俺の功績でもあるかのように祝福してくれ、それがきっかけでできた友人もいた。そいつの番はうちのにも負けないくらい優秀な登山家で、第2班の班長にまで上り詰めた傑物だ。そいつの番が1度だけ、うちのと同じ班になったことがあった。そのときは不思議と嬉しく、頼もしく、ある種の無敵感のようなものも感じたものだ。

 思えば俺たちの会話は、お互いの番の自慢話かチェスの戦略のことばっかりだったな。いつも隣で星に当たって、同じような話を繰り返していたな。一緒に詩でも勉強しておけば、こんなとき、この石碑に何を刻めばいいか、すぐに浮かんだのかもな。


 まあせいぜいゆっくりと、『石工(いしく)』としての役割をこなすとしよう。

 見送るものとしての役割を。




  埋める穴が なぜ空いたのか

  空いた穴を 誰が埋めるのか

  一番近くで ただ見ていた

  次の穴が空くまで 次の誰かが埋めるまで

  一番遠くで ただ石を掘る

 

 ――― ある石工の詩 ――――


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