6 秒でぶっ壊れる旦那様の本命さん説
「見に来ちゃった……」
ビスカは、クロード様のことが好き。なのかもしれない。
彼女の訪問がそんな考えに繋がってしまったものだから、こっそりと二人の様子を見に来てしまった。
土は落としたものの、作業着のままである。
セイジ家のリビングでは、クロード様とビスカが親し気に話している。
内容までははっきり聞こえないけれど、クロード様の表情は、私に向けるものとは少し違って。
「遠慮が……ない……!」
急な結婚だったこともあってか、クロード様は、まだ私に対して遠慮しているような気がする。
私がよく見るのは、黒い瞳を細めた柔らかな笑みに、ちょっと困ったような笑い方。
そういった、穏やかなものだ。
でも、今は。呆れたような顔。げんなりとした顔。ちょっと怒ったような顔。いつもより表情豊かで。
ビスカもどこかうっとりとした様子で、楽しそうにしている。
この仲のよさ。私の服装が服装だったとはいえ、来客中に遠ざけられもした。
これは、まさか。
「本命さん……!?」
私の中で、ビスカ本命説が、浮上した。
妻は私だが、契約婚のようなもの。クロード様が本当に愛しているのは、ビスカなのかもしれない。
これはどうしたものでしょう。
クロード様に本命さんがいるなら、応援したいところ。
でも、妻のポジションを渡すことはできないし……。
離れた位置から壁に隠れて様子を伺う私に、背後から声がかかる。
「モカロリーゼ様?」
「ひゃわうっ!?」
声の主は、セアナ。こそこそする私に気が付いて、声をかけてきたようだ。
どうしましょうどうしましょう、と困惑していたこともあり、驚きで大きな声が出てしまった。
結構な声量だったため、クロード様とビスカもこちらを見た。
二人の視線が同時に私をとらえる。
「あ、あはは……」
もはや、曖昧に笑って姿を見せるしかなかった。完全に気が付かれたから、誤魔化しようがない。
***
「俺とビスカが!?」
「私とクロード隊長が!?」
二人が、ほぼ同時に叫んだ。
「は、はい……。そうなのかなと」
「「違います!」」
今度は、声が重なった。
ワンピースに着替えた私は、二人と同じテーブルにつき、「ビスカ本命説」について話した。
私の独り言を聞いていたのか、セアナに今すぐ本人たちに確認すべきだと言われたのだ。
なんなら、言い淀む私の横で、さらっと「ビスカ様本命説が出てますよ」と言い放ったのも彼女である。
セアナにバラされてしまったので、この疑惑を隠しておくこともできず。
正直に話せば、二人はこの反応である。
クロード様が、額に手をあてながらふーっと息を吐く。
「モカ。違う。俺は……。俺が、すき、なの、は」
「モカロリーゼ様!」
「は、はい」
もごもごするクロード様の言葉を遮る形で、わっと私の名前を呼んだのは、ビスカ。
あまりの力強さにちょっとびっくりしてしまった。
「私……。モカロリーゼ様の大ファンなんです!」
「へ?」
私の大ファン? クロード様の本命さんではなく?




